その人はくるくるくると回転し、着地した場所は電車の中だったんだ。目が離せなかったんだけど、それはバク転にではなく、その人の口もとがすごく綺麗だったからなんだ。私の好みの口もとだった。そしてどうしてか、私は彼女の優雅な振る舞いと私に浴びせる見下すような視線を懐かしく感じて書き留めておかねばと文字を綴っている。
その電車は人が少なかった。それにしてもバク転をしながら乗車するなんてと驚いている乗客もいただろう。どうやってあの狭い扉の中に複雑な動きをしながら入っていったのか、私も見ていたはずなのに思い出せない。でもそんなことはどうでもよかった。ただあの唇が寝起きの私の隣で静かにその柔らかさを魅せてくれている朝を想像していた。
ふと顔を上げるともう彼女が乗った電車は出発していて(というかずっと前に出発していた)、1つ後の電車に乗った私は目の前で携帯をいじっているおばさんを見下ろしていた。おばさんは携帯をいじっているけど実はバク転をしながら電車に乗る人だったらどうしようと考えるとなんだか退屈な日常にたくさん可能性があるような気がしてきた。今日は私の頭に1本の白髪を見つけたんだけどそんなこともどうでもよくなってきた。
#春爛漫
バレンタインだということは、朝の情報番組で言ってたからずいぶん前から知ってた。もう18:00になるが迷っている。嫌な文化だ。私の名前はアニータ。急に名乗ってみたくなったりする。ところで皆さんは今日バレンタインという日に何か贈り物をしましたか?貰いましたか?貯まっていますか。貯まるほど貰って机の引き出しに入れて、毎日1つずつ食べる(齧る)。引き出しを開けて、あの子の顔を思い出して食べる(齧る)。引き出しを開けて未だある、齧る。そんな日々が待ち受けているはずですか?
チョコレートって美味しいと思う。甘くてじゅわーって溶けて、カカオの香りがして、あと愛もこもってる。愛。そんなチョコレートが欲しい。
#そっと伝えたい
嫌いな人。かわいそうな人って思えばいいらしい。いつもの月曜日。憂鬱だった。でも今日は昨日友達に教わった方法で奴と接触してみることにするという戦略があったから自分を試せる機会に少し期待していた。自席までのいつもの風景。気が滅入る。「おはよううございます。」また声がでなかった。誰にも聞こえてないようだ。まあいいや、辞めるんだし。PCを開いて準備していると、早速奴がこちらを向く。心の準備は整っている。「ロッカーの鍵が空いてたようだけど金曜日の帰り何かあったの?急いでたの?」あぁ、確かに金曜日は急いで帰ったけどプライベートのことだし、説明したところでだ。そして心配げに言うこの発言の裏にはもう「鍵閉めて帰れや。」の怒りしか見えない。「あ、すみません、覚えてないです。気を付けます。」ここはとりあえず適当に流す。自分の非は認めなければ(イラッ)。
そして今日もあった。奴の攻撃という名の自己防衛。そうですね、私の非ですね。確かに私の担当範囲であった可能性は認めるが、そのキモい笑顔で諦めたようにやりようの無いように突き放して自分は関与しない姿勢か。そうかい。やる気を失くさせるね。そしてこの苛立ちだよ。今日は準備してきてたんじゃないのかよ。イライラしちゃってるよ。心の中でちゃんと「くそじじー」って顔面殴ってる画を描いちゃってるじゃん。というわけで今日のところは退散。明日また挑戦だ。奴をかわいそうな奴って思えばいいんだよな。
#明日に向かって歩く、でも
今日は太陽の下で弁当を食べた。会社の昼食はオフィスフロアから出て食べるようにしている。フロアではお昼の静かな中、上司のパソコンを触る音やお客さんの電話対応で落ち着きがない。そのくせ静かだから自分の咀嚼音が気になって味わうことより噛むことに集中モードになってしまう。
今日はいつも人がいるはずの席が空いていた。ラッキーと席を取って弁当を広げたところ、日が照ってきた。そういうことか、どうして今日はカーテン空けてるんだろうと考えて、わからないとの結論に至った。というわけで、今日は右ほほに日の暖かみを感じながら昼食をとった。夏の日差しと違って、冬の太陽はいくらか優しい気がする。
そうだ、反省反省、昨日はちょっとした事件があった。私の中の私(性の悪い私のこと)がしゃしゃり出てきて人に危害を加えたんだ(何てやつだ!)。とりあえず一件落着したはもののこれでは相手からの信頼がなくなり、これから取り返しにいくらか時間がかかりそうな気配。またに出てくる性悪君とは仲良くやっていきたいものだ。
やや、俺様のこと書いてやがる…
#太陽の下で
もしあの頃に戻れても
私は何もできないから
今更後悔したって無駄だけど
あなたが帰ってくると
やっぱり気持ちは落ち着かない
忘れたいのに視界に入ってこないで
もういなくなってほしいの
何度想像したことだろう
この孤独を誰かと分かち合えたら
彼が手を差し伸べてくれた時
彼女が頷きながら話を聞いてくれた時
私にもまだ居場所があるって思えたと同時に
欺き組織の輪を広げたことを正当化し
あなたもそうだと願う
そんな私に嫌気がさして苦しかった
今でも思い出すけど
正当化した自分が悪いとは妥協できない
精神的 侮辱を味わったこと
それだけは あなたにはしてないと断言できるから
だから早く消えてくれ
#本気の恋