Rina

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 子供の頃は動物が好きで獣医さんになるって言ってた。今している仕事とひどくかけ離れている。まぁ、子供の頃の夢とはそんなものなのか。
 気持ちの変化があった瞬間をすごく覚えているんだ。あれは親戚のおじさんが言っていたことだが、獣医は牛のお尻から腕を突っ込んで体温を計るとか、ナイフでお腹を切って手術をするとか、麻酔を打ったはずの虎が獣医を襲った事件があるとか、そういう類いの現実的な話だった。実際仕事としては確かに綺麗なものではなかったり、身体に危険を及ぼすものだったりして、動物が好きってだけでは勤まらない仕事なのかもしれない。でも今考えると、それで獣医を諦めるとはとても無知なままの決断だったんだなとも思う。
 中学生くらいから獣医という夢はだんだん薄れていき、ずっと続けていた英会話の関係で何となく海外に憧れを抱くようになった。
 それから10年以上の時がたち、私は晴れて7月から無職になる。今まで続けていたシステムエンジニアの仕事を辞めたわけだが、またシステムエンジニアとして働こうと絶賛就活中である。
 多くの転職者は就業しながら転職活動をするらしいのだが、私の場合はそんな器用なことはできないし、まして残業しながら転職なんぞ心身の健康が保たれないということで先に辞めることを決意したわけである。
 しかし、今考えるとやはり就業中の就活が良かったと思う。なにしろ収入がなくなるのはシンプルに焦る。

 この後悔と焦りでごちゃごちゃした気持ちになり、夜もろくに眠れないので、気持ちを整理しようと書き始めたわけである。

 さて、つまり、私は焦っているのであるが、今は前に進むのみ。良かった点ももちろんあるさ。1.優柔不断な私が就業中には叶わないスピード感で就活できるということ。2.スキルを上げようというモチベーションが高まること。
 まず、就業中だと何も焦らずとも収入があるため、就活という面倒な活動はわざわざ起こしたくないと思うんだ。その状態でどうして就活をしようというモチベーションになるのかというと、それは、たまにある上司からの理不尽な発言や、定時に帰れないというストレスの積み重ねである。それらによる身体的・精神的疲労は一時的なものであるのだが、実は将来を見据えた際にそれは大きな不安となり私の就活モチベを一時的に上げることがある。しかし、同職場で自分のやりたいことができていて、一時的な転職願望があるという程度であれば、向上心がない私にとっては、なかなかそこから踏み出すということが難しかった。
 また、転職をして自分をPRするために自分を奮い立たせていると向上心がわいてくるんだ。これは過去に今の会社に入社する際にも感じたものと同じだと思う。忘れていた向上心を思い出させてくれる転職は素晴らしいと思う。そしてそれにはある程度ストレスが必要だったりする。

 もし同じ時間軸で就業中の私がいたとして、そいつはきっと就活を始めたかもしれないが、思うような会社に出会えず面倒くさくなっていると思う。そして結局今の会社が一番いいのかもしれないという錯覚に陥り、そのままずるずると仕事を続けているだろう。
 今の生き方に妥協して満足してはいけない。人生において無駄なことなんてひとつもないというじゃないか。無職の時間も、苦しい時間も、恥ずかしい時間も、すごく価値があるもので、むしろ時は金なり、時間とお金の一番いい使い方ができているってことだろう。味方はたくさんいる。ありがとう退職を承認してくれた上司、ありがとう転職エージェント、ありがとうハローワークと思って、不安がなくなるまで準備して、たくさん頑張ろうじゃないか。

 でも、今回のやり方でひとつ心に決めたことがある。大事なことほど衝動でひとりで決めないこと。誰でもいいから相談すること。これ本当に大事なことだ。

 子供の頃の私は現実がこんなに辛いなんて考えもせず、ただただ動物が好き、英語が綺麗って思ってたのにね。でもそれが美しい。それを今でも追いかけている自分がいるとしたら、今ごろ私になんて助言してくれるんだろう。


#子供の頃の夢

6/23/2025, 3:30:45 PM