虚書/Kyokaki

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5/31/2024, 6:49:24 AM

【テーマ:終わりなき旅】

 ドーモ=オヒサシブリデス(19xx〜)
 幾日どころか幾月が経ってしまいましたが、覚えておいででしょうか。フィクションを書くということで虚書でございます。

 先程用事があったために職場(広義)にて待機していたのですが、他にも同じ部屋にいた方達がいました。
 彼らはいくつかのグループに別れて遊んだり、翌日にある行事に向けた作業(物をデコる)をしていて、仲の良さを見せつけられたような気分でございます。私は一人でスマホを見るだけという、なんとも虚しく感じながら時間を潰しておりました。
 有り体に言ってしまえば、その時寂しかったからこそ、皆様と繋がっていると感じれるここで再び筆を執ったということでございます。

 さて、終わりなき旅と聞いて私が真っ先に思い浮かんだのは「人生」でございます。ええ、勿論“死”という名で体への終わりは訪れます。しかし輪廻転生の考えを適用すると、魂の活動に終わりはないのではないかと思ったのです。

 私は所謂“敏感さん”という分類に腰くらいまで浸かっております。簡単に言えば「これをすればこの人は嫌な思いをするかもしれない」というのを常々考えております。“仲間外れにされるのが嫌だから”という自分本位の目的ではありますが。
 だからこそ人に踏み入れず、踏み入らせず、という底なしの泥沼に沈んでしまっているのでしょう。だからこそ友人とは長く続かないのでしょう。疎遠になったらそれっきりなのでしょう。
 勿論そこまで深く考えている人は少ないというのも自覚はしておりますが、如何せんこの生き方に馴れてしまってから気づくというのはあまりにも遅すぎたのだと本能が悲痛に叫んでいるのが聞こえます。
 皆様もそういった経験はございませんか?まあ、あった方が嬉しいという同調圧力に似たそれも自分の嫌悪の対象になってしまうのはどうしようもないと自覚してしまいますが。

 閑話休題。

 そんな終わりなき旅の内のほんの少しの想い出。そう考えれば私の自己嫌悪も矮小に感じる……と通常であれば言うのかもしれませんが、私は異を唱えさせていただきましょう。
 例え輪廻転生したとして記憶は殆どの場合リセットされます。そして“今”の人格を作るのは“今”の記憶です。そこから考えると、経験を軽んじることは生に対する侮辱と言っても過言ではないのでしょう。
 それはそれとしてこういった逃げ道があるのも重要でしょうが、頻繁にこの道を使うのは寧ろ自己嫌悪と自己を乖離させてしまうのではないかと思います。「こんなことをするのは私であってはならない」という認識はいずれ身を滅ぼすことに繋がる可能性がありますから。
 ですから畢竟、“今”存在する自己嫌悪すらもひっくるめて己だと認識して生きていくしかないのでしょう。時々逃げたとしても、あまりに逃げ続けるのは滅びへの第一段階となります。
 私も、貴方方も。逃げ道に依存しないよう気をつけて生きていきましょう。独白よりも醜い散文を失礼致しました。

1/9/2024, 3:25:47 PM

【テーマ:三日月】

お久しぶりでございます。たまたま開いたらテーマが月関連ということでしたので書かせていただきますよ。
月と言えば、やはり「I love you」の和訳「月が綺麗ですね」でしょう。夏目漱石様でしたっけ。外国の真っ直ぐな言葉から日本人特有の奥ゆかさを表した素晴らしい訳ですよね。
これの返しは色々ありますが、僕が好きなのは「あなたの瞳に映った月をずっと見ていたいです」ですかね。どことなく漂うヤンデレのかほりが非常に好みなんですよ。解釈違いだと揶揄されるかもしれませんが、元より人の心は十人十色ということでそういう解釈もあるということでご容赦ください。





「月が綺麗だな。」
 夜の海。海の囁きが響くこの空間。月が目立つ暗闇の中。ついガラでもねぇことを言っちまった。告白のやつをそのまんま。それに気づいて顔に熱が集まる。
「ふふ、それは告白と捉えていいのかな?」
「そ、そんなんじゃねーし!」
 隣の家に住んでいたこいつ──葵──は上京してどっかの野郎と付き合ってたけど、そいつがクズで捨てられたらしい。そんで戻ってきた。おばさんはりょーよーとか言ってた。
「大体、家で休んどけよ。わざわざ俺を連れ出しやがって。」
「いいじゃないか。そもそも私が家で大人しくしてるタマじゃないのはよく知ってるだろう?」
「まあな。」
 ガキの頃はよく山で一緒に走り回ってた。いつも立入禁止のとこに入って怒られてたのはよく覚えてる。
「今日は三日月だね。君は好きかい?」
「は?好きも嫌いもねぇだろ。三日月だろうが満月だろうが同じ月だし。」
 海が声を上げた。それは苦しげな顔をしたこいつの代わりとでも言うように聞こえて、こっちまで悲しくなってくる。
「私は三日月は嫌いだな。あの頃の空虚な自分みたいで。」
「…そうかよ。」
 それ以外何も言えなかった。今までずっと遊んでただけの俺が何か言う資格なんてないと思ったから。そーぜつな体験の葵とは違うから。
「結局君もか。君も私を突き放すのか。」
 さっきとは違う、小さくて消えそうな声。それに驚いて咄嗟に葵の腕を掴む。
「何だい?」
 次に聞こえたのはいつもの声だ。頭が良くない俺でも分かる。今のはこいつの本音だってのが。
「何か、その…お前は、お前だろ。俺はお前が馬鹿やってんのは、まあ…そこそこ面白いから、やれよ。好きに。」
 精一杯の想いをこいつよりも下手な言葉で伝えると、吹き出したように笑いだした。とりあえずいつもと同じ笑顔にホッとする。
「君ってば本当に不器用だね!ほら、素直に片思いしてる私が心配だって言えないの〜?」
「ばっ、んなわけねぇだろ!!!」
 ニマニマと気持ち悪い笑いを浮かべながら俺を見る憎たらしいそいつの柔らかいほっぺを左右に伸ばす。
「ひょ、いはいいはい!!」
「ぷっ、ハハ、ブッサイクだなお前!」
 海の声に加えて、俺らが上げさせたものも響いていく。闇に掻き消えているかのように思えるが、葵の心に染み込んでいることを願う。
「そうだ!今度どっかの夜にコンビニ行かない?」
「はぁ?お前一番近ぇコンビニがどんくらいかかると思ってんだ。」
 ドが付くくらいの田舎のここでは車で一時間くらいらしい。そんな距離を歩くなんてのはバカがすることだ。俺でもやんねぇ。
「ふふ、実はバイクがあるんだよ。一緒に乗って一緒に行こう。それで駐車場でケーキを食べて──」
 満面の笑みで計画を語るこいつを見て、こっちまで笑顔になる。

ちからつきました

12/9/2023, 10:54:02 AM

【手を繋いで】

かれこれ6年近く(駄作と未完とかでも)書き続けてればスランプが頻繁にくるもんなんですねぇ…(  o̴̶̷᷄  ̫ o̴̶̷̥᷅  )
まあ趣味でやってるだけなんで気ままにやらさせてもらってます。自分のペースじゃないと途端にやる気なくなっちゃうダメ人間なもんですから。

まあ正直今日は書くのも面倒くさいんで、こうして語りかける口調で読者様方と関わりを持つ──手を繋いだ──ってことで。お後がよろしいっつーことにしてくだしあ。

10/27/2023, 11:22:18 AM

【テーマ:紅茶の香り】

テーマには悪いけど、僕紅茶飲めないんだよね。なんていうのかな、紅茶の後味の酸味?それがどうしても口に合わない。
まあ僕には麦茶っていう相棒が居るから。紅茶が飲めなくても水分は補給できるし、茶を飲むことはできる。だからなんとかなるはずだ。
ちなみにスーパーで紅茶パックを買ったことも、電気ケトルを使ったことも、レンチンの経験もない。料理に関しては初心者の中の初心者である。矛盾は許して。





 朝。起きろと急かしてくる光のせいで、目が覚めてしまった。折角の休日、こんなに早く起きたのはなんだか得のような損のような……妙な気分だ。
 今日はいつものコーヒーよりカフェインが少ないといわれる紅茶でも飲んで二度寝でもするか。棚の少し奥の方からスーパーで買った安物の紅茶パック詰め合わせの袋を取り出す。あまりにも雑な保管方法は、きっと紅茶好きにでも見せたら怒られてしまうんだろう。
 適当に電気ケトルでお湯を沸かし始める。いつもは最初にする筈なのだが、休日という言葉が持つ魔力がもたらしたデバフ──状態異常──のせいだろう。つい忘れていた。
 沸くまでの間、タッパーに保管しておいた白飯に残り物を乗せた簡単丼をレンジで温める。 温め始めたと同時に湯が沸いたことを知らせる機械音が鳴り響いたので、少し大きめのコップに注いでからパックを入れる。この調子だと食後になりそうだな。
 そうして軽快な音がなった扉を開け、白い湯気が空気中で揺蕩う丼をこちらへ迎え入れる。ダイニングテーブルへ持っていくのが面倒くさくて、近くにある足場用の低い椅子に座ってそのまま食べる。うん、美味い。
 その後丼も洗い終わり、ふと香ってきた独特な匂いで放置していた紅茶を思い出す。口に含むと、やはりコーヒーとは違った酸味や苦味などを感じる。
 飲み終わったら寝よう。その後は……まあ、起きたらでいいか。紅茶が残る部屋でぼんやりと考えた。

10/26/2023, 6:46:07 PM

【テーマ:愛言葉】

 またスランプ入っちゃったので暇つぶしに。

 愛というのはなかなかに不思議なものなのだろう。今までどうとも感じなかったものが急に輝いて見えたり、急に色褪せて見えたり。
 そう感じるのはなぜだろうか。そう思えるのはなぜだろうか。
 僕はその感じ方は素晴らしいものだと思う。まあ、僕がそう思えるような人にあったことがないからこその思考なのだろうが。




「ごめん、待った?」
「うんん。行こ。」
 いつもと同じ、待ち合わせのときの会話だ。キミが先に居て、僕が後。本当は僕が待っているべきなんだろうけど、なんでかどうしてキミを待たせてしまう。
「あれいいじゃん。食べる?」
「並んでるね。」
「じゃあやめよ。」
「あれとかどう?」
「並……んでないね。ならあれがいい。」
「分かった。」
 キミはこんなにせっかちなのに僕を待ってくれてるのはなぜなんだろう。僕が提案してキミが選んだ店に入りながら思う。
「……こっち見てないで、さっさと選びなよ。」
「え、見てた?ごめん。キミは決めた?」
「甘口カレーとセットドリンクバー。」
「じゃあ僕は中辛にしようかな。すみませーん。」
 人見知りな彼女の代わりに店員さんを呼び、注文を告げる。そしてキミは淡々と「野菜ジュース。なかったら白ぶどうかお茶。」と要望を伝えてきたので、ドリンクバーへと向かう。
 この店は野菜ジュースがあったので、コップにアイスを入れてからオレンジジュースより濃い橙色が溜まっていくのを確認する。その後僕のコーヒーがカップに注がれるのを待つ。
「はい、どうぞ。」
「ありがと。」
 そうしてキミは一口飲んでから、話しかけてきた。
「何考えてたの?」
「えっと、いつのこと?」
「メニューのとき。」
「ああ……キミって並ぶの嫌いなのに僕を待ってくれてるの、何でかなって。」
 ちょうどその時、カレーが来た。「甘口のお客様」で俯きながら小さく手を上げているのが可愛いと思ってしまうのは惚れた弱味だろうか。
「いただきます。」
「……いただきます。」
 ワンテンポ遅れたキミが気になったが、カレーを口に頬張って僅かな笑みを浮かべているのが愛らしくて忘れてしまった。
 それから、待ち合わせのときの疑問も消えるほど楽しい時間を過ごした後。悲しい時間が訪れるほんの少し前。
「……私がいつも先に待ってるのは、あれが合言葉みたいだから。それだけだから。それじゃ。」
 キミはいつもより早口で言い、駅のホームへ向かってしまった。合言葉というのはどういうことだろうか。
 家路で考えて、家に帰ってからも考えて、シャワーを浴びた後に漸く辿り着いた。“ああ、合図なのか”と。
 彼女は案外はっきり言う性格だ。TPOは弁えるが、僕の前だとそこそこ気が抜けているようで口が滑っていることが多々ある。
 つまり、彼女はつまらないと思うことはつまらないと言うのだ。それがないということは、僕と一緒に居るのを存外楽しんでくれているんだろう。そしてその楽しい時間が始まる合図があの会話。合言葉。愛から生まれたのだから、愛言葉とでも言うべきか。
「ふふ。」
 “次の愛言葉はいつにしようか”だなんてラインをしながら微笑んだ。

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