ゆーがめ 普通イカの高校生

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11/18/2024, 3:55:39 AM

『冬になったら』

ずっと、覚えてる。
あの無垢な表情を。

ずっと、覚えてる。
あの温もりを。

息は白く
指先は悴む
繋いだ手は冷たく
積もった雪に足をとられる

毎年、冬になったら、思い出す。

分厚い手袋を はめて
肩甲骨まで伸びた髪をなびかせ
宝石のような瞳の上の睫毛は 粉雪で白く
寒さ故に 柔らかなその頬を赤く染め
やさしい笑顔で駆け寄る貴女

そんな貴女はもういない。
今はまるで冬のような、貴女。
いつになったら、春が訪れるのかしら

10/27/2024, 7:27:07 PM

『紅茶の香り』

鼻先に感じる、心地よい香り。
揺れるカーテンの隙間から入る暖かな日差し。
ゆったりと腰を掛け、右手にはティーカップを、
左手には分厚い本を。
昼下がり。

庭のマリーゴールドは鮮やかに色づき、
マスカットのような風味のダージリン。
スッと鼻に抜ける爽やかな口当たり。
紅茶の香りとともに、左手は忙しく頁を送る。

ふと、隙間から窓の外を見る。
もうこんなに時間が経っていたとは。
おやつの時間ですよと部屋の戸を叩く音がした。

10/4/2024, 5:07:13 PM

『踊りませんか?』

紺藍の夜空に、
浮いた月。
天頂で、白く、淡く。

ルージュ・ドゥ・サンのドレスに身を包み、
耳の上のあたりで結われた髪に、
刺された薔薇の髪飾り。
ノワール・ドゥ・シャルボンの背広に身を包み、
目の元まで下ろした髪に、
すらりと伸びた下半身。

まるで、今日の主役は彼女らなのだと、
言わんばかりに。

そう、物語る。
白手袋に包まれた手を、紳士に差し出し、
長手袋に包まれた手を、そっと置く。

踊りませんか?

そう誘ったように、
今宵は深く、長く。
耳から拾う音に、ひらりと。
明けない夜に、舞うように。

もう、今宵の主役は彼女らなのだと、
言わんばかりに。


10/2/2024, 12:30:26 PM

『奇跡をもう一度』

私は目を閉じた。
その刹那。
唇に、
柔らかいそれに、そっと触れられた。

私は目を見開いた。
その刹那。
唇に、
その上に、その中に、
あたたかいそれに、口は、占拠された。

はじめての感覚。
私の頭は正しい判断をしてくれない。

また、
また、
その奇跡を、もう一度。

その奇跡を、軌跡として。
もう一度。


10/2/2024, 3:45:21 AM

『たそがれ』

完全に日が沈む前の、
少しだけ、
太陽が斜めから強く光るとき、
黄昏時だと、教えてもらった。

なんだか、身体が重くて、
なんだか、帰るのが、寂しいような、
そんな時間。
橙色の光は、私の目や肌を刺す。

手を繋いで、少し上を見上げてみて、
にっこり笑うのを見て、私も笑う。
逆光で、あまり見えなかったけれど。

それでも、儚い記憶。
もう数十年も前のこと。
いわゆる父親という存在。
私の中に残る、唯一の、記憶。

だからいつもこの時間になると、思い出す。
たそがれ、の、記憶。

たそがれ どき の、
私の中で、永遠に生き続けて。
たそがれて。

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