『水たまりに映る空』
何があるんだろう。
どんな人がいるんだろう。
どんな匂いで、
どんな色で、
どんな形なんだろう。
ふと、水たまりを見る。
青く晴れた空と、白い雲、
そして まちの風景が水面に映る。
ある人が見れば美しく、
ある人が見れば くすんでいる。
そんな、特別な鏡。
鏡は心。
映し出すそれには、
何があるんだろう。
その中の世界には、
きっと別の世界があるのだと、
ひとは思う。
晴れた空は碧く
浮かぶ雲は純白で。
映る水面は麗しく
太陽は反射して煌めく。
それは、
心まで流してくれた、
水の跡だから。
『これで最後』
なんでもいいの。
いつでもいい。
もうどうでもいい。
何も知らない。
何もいらない。
何も残らなくて、
遺らなくていい。
その前も、その先も。
惨めになるだけで。
もう、終わりにしよう
終止符を打ってしまおう
この人生に。
始まりの終わりの
これで最後。
『やさしい雨音』
そっと、目を閉じてみる。
まっくらな視界の中で
かすかに感じる、
聴覚が悦ぶ、落つる音。
嗅覚震える、そのにおい。
なにもない、視界の外で。
水はうたい、
草は踊る。
やさしい雨音。
青い匂い。
ふと、目を開けてみる。
そっと、上を向いてみる。
痛。
眼に入る。その水滴が。
痛。
響いてしまう。心の傷に。
痛。
すべて、流してほしい。
痛。
その痛みも、傷みも、
全部。
『そっと包み込んで』
すべてを、
何もかも。
いつもと同じ
今日という日を
生きるために
すべて
すべて
私の功績も、
私が犯した罪も、
その裏の優しさも、
気遣いも、
生きた証も、
存在も
すべて
すべて
無かったことのように、
そっと包み込んで
「私」が
無かったことにして
「私」という存在で
生きないために。
『酸素』
もっと生きさせて。
もっと、もっと、
息を吸っていたい。
生きたい、
生きたい
愛していたい
依存していたい
私には、貴方が必要だから。
貴方がいるから、
私は生きていられる
私にとって、
貴方は酸素みたいで。
行かないで、
生きたいから。
もっと、もっと、
貴方との時間を
過ごしていたいから。
貴方という酸素の過多で
死にたいから。