カーンカーン。
遠くで半鐘の音がする。
「おや、また火事かい?」
遊びに来ていた遊郭の外をなんとはなしに眺めてたら突然遠くから鐘の音が聞こえて来た。
「最近また火事が増えたらしいよ」
「放火も多いらしい」
近くにいた女郎らが口々に噂する。
「そういえばこの前の火事も火消しの男に入れあげたどこかの女が火をつけたらしいとか」
音がした方を見やると赤く空が染まっている。
「あんなに燃えちまったらどうにもならないねぇ」
ぽそりと呟く。
「あんたまたそんな他人事のように。こっちまで来ないように火消しに頑張ってもらうしかあるまいよ」
「しかしあれだね、さっきの…」
この時代放火は大罪だ。
「罪を犯しても好いた人に逢いたいとはどんな気持ちなのかねぇ」
逢いたくて堪らない思いの業火。
それと引き換えに彼女は何を手に入れたのだろうか。
遠くでまた鐘の音がひときわ激しく鳴り響いた。
(遠い鐘の音)
寒い寒いその日に1枚の写真が届いた。
かわいいちいさな雪だるま。
仕事で遠くに行っている恋人のところには雪が降っているらしい。
はしゃいで作ったのであろう姿が目に浮かぶ。
嬉しくて可愛くて思わずにやけてしまう。
「可愛いなぁほんっと」
誰かに自慢したくてSNSにこっそり投稿。
「友だちが送ってくれた雪だるま」
そんな文面を添えて。
俺たちが付き合ってるのは内緒なので。
でも自慢だけはさせて貰ってもいいですか?
この後、恋人からすごいクレームの連絡が届いた。
ごめんなさい。
(スノー)
夜空を越えて会いに行く。
どこにだって飛んでくよ。
煙突なくても大丈夫。
いい子じゃなくたって特別ね。
大人だっていいんだよ。
欲しいもの何でも願って。
でも出来るだけ可能な限りでお願いね。
大きくてもいいよ。頑張って運ぶから。
だからいつまでも願って願ってお願いね。
枕元にくつした置いててね。
そして、楽しいことだけ考えて眠りについて。
朝には笑顔見せてね。
今年も会いに行くよ君の元へ。相棒と一緒にね。
いつまでも待っててね。
🦌(夜空を越えて)
君からの連絡がなくひたすら待つ日々。
いつでもいい、いつまでも待つ。だからきっと会いに来て。
そう思ってがむしゃらに過ごして来たここ数年。
「本当にあの子と前に会った事ない?」
突然投げかけられた問いかけ。
彼女はむかし君に会って俺との話しを聞いたことがあるという。
何年も前1人の少年と手紙のやり取りをした。
彼が養子に出されそれから連絡が途絶えてしまったその彼と。
あのほんのひと時であったけど忘れられない夏を共に過ごしたあの彼が同じであるなんて。
そんなことは…。
「本人から直接話しを聞きたいので宜しかったら連絡先を教えてもらえませんか…?」
彼が自分から会いに来るまで連絡しないと決めていた。
でもこれは確かめなくては…。
そう言い出した俺に対して彼女はどうしたらいいか逡巡しているような態度を取った。
「あの…知らないの?」
思いは巡る。
彼の素行の悪い仲間から追われて共に逃げ回ったあの日。
リムジンに乗せてやると言われたそのバイクで島中を走り回ったあの日。
車が故障して立ち往生してたときに出会った犬に導かれた先で見つけた川で共に水遊びをして叫んだ。
初めてのケンカもした。
砂浜ではしゃいで遊んでスイカ割りをした。
花火は1人で見た。
最初はわずわらしかった君なのになんだかんだで共に旅をしたあの日々を。
彼の笑顔を。
死ぬなと懸命に言ってくれた。
そんな彼が。
もうこの世界に居ないなんて、信じられない。
嘘だ嘘だ嘘だ。
まだあの共に過ごした記憶は新しいのに。
彼のぬくもりはまだあるのに、、
足元が揺らぐ気がした。
花火大会の日、彼は抗争に巻き込まれ逃げた先で交通事故にあったらしい。
🐳(ぬくもりの記憶)
昨日おかわり🐳して来ました。
昨日更新出来なかった理由(笑)
Blu-rayも必ず手に入れる。
うっすらと目をあけ、開け放たれた外を見る。
真っ白ですごく静かだ。
見渡す限りの白。
「何もないようだな」
終わりに近づく恐怖も不安も。
ただただ静かで白い世界。
もう何年も前にこの六畳ほどの世界になってしまった己れの世界。何もない。
晴れた空の光りに反射してきらきら光るその先を眺めながら、
「本当に綺麗だな」
この眼前に広がる景色のようにただ静かにひっそりと溶けて消えたいと。
自嘲気味にひとりごちる。
今日はちょっと冷える。
また。少し休もう。
(雪原の先へ)