りくのいるか

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12/15/2022, 4:00:25 PM

雪を待つ


雪は綺麗だ

潔い

清潔感のある白衣のように高貴で

冷たくて痛いのも

おいそれと近づけない感じも良いよね。

昔、雪を被った富士山みたいな人が好きだったな。

雪を被るとみんな特別になる。

だからみんな雪を待つのか。

12/15/2022, 3:44:26 PM

イルミネーション

昔、図書館で働いていた時に

お昼休みは先輩といつも一緒で
お弁当を食べていたら

「私は12月はイルミネーションを見に行くのが好きなのよ〜、あんたも、私より若いんだからさ〜、こんな楽しい季節はどっか見に行きなよ〜。」

そうか、なるほどな〜

近場でたまたま行き当たったイルミネーションが

ピンク街で有名な町の川沿いの桜並木だった

桜の季節こそ、最高に豪華で美しいが、

今は

裸になった桜の木にピンク色の豆電球が無理矢理巻き付けられてチカチカしていた。

なんか……毒々しくて

露骨なイルミネーションだなぁ……
綺麗だけど……

場所柄から、華やかだけど、お色気できわどい服を着て働かされている女の子を連想してしまい呆然とした。

興味本位で近づいた瞬間

「あの〜……こ、こんばんは、
ぼ、僕、この会社で内定をもらったんですけど、

このアンケートをやらないと、
内定取り消しに……

住宅についてアンケートを、

あ、待って、

待って〜!」

泣きべそをかいた青年が追いすがって来た

慌てて猛ダッシュで逃げる羽目に

クリスマスのイルミネーションに引き寄せられて来た人に

哀れな青年を使ってアンケートをさせるなんて

とんだアリジゴク営業だ!

裸の桜の木にピンクのイルミネーション付けたら
枯れ木がピンクにチカチカしてるだけだよ

青年は可哀想だったなぁ……。

可哀想な青年をダシにお客さんをいっぱい釣るんだなぁ。

クリスマスに地獄を見ちゃったよ。

12/13/2022, 4:26:59 PM

愛を注いで

私は残念ながらずっと独り身なのだが

鳥の男性には愛されていた。

兄が飼っていたジュウシマツのクロちゃんだ

彼は例えるならタキシードを着た菜食主義の痩せた中年紳士のような鳥だった。

非常に綺麗好きで

トイレの場所も決めており、
他のジュウシマツは喜んで飲んだ豆乳も嫌がった。

クロちゃんは兄の髪の毛や髭をピッと引っ張って
毛ずくろいしてあげて愛情表現をしていた。

私はある時、思いつきでクロちゃんに、ミネラルウォーターを中指につけて、しずくにして飲ませてあげようとした。

クロちゃんは首を振って眉根を寄せるような嫌な表情をし

「いえ、結構です。」

と、丁寧に断わっていたが、私が何回も勧めたところ

「仕方ないですね、少しだけですよ?」

と、嫌々、お世辞で飲んでくれた

パッと表情が変わって

「おー!美味しい!もう少し、いただけますか?」

おずおずと、上目遣いで、さっき水を滴らせた指を優しく突っついた。

私は喜んで、彼の好物の南アルプスの天然水をあげた。

それからジェスチャーでクロちゃんは私とコミニケーションを取るようになって

クロちゃんから私にマッサージをして欲しいところを押し付けてきたり、

私が指で羽を広げても見ても嫌がらず

「僕の羽、綺麗でしょう?どうぞどうぞ、見て良いですよ。」

と、でも言っているかのように穏やかに微笑んでいるようだった。

ある時は

「温かいから直に手に乗せて」

と、

掌の上に乗せたフン避けのティッシュを嫌がって

私の見ている前を
右に左にぴょんぴょん飛び

珍しく私の手から逃げたので、

おや?と、様子を見ていたら

ちゃんとトイレを済ませてから

「これで安心でしょう?」

と、掌に飛んで来た時は、あまりに賢くてびっくりした。

言葉こそ通じないが、ほとんど意思の疎通が出来たので

私はこっそり、クロちゃんのくちばしにキスをしていた。

怖かったかな?とクロちゃんの表情を見てみると
気のせいだろうが、ウットリしているように思えた。
(鳥だけに……)

ある日、
クロちゃんが、私の肩にとまって、歌いながら踊っていた。

ご機嫌だなぁと思っていたら

クロちゃんが歌の途中でほっぺをつんつん優しく突っついた、

「え?なに?」

呼ばれた気がしたので

クロちゃんの方を向いたら

唇にくちばしで軽くトン、トン、トン

と……

キスしてくれたのだった!

ひゃああ
照れますな。

クロちゃんは歌を真剣に聴いて無かったりすると、

目を釣り上げて、

「今の聴いて無かったでしょ?最高傑作だったのに!」

めちゃくちゃ怒っていたので、歌に愛を注いだプロシンガーだったのだろう






12/12/2022, 1:47:18 PM

心と心

歯医者さんで親知らずを抜いて貰ったのがきっかけで
三叉神経痛になり

身体中が痛くなって、

1年間ずーっと痛み止めを飲み続けていたら、アナフィラキシーを起こしたり、多くの薬物アレルギーになってしまった。

お医者さんにかかってみたら

身体中が痛くなるのは結局、鬱病が原因だと言われた。

家庭内のいざこざと、いじめが忘れられず

ずーっと他人や家族も怖くて、苦しくて、毎日死にたい死にたいと思っていた。

バチが当たった。

中年にさしかかり

本当に命に関わる病気になって

今度は凄く死にたく無いと思った。

私は本当は、死にたいのでは無くて、助けて欲しかった。誰かに理解して貰いたかったのだった。

薬物アレルギーが増えたので手術中に死ぬリスクが高くなってしまったし

良い医師も紹介して貰ったのに、対人恐怖症と過去の恐怖が蘇り、どうしても信用できず、怖かった
( 幼少期にアデノイドの手術を失敗され、他院でやり直した )

それに、ものすごく痛がりなので、どうしても手術したく無かった。

たくさん悪あがきをした。

食事療法も運動療法も色々やり、スピリチュアルもやった

スピリチュアルは優しそうなイメージがあったので期待したが、

病気が悪くなってくると

「あなたが○○なせいです!」

と、私を責め始めた。

私を責めているスピリチュアルの先生や

自然療法の先生達の表情や目をジッと見つめていて

同じ感情がある事に気づいた

「もしかして……私が悪いんじゃないか?間違っていたんじゃないか?
私は悪くない!責めないでくれ!」


自分が信じている物が間違いではないかと言う恐怖だった

「悪人になりたくない!私は善人になりたかったのだ!悪いのはこいつに違いない!そうだ!」

可哀想になって、自然療法やスピリチュアルの先生達に精神的に頼るのをやめた。

病状が悪化し、腫瘍が27cmに育ってしまい、
夜、寝ていても腫瘍がドクドクと勝手に大きくなっている感覚に耐えきれず、手術を決めた。

父は無関心で母も兄も心配してくれず、ぼんやりしていた。

私は1人なんだ……。

手術を受け、痛みと絶望と孤独にひたすら泣いた

動け無かった。頑張れない身体になってしまった。

しかし、考え方が、変わった。

他人とは分かり合え無いことを前提として
孤独に暮らしていると

ふとした優しさが
ものすごく暖かくて

違う涙が出た。

分かり合え無いはずなのに

分かろうと努力してくれるなんて有り難い

本当にありがとう

あと、他人に助けてもらいたい、わかってもらいたいと言う欲望も

自分で自分を助けて、自分で自分を理解して
自分が自分の親友になる事で解決するとわかった。

『働く細胞』と言う漫画も読んで、身体に感謝して大号泣した。

極限まで落ち込む事も大切なのかもしれない。

あぁ……説教臭い。
自分に説教。

12/11/2022, 2:15:13 PM

何でもないフリ

私は対人恐怖症だ

他人が物凄く怖い。

子供の頃、実は人間では無い事がバレてしまうのでは無いかと常に怯えていた。

お医者さんに連れて行かれたら、内臓が人間では無いのがバレてしまうのが怖くて

断末魔の獣のように泣き叫んで
親を困らせていた。

学校に行くと人一倍高い身長と体重で常に目立ち、暴れん坊の男の子達から怪獣ごっこの生贄になって

常に血を流していた。

両親は共働きで、母親がPTA活動が全く出来なかった為、苦情の心配が無かった上に

学校の先生も体罰全盛期の頃だったので

「大女、総身に知恵が回りかね」

と、先生もいじめっ子達と一緒に笑っていた。

学校帰りに
いつも男の子のいじめっ子5、6人から待ち伏せされて、

靴やカバンや石で気が済むまで殴られて地面に倒れていたが、

なぜ、こんなに私に執着して、殴ったり蹴ったりするのだろう、なぜ私を殴りながら笑うのだろう。

私をブスと罵りながら笑っている顔は、なんて醜い表情だろう。

と、じーっといじめっ子達を観察していた。

物凄い痛みだったが、

対比で

横倒しの視点から見た地面と草花、眩しい陽光がやけに美しかった。

少しでも小さくなりたくて、いつも猫背で俯いていたので、

「子供らしくない。可愛くない。根暗女、笑え!」

と、毎日、先生から笑うまでひっぱたかれた。

「お前が普通になれるように暴力で身体に分からせてやってるんだ!お前は大人になった時、私に感謝するようになるだろう。」

私は、廊下に机と椅子を投げ出され、先生が捕まえて檻に入れた鳩の隣の席になった。

「クルックー。ポッポー。」
上目遣いで鳩が私を見ていた。

あの教室では私より鳩の方が位が上だった。

私は普通の人間じゃないんだ……普通の人間のフリをして生きなければ……バレたら殺される。

『フルメタル・ジャケット』と言う映画の主人公を見た時、私かと思った。

でも、平気なフリをして、今日も生きる。


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