シャイロック

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4/15/2025, 11:59:13 PM

春恋

春に恋をしても良いのだろうか
こんなにも美しい時期に
こんなにも美しい人に
恋をしてもいいのだろうか

こんなにも夢のようなのに
こんなにも現実的に
恋をしても良いのだろうか

庭でヒヨドリがヒューイと啼く
それは春恋をしていいという意味かな
いけないという意味かな

No.169

4/15/2025, 3:11:21 AM

未来図

 私の世代だと、もう未来図なんて無いんじゃないの?90歳を過ぎたら、残りの人生、行きていくだけで精一杯だわ。
 なにしろ、遊び友達がどんどん減っていく。先月、ランチ会をしたと思ったら、今月はそのうちの1人の訃報を知らされる。
 私はまだ動けるけど、お友達が足腰を痛めて動けないとかね。この年になると、簡単に転ぶのよぉ。ちょっと足元に落ちていたものを拾おうとしたら、何故か手も付かず頭からいって流血騒ぎ!
 これは私も一回やらかしたけどね。ぶったところから腫れ上がって、その内出血が数日経つと顔に降りてきて、すごい迫力になるのよ!怪談の「お岩さん」みたいな感じ。
 そんなこんなで、友達ともなかなか会えなくなる。会うとしたら、倒れたっていう連絡を受けて、病院にかけつけたときとか?
 もちろん、元気な友達も居るわよ。もう一人になっちゃったけど。あー未来図あるわ。彼女と、お互いの夫が亡くなったら、2人で同じ、ハイクラスの老人ホームに入ろうって約束してる。なかなかそれが実現しないんだけど、私たちの未来図はこれだわ!

No.168

4/14/2025, 12:47:59 AM

ひとひら

病院に向かうバスに乗っていた
元々の病気の他に、
高い熱が有り、謎の発赤も有りで
満身創痍の気分だった
ふと、視界を白いものが過ぎった
桜のひとひらだった
なんかもうね、涙が出た
バスの上部、換気用の窓が
ほんの少し開いていた
そこから入ったひとひらが
私のところに舞い降りたんだよ!
具合が悪かったからなおさら、
この偶然が嬉しかった
私はこれを丁寧にティッシュに包んで
持ち帰った・・・宝物のように

No.167

4/13/2025, 8:29:19 AM

風景

 夢の中で、私は森のようなところを彷徨っていた。高熱に浮かされた明け方のことだ。悪夢と言えば悪夢だが、逃げているワケでもなく、急いでいるワケでもなく、ただひたすら歩き回っていた。
 私はたまに、夢を見ながら「これは夢なんだ」と意識している時がある。逃げている夢の時は「泳ぐみたいに飛べるよ」とか、自分にアドバイス?する時もある。
 この彷徨う夢の時も「その大きな樹のところ、隣が白樺の。さっきも通ったよ」
 第三者的に俯瞰してみていると、似たような風景でも分かるらしい。この夢、なんだか小さな沼のような湖のような場所に出て、唐突に終わった。目が覚めたのだ。
 不思議なことに、あの最後の風景が今も頭に残ってる。

No.166

4/12/2025, 8:52:30 AM

君と僕

 君と僕は、来年結婚することになっていた。5年付き合って、そのうち1年同棲して、やっとプロポーズして結婚までこぎつけたんだ。
 それなのに、君は突然事故で死んでしまった。そんなことって、有るんだな。
 ショックが大きかったのか、告別式が終わって、彼女の家から帰宅したら、僕は横になったまま起きられなくなった。意識はあるし動こうと思えば動けそうなんだが、脱力したまま起きられない。
 君と僕は、結婚するんだったろう?
なぁ、結婚するんだったろう?
 悲しくて涙も出ない。

No.165



夢へ!

 夢を見ることも出来無かった青春時代。何か言えば、ことごとく「お前には無理だ」「お前になんか出来っこない」と潰されてきた。
 それでも密かに目論んでいたことはあった。小説を書きたかった。ワープロも無い時代、原稿用紙に書き貯めた文章を、地元の小さな文学賞に応募した。
 奨励賞というトップでは無い結果だったが、親は「小説を書くなんて片輪(注意、差別用語です)のやることだ」と、世間様に恥ずかしいから、受賞を取り下げろ、と言い出した。
 結局、それは出来なかったのだが、以来、書くことも禁止された。
 禁止されたが、地元のタブロイド版の新聞にエッセイを頼まれたり、タウン誌に連載を頼まれたりして、そういう正式なオファーには、親は弱かった。
 夢へ!踏み出した瞬間だった。
 結局、その後自分で才能に見切りをつけたんだけどね。悪役を登場させられないという、決定的な弱点に気づいた。悪役が出ると、物語にメリハリがついて面白くなるのに「そんなイヤなこと言わせたくない」「そんな怖いことになったら主人公が可哀想」とか思ってしまって。

No.164

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