シャイロック

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2/14/2025, 4:02:51 AM

そっと伝えたい

 このタイトルで、このことを考える私って!・・・決してそればかり見ているワケではありませんよ!ありませんが、ズボンのファスナーが開いている人って、意外と多くないですか?
 学校や職場で、何人に教えてあげたか分かりません。その教えるタイミングや言い方が難しいんですよね。
 ごく親しい人なら「やだ、空いてるよ!」で済みますが、気が張る相手だと言いにくい。でも、その人がこれからまた行くところがあったりしたら、恥をかくのだから、今のうちに教えて差し上げたほうが良いよね、と、葛藤します。馬鹿馬鹿しいほどに。
 そばに行って、そっと「失礼ですが、そのぉ」ぐらい言えば、察しのいい人なら気づきますが、ニブい人だと駄目です。
「え?なになに?」
「えーとですね」
「どうしたの?」
「(『どうしたの』じゃないわよ)開いてます」
「何が?」
「ですからぁ、ファスナーです!」
「あーっ!」
そっと伝えたいのに大騒ぎになります。


No.108

2/13/2025, 3:43:09 AM

未来の記憶

 時間旅行が出来るようになれば、未来の記憶も有り得るだろう。「親殺しのパラドックス」とか「行った先で死んだらどうなる」とかの疑問は、取り敢えず未来に行っている限りは問題ない(ないのか?)。戻ったら、他の人に未来のことを伝えればいいのだ。将来、何パーセントの人が時間旅行を出来るのか分からないけどね。
 でも私は、やはり過去に行きたい。戻って行く私は、どんな風に見えるのか分からないが、とりあえず過去のカッコ悪い失敗を地道にクリアして来たい。
 そのためには、少なくとも初回は「私は未来から来たあなたで、私の記憶では、あなたはこれから失敗するんだけど、しないようにしに来た」と納得してもらわなければいけない。
 頭が堅く、曲がったことが嫌いだったあの頃の私に、それは通じるだろうか?いきなり現れたお婆さんにそんなことを言われても信じられないだろう。推理小説もSFも、好きでよく読んでいたけれど、小説の中のことと現実のことは違う。「未来から来た???」と、まずそこから説得することになる。
 さて、そこに現れた私は、彼女(私)の記憶を全部持っている。未来の記憶が有るワケだ。大衆の面前で転んだとか、変なオトコと付き合ったとか、親にこう言ったらえらく怒られたとか、たいへんな会社に就職したとか、未来の私が随所に現れたら「あ、私、これから失敗するのね」と、落ち込んだり、「あ、また来た!」と、うるさがったりするかも知れない。
 これは初回で、これがいけなかった。あれは止めよう。こんなオトコが接近してくるけどなびくな。〇〇は買うな。高校の屋上で水たまりを飛び越えるな。と、全部(実はまだまだあるが)言えばいいのだろうか?
 それらを聞いても、きっとついやってしまうんだろうな。自分のことだからよく分かる。では、行って言っても無駄なのか!

No.107

2/11/2025, 11:40:28 AM

ココロ

 うちの家事ロボットはココロという名前だ。心が無さそうなロボットだからこそ、ココロと名付けて可愛がっている。
 「ココロ、テレビをつけてくれ」
「ワカリマシタ、リモコンノスイッチヲイレマス」
「ココロ、そろそろ風呂を沸かしてくれないか?」
「ワカリマシタ、ジドウスイッチヲオンニシマス」
「ココロ、ここに糸くずが落ちてるぞ」
「ワカリマシタ、スグニヒロイマス」
「ココロ、コーヒーを淹れてくれ」
「ワカリマシタ、スグニイレマス」
「ココロ、玄関に行って、オレの靴を揃えてくれ」
「ワカリマシタ、ソロエマス」
 ココロが居てくれて、本当に助かる。オレは、ソファに寝転がりゲームをしていれば良いのだ。
「ココロ、毛布が落ちた。かけてくれ」
「・・・・・・」
あれ?返事しない、壊れたか?そっぽを向いたまま命令していたが、まともに振り返って顔を見た。顔と言ってもロボットだから、取り敢えずてっぺんに丸いモノが付いていて、目鼻(みたいな)が付いているだけだ。
 そのココロの顔が赤くなっていた。
「どうかしたか?ココロ」
「ジブンデデキルコトハジブンデシマショウ。コノママデハ、ナニモシナクナニモデキナクナリマス」
 ココロは怒っていた。オレのために怒ってくれている。
 オレは、思わず、
「ごめん!」とつぶやいた。
「ワカレバイイノデス」
ココロの顔は、いつもの色に戻った。ココロが、心を持ち、心を表した瞬間だった。

No.106

2/11/2025, 2:55:27 AM

星に願って

 私が中学生、5つ違いの妹が小学生の時、ニュースで大規模な流星群が見えると聞いて、通っていた小学校の校庭に行った。
 あの頃の学校は自由で、校庭など誰でも入れた。子どもたちは学校が終わっても、ずっと校庭で遊んでいたものだ。
 だがさすがに、深夜1時の校庭は静かだった。田舎なので、人通りはすっかり途絶え、今のように灯りが明るくないので、ボォっとした光があちこちに有るだけで、暗い。
 怖がりの私は、校庭に入ったとたんに、もう後悔していた。
「やっぱり帰ろう」
「えーなんで?流れ星見たいよ〜!」
「で、でも、こんなにたくさんのお星さま見たじゃん」
「流れ星見に来たんだよ」
「だってさ、真っ暗だよ、怖くない?」
「怖くないよ、お姉ちゃんと一緒だもん」
いや、そのお姉ちゃんがビビってるんだけどなぁ。
 オバケが出たらどうしよう。悪いおじさんが来たらどうしよう。空を見あげながら私は、『どうか怖いことが起こりませんように!』と、星に願っていた。

No.105

2/10/2025, 3:43:32 AM

君の背中

 私の好みの男性は、鍛えていないぽっちゃり型。夫もそうだが、歴代の彼氏は九割ぐらいそのタイプだ。
 亡くなった私の実父は、短気で自分勝手で暴力的で、ろくでもない人間だった。あの世代にしては足が長くスリムで、適当にイケメンだったので、モテて浮気もしたらしい。多分、その正反対が私の好みになったんだろう。
 さて、体型的にぽっちゃりだと、当たり前だが背中も大きい。その広い背中にしがみつく、なんていう想像が楽しいのかも知れない。
 若い頃の夫はスリムだった。従兄弟だから知っているのだが、あの頃のままの夫だったら一緒にならなかったかも知れない。
 義母もまたぽっちゃり型で、その体型のとおり、おおらかでゆったりしていた。義母は父の姉である。あまりにも性格や体形が違うので、この伯母が父の姉とは、初めて会ったときは信じられなかったほどだ。
 と言うわけで、我が君の背中は大きい。いざという時には、しがみついて守ってもらいたいものだ。

No.104

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