ココロ
うちの家事ロボットはココロという名前だ。心が無さそうなロボットだからこそ、ココロと名付けて可愛がっている。
「ココロ、テレビをつけてくれ」
「ワカリマシタ、リモコンノスイッチヲイレマス」
「ココロ、そろそろ風呂を沸かしてくれないか?」
「ワカリマシタ、ジドウスイッチヲオンニシマス」
「ココロ、ここに糸くずが落ちてるぞ」
「ワカリマシタ、スグニヒロイマス」
「ココロ、コーヒーを淹れてくれ」
「ワカリマシタ、スグニイレマス」
「ココロ、玄関に行って、オレの靴を揃えてくれ」
「ワカリマシタ、ソロエマス」
ココロが居てくれて、本当に助かる。オレは、ソファに寝転がりゲームをしていれば良いのだ。
「ココロ、毛布が落ちた。かけてくれ」
「・・・・・・」
あれ?返事しない、壊れたか?そっぽを向いたまま命令していたが、まともに振り返って顔を見た。顔と言ってもロボットだから、取り敢えずてっぺんに丸いモノが付いていて、目鼻(みたいな)が付いているだけだ。
そのココロの顔が赤くなっていた。
「どうかしたか?ココロ」
「ジブンデデキルコトハジブンデシマショウ。コノママデハ、ナニモシナクナニモデキナクナリマス」
ココロは怒っていた。オレのために怒ってくれている。
オレは、思わず、
「ごめん!」とつぶやいた。
「ワカレバイイノデス」
ココロの顔は、いつもの色に戻った。ココロが、心を持ち、心を表した瞬間だった。
No.106
2/11/2025, 11:40:28 AM