わぁ!
プレゼントの箱を開けたとたんに、朋美は「わぁ!すごい、どうしてわかったの?こういうの欲しかったの!」
今年の流行色だと、売り場の女性に言われて選んだのだが、僕は少なからず驚いていた。こんなに喜んでくれるなんて。
うちの母は、一人っ子の僕が何かプレゼントしても、全然喜ばなかったんだ。それどころか「こんな色、派手で着られないわ」「この時期からじゃ、つけられないわね」「私これ、使わないのよ」
性懲りもなく毎回選んでは、今度は喜んでくれるかなと差し出したプレゼントは、ことごとくけなされて、選んだモノも輝きを失う。
だけど今、朋美は、誕生日プレゼントのトップスを胸に当てて似合うかと聞いたり、広げてはつくづく眺めたりと、全身で喜んでくれている。
「ごめんね、ブランドものは買えなかったんだ。そんなに高いものじゃないよ」
「値段じゃないわ、啓太が私のために選んでくれたのが嬉しいのよ。それに、とっても肌触り良いし、ブランドなんて無くっても良いものは良いものよ」
こんなに喜んでくれるなら、次は…クリスマスか!頑張って選んじゃうぞ。あーやっぱり喜んでもらうと嬉しいな。朋美が「わぁ!」って言ったときの笑顔は最高だったよ。
終わらない物語
人が生まれて死んでいく。それが連綿と続いていく。これこそが終わらない物語だ。
ものすごい数の精子が、長い長い旅をして、熾烈な戦いのあと、卵子と出会うのだが、受精卵となる確率は28億分の1と言われている。こうしてこの世に出た私たちの、親の親の親の親の、そのずっと前のご先祖さん達も入れると、限りない出会いと、それ以外の人たちとの別れがあって、そしてそれぞれがここにいる。
「ファミリーヒストリー」という番組があって、たかだか3代4代前あたりまで遡っても、壮大なドラマがある。有名人ではなくても、やはりそれぞれのドラマがあるはずだ。
子どもが生まれないとしても、人生には物語があるのだから、こうして私たちの前から繋がった物語を、私たちも、その後の人たちに受け継いでいく。
私たちの物語は、大きな大きな終わらない物語のほんの一章なのだ。
やさしい嘘
私は嘘をつけない体質だ。小さな嘘をついたとき、親に「嘘ついただろ、鼻の周りが白くなってる」と言われて以来、トラウマになっている。
どうも、嘘をついたことで血の気が引くと、鼻や唇の周りが白くなってしまうらしい。血の気が引くところが小心者なのだが、親の前では非常に緊張していたから、嘘を付くなんて自分にとっては一大イベントだったのだ。
さて、そんな私が嘘をついたのは大学の時。通信教育だったので、1つ上の従姉妹のアパートに、スクーリングの期間中居候させてもらっていた。
実家で押さえつけられて暮らしていたので、その期間だけが唯一私の青春だった。彼女とお風呂屋さんに行ったり、大学同士が近かったので、待ち合わせてどっちかの学食でランチをしたり、彼女のゼミの飲み会に参加させてもらったり。
その朝、アルバイトの合間を縫って、従姉妹が実家に帰る日だった。「葉月ちゃん、行ってくるね」と言う彼女に、私は手を振って「行ってらっしゃい」と見送った。
朝から身体がだるく、高熱が出ている自覚があった。実は、スクーリングに出発する数日前、小学生だった弟が風疹にかかった。私は20才になっていたのでまさかと思っていたが、感染していたのだ。
だけど、東北の実家に帰るのに、彼女は、切符を取り、地元での予定を入れ、親への土産を買ってある。病気のことを言ったら、やさしい彼女は、帰郷を取りやめるかも知れない。
嘘をついたワケではないが、何も言わないことが嘘だったと思う。言わないから、鼻の周りも白くならなかった(笑)
彼女が帰ってくるまでの間、たいへんだったのだが、それはまたの機会に。
瞳をとじて
瞳(瞳孔)の開閉は、自分では出来ない。不随意筋だからだ。脳からの指令で、眩しかったら閉じるし、暗いところでは開く。そして、死んでしまった人の瞳孔は開いてしまう。
だから、言うなら「瞼をとじて」なんだが、「瞳」という響きがきれいなのと、字面も良いので、いろいろな楽曲で使われてきた。
響きや字面は、やはり良いほうが良い。
でも、でも、だ!
そういった歌詞を観たり聴いたりするにつけ、毎回ギョッとしてしまう。
同じようなところで「食べれる」みたいな動詞の表現も、ちと違う。ら抜き表現というヤツだ。いまではほぼ市民権を得てしまい、アナウンサーでも使う人が居るし、歌にも使わている。拘っている私が、頭が硬いのだろう。歳だからな。言葉って、長いスパンで見ると変わってきているからね。
でも、どれも楽曲として立派に成立しているいい歌だし、気にしないで聴いていたら良いんだね。
あなたへの贈り物
あなたへの贈り物を何にしようかと、非常に長い時間考え、非常に長い時間迷い、これにしました。
お気に召したら嬉しいですし、お気に召さなかったら、私がお目にかかる時にそれの行方は聞きませんので、よろしくお願いします。
ただ、私がどれほどの気持ちでこれを選んだかだけは、お察しください。
これからも、よろしくお願いいたします。
・・・なんて手紙が添えてあったら、怖いかな嬉しいかな、相手によるかな(笑)