YUYA

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6/24/2025, 1:03:51 AM

「空を描いたクレヨン」


小さな手で握ったクレヨン
何色でも 空は描けた
青でも 赤でも 虹色でも
だって、空は ぼくのものだったから

押し入れの中は秘密基地
ダンボールが宇宙船になって
毛布はマント、ぼくはヒーロー
夜を越えて 星を救った

「大きくなったら何になりたい?」
誰かが聞くたびに
毎日変わる夢を 胸いっぱいに詰めた
なれると思ってた 本気で、無邪気に

だけどいつの間にか
空は色を失い
秘密基地も片付けられて
ヒーローは制服に変わった

それでも、たまに思い出す
あの日のぼくが笑ってる
「まだ、なれるよ」って
クレヨンを差し出す

だから、今日も描いてみる
子供の頃の夢の続きを
少しだけ不器用な線で
心の中の空に

6/19/2025, 1:27:58 AM

「暮らしの残響」


夕陽が、洗濯物に寄りかかる
風がカーテンをくぐり抜け
誰かの笑い声が 遠くの路地にこだまする

商店街の魚屋が 今日のおすすめを叫び
八百屋のラジオが 季節の変わり目を教えてくれる

誰かが落とした買い物メモ
公園のベンチには 時間を持て余す老夫婦
自転車のブレーキ音と 味噌汁の湯気のにおいが重なって
この街の鼓動になる

きらびやかじゃない
でも確かに、ここで誰かが生きている

それが、
「ただいま」が似合う街の姿だと思う

6/15/2025, 11:57:38 AM

《マグカップ》

 

朝の光が まだ柔らかい頃
私は 湯気をまとって
あなたの手におさまる

 

コーヒー、紅茶、ミルク
それが何であれ 私は知っている
それは 眠気を払うためじゃなく
心にひと呼吸を入れるための儀式

 

口をつけるそのたびに
言葉にならない思いが
少しずつ 冷めていく

 

割れることも 欠けることもある
それでもあなたは 捨てなかった
私は ただの器でありながら
あなたの静かな時間の一部だった

 

棚の奥にいても
ふとした日に また選ばれる
その無言の再会を
私は 待っている

6/14/2025, 6:14:52 PM

身分なき時代に、
真の高貴はどこへ消えたのか。
地位ではなく、
背中で導く者がいたならば
この国はもう少し、
優しく、強かっただろうか。

6/13/2025, 11:04:46 AM

『教えられなかった言葉たちへ』


語ろうとした、幾度も
だが口にすればするほど
本質は逃げ水のように消えていった

どうして伝わらない?
なぜ、届かない?
怒りと疲れが、喉の奥に溜まっていく

言葉はあった
けれど、それは「教える」には重すぎた
理解させるには、
あまりに深く沈んでいた

だから、筆を取った
教えることをやめて
物語に預けることにした

誰かに伝えるのではなく
誰かが自分で気づくために

語らずに語る
教えずに導く
光のような、影のような、
静かな旅を紡ぐために

この手は選んだのだ
「小説家」という
孤独で、温かい、
語りの道を

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