謎い物語の語り手

Open App
2/12/2025, 7:56:11 PM

【未来の記憶】

ある日、鏡を見ていたら後ろに誰か立っていた。
話し掛けると、彼女は未来の自分だと言った。

姿や言動でそれは本当だと分かった。

「何か聞きたいことは?」未来の私は言った。
「……何か言いたいことは?」私は言った。

未来の私は押し黙った。何か考えているようだった。
そして一言「ごめん」と呟いた。

「いいよ、じゅうぶん頑張ったんでしょう」
私は泣きそうだった。恐怖じゃなくて諦めで。

私の事だもの。自分のことは自分が一番よく分かってた。そして、私はやっぱり弱くてだめだった。

未来の私は泣いていた。私も泣いた。
「あんただけよ。悲しんでくれるのは」

「さよなら」と言い残して未来の私は消えた。
しばらくして、未来の記憶がなくなった気がした。

「ネタバレなんて、私ってやっぱり最低な奴」
乾いた笑いを浮かべてそう呟くしかなかった。

2/9/2025, 8:04:29 AM

【遠く....】

[ねぼすけさんのお日さまがまだまどろんでいる。
お庭には霧が掛かっていて、空気は冷たい。

ねむれなかったわたしはぼーっと、
その景色を窓から見ていた。

わたしを抱きしめるくらがりの中で、
湖までお散歩をしに行った。

水面に映っているのに、暗くて見えない自分の姿。
心は遠く....ずっと遠くまでいってしまった。

お別れを愛しすぎてしまったの、わたし。
たいせつな人たちとのさよならを迎えにいった。

だから、目の前にひろがる山から、
お日さまが現れることもない。

このままなのよ。]


私を模した人形に、自分の日記を手渡した。
月が慰める暗がりで、湖にその人形を沈めた。
これは別れを愛した自分とのお別れだった。
さよならをしたはずの、自分の心に出逢ってしまった。
私は別れの全てが怖くなった。
人形の私がきっと遠く....連れていってくれるわね。
昔の自分を。消せなかった私の思いを。
次の太陽が昇る朝に向かう。そうしたらきっと、
私の大切にした者たちに、もう一度会いに行こう。

2/6/2025, 6:59:16 AM

【heart to heart】

I, I still believed in you.

that I could have a heart to heart with you.

In fact, we would have gotten along.

Even though I knew that one day we would part.

I had sworn to you that I would take care of you.

Yeah, but, you know, the goodbye came sooner than

I thought.

I really wanted to tell you, “Don't go yet,” but

I couldn't stand in the way of your path.

I thought you would be sorry to leave me.

No, I know.

I'm sure I'll see you again someday.

Goodbye, my love.

2/5/2025, 9:53:03 AM

【永遠の花束】

花を眺めていた。この国一面に咲く花束を。

ああ、本物の花ではないけれど。

民はいわば花で、私はそれらに水を与えるのだ。

それが、王としての役目なのだから。

私が陽となり、時に雨を呼び寄せ、地を潤す。

そうすればきっと、いつまでもこの国は続くだろう。

暴君のように見えるかい。この私が。

独裁者だと言われたって構わないよ。

もし不満が溜まれば民がこの太陽を隠すだろうから。

民は馬鹿ではない。だから今私に着くのだから。

町娘から貰った花束を見た。そして誓う。

ずっとこの国の繁栄を、幸福を咲かせるのだ。

私が庇護する永遠の花束を。

2/2/2025, 9:59:31 AM

【バイバイ】

大切な人だった。彼女がいるのが当たり前だった。
だからむしろ離れたがったのかも知れない。

優しくて暖かい陽のような存在だった。
いつしかそれが眩しくて、鬱陶しく感じていた。

気付かなかった。彼女が段々と陰っていくのを。
弱っていく心を、彼女は打ち明けなかった。

「またね、大好きなお友達」
彼女はいつも再会を約束してくれた。
「うん」
自分はそれに答えることができなかった。

ある日、彼女はぱったりと姿を消した。
彼女がいなくなった事に安堵さえ感じていた。

彼女を忘れ始めた頃、風の噂で聞いた。
彼女は自ら身を投げて、星になっていたのだと。

彼女との思い出をずっと反芻していた。
力なく笑って帰る後ろ姿は、六等星のようだった。

「バイバイ」
最後に聞いた彼女の言葉だった。

ああ、後悔してもしきれない。
太陽はずっと独りで泣いていたのに。

誰も、誰も彼女を抱きしめなかった。

Next