謎い物語の語り手

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【バイバイ】

大切な人だった。彼女がいるのが当たり前だった。
だからむしろ離れたがったのかも知れない。

優しくて暖かい陽のような存在だった。
いつしかそれが眩しくて、鬱陶しく感じていた。

気付かなかった。彼女が段々と陰っていくのを。
弱っていく心を、彼女は打ち明けなかった。

「またね、大好きなお友達」
彼女はいつも再会を約束してくれた。
「うん」
自分はそれに答えることができなかった。

ある日、彼女はぱったりと姿を消した。
彼女がいなくなった事に安堵さえ感じていた。

彼女を忘れ始めた頃、風の噂で聞いた。
彼女は自ら身を投げて、星になっていたのだと。

彼女との思い出をずっと反芻していた。
力なく笑って帰る後ろ姿は、六等星のようだった。

「バイバイ」
最後に聞いた彼女の言葉だった。

ああ、後悔してもしきれない。
太陽はずっと独りで泣いていたのに。

誰も、誰も彼女を抱きしめなかった。

2/2/2025, 9:59:31 AM