【未来の記憶】
ある日、鏡を見ていたら後ろに誰か立っていた。
話し掛けると、彼女は未来の自分だと言った。
姿や言動でそれは本当だと分かった。
「何か聞きたいことは?」未来の私は言った。
「……何か言いたいことは?」私は言った。
未来の私は押し黙った。何か考えているようだった。
そして一言「ごめん」と呟いた。
「いいよ、じゅうぶん頑張ったんでしょう」
私は泣きそうだった。恐怖じゃなくて諦めで。
私の事だもの。自分のことは自分が一番よく分かってた。そして、私はやっぱり弱くてだめだった。
未来の私は泣いていた。私も泣いた。
「あんただけよ。悲しんでくれるのは」
「さよなら」と言い残して未来の私は消えた。
しばらくして、未来の記憶がなくなった気がした。
「ネタバレなんて、私ってやっぱり最低な奴」
乾いた笑いを浮かべてそう呟くしかなかった。
2/12/2025, 7:56:11 PM