謎い物語の語り手

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【遠く....】

[ねぼすけさんのお日さまがまだまどろんでいる。
お庭には霧が掛かっていて、空気は冷たい。

ねむれなかったわたしはぼーっと、
その景色を窓から見ていた。

わたしを抱きしめるくらがりの中で、
湖までお散歩をしに行った。

水面に映っているのに、暗くて見えない自分の姿。
心は遠く....ずっと遠くまでいってしまった。

お別れを愛しすぎてしまったの、わたし。
たいせつな人たちとのさよならを迎えにいった。

だから、目の前にひろがる山から、
お日さまが現れることもない。

このままなのよ。]


私を模した人形に、自分の日記を手渡した。
月が慰める暗がりで、湖にその人形を沈めた。
これは別れを愛した自分とのお別れだった。
さよならをしたはずの、自分の心に出逢ってしまった。
私は別れの全てが怖くなった。
人形の私がきっと遠く....連れていってくれるわね。
昔の自分を。消せなかった私の思いを。
次の太陽が昇る朝に向かう。そうしたらきっと、
私の大切にした者たちに、もう一度会いに行こう。

2/9/2025, 8:04:29 AM