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8/8/2024, 6:15:31 PM

最初から決まってた/

小学生バスケクラブは弱小チーム
3年間で勝ったことなんて数えられるくらい

その時から負けスタート、
這い上がる為の人生だと決まっていた

負けることに慣れ
勝ちへの欲望は皆無

負けることが常
勝利なんて偶発的
そんな価値観で生きてきた

流れを変えようとはしてこなかった

その流れではダメなことはわかっていたが
見て見ぬふりを続け
自分に都合の良い甘ったれた言い訳を並べた

人間は強いだけが勝ちだけが正解じゃないと

それも一理あるが果たして真理だろうか
そんな自問自答を繰り返しながら


今まで色んな人間に会ってきて
今、初めてわたしの中の大きな
芯の価値観が揺さぶられている

動き出すきっかけをくれる人が現れた
ようやく手を差し伸べてくれる人が

そんな人をずっと待っていた
きっかけを、チャンスを

ここが分岐点

無下にはできない、したくない

わたしは進む
なにがあっても差し伸べてくれた手を離さない

大事に、見誤らないように、

自分自身で選択していく

こうなることは
最初から決まってたような気もする

だから待っていたんだ
苦しくとも死なずに、今日まで

7/30/2024, 11:35:51 PM

澄んだ瞳/

澄んだ瞳
絶望を知ってる瞳
何かを見据えた瞳

瞳に宿るのはその人の心、生き様、

涙を流した分だけその人の瞳は澄む
絶望を乗り越えた分だけ瞳は優しく据わる

痛みとともに生きるその瞳に出会った時
わたしは恋に落ちる

逃れようのない瞳がこの世には存在する

魅了され翻弄され堕ちていく

彼の瞳もそうだった

澄んでいる中に冷たさと強さと豊かさを感じた

とてつもなく美しく愛おしいと思った

出会ったら最後
逃れることはできない
本能が彼を求めてしまう

そんな溺れるような恋に終わりが訪れたのは
彼の瞳に変化が現れたからだった

ふたりで過ごせば過ごすほど
いつしか彼は孤高という強さを失くし
わたしを求めるつまらない瞳になっていった

わたしの羨望の瞳と彼の冷めた瞳が
まるで入れ替わるみたいに
綺麗に、だんだんと、着実に。

そして彼からの視線に耐えられなくなっていった

彼の瞳に映るのも、自分の瞳に彼が映るのも
嫌だ、と本能が叫んでいた
そう感じてしまった瞬間に
あぁ、もう全て終わったのだと悟った

彼の美しさはもう消えてしまった、と

彼の美しさを奪ったのは紛れもなくわたしで
そんな彼を愛せないのもまた事実で

その瞬間にこれは恋だったのだとわかった

恋とは人を傷つけてしまうことなのかもしれない


では愛とは。


愛するふたりはお互いがお互いを
暖かく、澄んだ瞳で見つめ合っているのかもしれない

7/23/2024, 6:49:49 AM

もしもタイムマシンがあったなら/

最初はやり直してうまくいったことに
よかった、と安堵するだろう

だけどそのうち
失敗してもまたやり直せばいっか
なんて怠惰になっていく

タイムマシンが無いから
人は後悔する
そして成長できる

一緒にいられることに
愛を感じ奇跡を感じられる

だからわたしは失敗しても
何度でも今をやり直す為にタイムマシンは使わない


なんて、、
そんなの綺麗事、


人間は弱いから何度も何度も使ってしまうだろう

それは仕方がない抗えない

しかし怠惰になるかならないかは
自分で決められる

どんなに不便でも便利な時代になっても
学ぶ人は学ぶし考えない人は考えない

もしもタイムマシンがあったなら
わたしは学びのために有効に使いたい

7/2/2024, 6:28:29 PM

日差し

あth〜あth〜

わたしの祖母は
つをthで発音する

台所へ立つ時やカーテンを開ける時、

事あるごとに
何度も何度も言うもんだから
気になって仕方ない

言葉が脳内で何度も繰り返されるからか
余計に暑い気さえしてくる

余計な暑さを与えられ苛々するわたし

扇風機の風にあたりながら
かき消すようにイヤホンを耳にねじ込み
爆音で曲を聴いた

祖母はこちらを見て口をパクパクさせていたが
わたしは知らんぷりをした


そんなジリジリと湿った夏はようやく過ぎ去り
冬を越えほかほかの春がやってきた

外はピンクの世界、満開の桜で
人々は浮き足立っている

わたしはいつもと変わらない道に
町に風景にひとり涙していた

外の世界は何も変わらないのに、
なぜ、なぜ
祖母だけがいないのでしょうか

なぜでしょうか

そう悔やみ涙するしかなかった

桜が無情にも美しく
ハラハラと舞っている

ガンだった

ステージ4の

まだ若かったのに

72歳、

まだまだ生きていてほしかった

今年の夏もまた一緒に過ごしたかった

うざがってごめん遠ざけてごめん
感謝を伝えられなくてごめん

悔やみきれない思いが
キリキリと心を切りつける

後悔ほど痛いものは無い

わたしはすがる思いで祖母の家を見に行ったが
電気などついてるはずもなく真っ暗だった
もう会えないことを現実として
直視せざるを得なかった


祖母が亡くなってからの
夏の日差しはわたしにとって
チクリとつらいものとなった

祖母の口癖を思い出しては
懐かしくなり会いたくなり
自身の無情の行いを悔いるのだった

そんなわたしも人並みに恋愛し
結婚をして親になった

子供の成長は嬉しいもので
祖母にも見せてあげたかった、と
そんな思いに打ちひしがれる

そして親になってもまた当たり前に
今年も夏の日差しはやってくる

ある晴れた夜、子供と線香花火をしに
近所の川辺を手をつなぎ歩く

生暖かい風がぬるりと湿った体にまとう

子供の額からじわりと出る汗を
拭ってあげていたとき
言葉を覚えたての子供が
わたしの顔を見上げ
あっつぃーね、と困り顔で訴えてきた

わたしは何故か祖母を思い出し
感情が一気に溢れ出て
子供を思わず抱きしめていた

子供は腕の中で少しもがいている

ごめんごめん、と膝についた泥をはらい
子供の頭をくしゃと撫でる

わたしは線香花火の放つ光を見ながら
祖母に対する罪悪感、懺悔の気持ちが
薄らいでいくのを感じていた

もういいよ、と祖母が言っているかのように
許された気がしていた

パチパチと鳴る音の奥で
子供が無邪気に笑っている

つらい夏の日差しがこの子のおかげで
あたたかいものになりそうという予感だけは
確かに感じていた

都合がいいかもしれないが
祖母からの贈り物のような気がして

ごめん、という気持ちは無くならないけれど
ありがとうという気持ちが上回った瞬間だった

それからはわたしにとって夏の日差しは
嫌なもので無くなった

祖母と子供
両方の存在を感じられる

大切で待ち遠しい、そんな季節になった

6/28/2024, 2:04:43 PM

1年後/

風景も変わる

価値観も変わる

変わらないでと願うのは
隣にいるのがあなただってこと

あとは何が変わっても構いやしない

わたしは変わらず
あなたの隣を歩いていきます

繊細な花/

君はフヨウの花

繊細でしなやかな君に似合う花

風をも味方につけ
さらりとどこへでも歩いていける君

僕は風にさらされながら
時折振り返る君を追いかける

君は華奢な細い手を差し出して微笑む

君の手は冷たくて、あたたかくて

晴れの日は笑い
雨の日は泣いて

そんな君に傘を差すのが僕で

君と歩くじめじめと湿った夏の散歩道

道の脇にフヨウの花が可愛らしく咲く

君は優しい目で愛おしそうに見つめる

下に落ちたフヨウの花が悲しげにもたれていた

君は泣きそうな悲しげな目をしている

僕はさりげなく拾い上げ
近くの川で汚れを落とし
彼女の髪へ挿してみる

彼女はうつむき後ろを向き歩き出したが
僕には見えていた

振り返った横顔がフヨウの花のように
桃色に染まっていたのを

フヨウの花
君に似合う花

繊細でしなやかな君に似合う花



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