コハク

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3/16/2025, 1:13:15 AM

t「心のざわめき」

絶対なんて言葉、存在しないんだと思った。
離ればなれになった君からもらった最後の言葉をずっと心の中で抱きしめている。
親の事情で君が迎えにくる、と言った場所から離れなければいけなくなった。名残惜しくも君との思い出がたくさん詰まったこの街とはお別れしなければならない。
君との約束を守る事が出来ないのはとても悲しいけど、もしかしたら君なら、自分がどこにいても見つけてくれるんじゃないかと淡い期待がどこかにあった。
大人になって、故郷から離れてあの頃からたくさんの事が変わった。幼い頃の気持ちは今でも大切な箱の中にしまい込んでいる。君とは当たり前だけど出会えない。
君がどこで何をしているのか、そもそも自分の事を覚えているのかすらわからない。
自分の心をざわめきさせるのは、いつもしまい込んだきみへの気持ちを取り出した時だけだ。

3/14/2025, 9:49:47 PM

t「君を探して」


「絶対に君を迎えに行くから待っててほしい」
夢の中で過去に交わした約束が現れる。
懐かしい。幼い頃に大好きだった君とお別れする時に交わした約束。あんな誓いを交わすくらい、過去の自分はすましてたんだろう。大人なら出来ないとわかっていても、子どもの時は出来ると思っていた。
そうだった、あの約束があったから自分は周りをみる癖がついたんだ…。
自分でどこにでも行けるようになった時に確か一度訪れた事がある。懐かしい気持ちとちょっとした期待と不安を込めて君の家の前まで行った事がある。表札を見て驚いた。けど、やっぱりという気持ちもどこかにあった。
君はそこにいなくて、君がいた家には知らない人がいた。
もう交わした約束を守る事はできない。けれど、過去の自分への小さな罪悪感がいつも君を探させる。
新しい場所に行くたびにもしかしたら…なんて奇跡を求めて君を探してる。いつかまた会えたらいいなと思って。

3/13/2025, 9:40:17 PM

t「透明」

透明な液体が顔の輪郭に沿って落ちていく頃には君を忘れられているだろうか。
初めて会った桜の季節。風にのって花びらの風がなびく朝に君と出会った。
真夏の暑さがじりじりと迫る頃、自分の気持ちを自覚した。どうしようもないこの気持ちは汗と一緒に流れてしまえばいいのに…。
紅葉で彩られる秋。君と笑い合えるのもあと少し。こちらの気も知らないで君の隣で秋を楽しむ。
雪と光のコントラストを見せる冬。寒い中今年最後の挨拶をして来年の約束をする。顔が赤くてもバレないし、泣いても誤魔化せるかな。君といれるのはあともう少し。
桜の蕾が見え始めた頃。君と出会った季節は別れの季節になる。君のために何度も溢した言葉と涙はどこかに消えた。
最後は笑顔でお別れしよう。何度も吐露した気持ちは涙と共に地面に落ちた。

3/12/2025, 9:27:16 PM

t「終わり、また初まる、」

仕事がずっと終わらない。趣味の一区切りがずっとつかない。やりたい事やらなければならない事、いくら時間があっても終わらない。人生は一度きり、よくそんな事を言うけれど、時間がいくらあって仕事も趣味も終わらない。
時計をみると所謂朝の時間、カーテンの上の隙間からうっすら明るい光がもれ出ている。
もうこんな時間…。
誰も聞かない呟きはただ酸素として消える。
とりあえず、いま目の前の物は形になった、あとはチェックしてもらうだけ。
出来上がった形のある物を見て、すぐに視線を滑らせた。
次の納期は…これとあれが今月中…。
一つ一つ確認して改めてスケジュールを組む。
趣味兼仕事は有り難い事にたくさん頂いている。適度に休みを入れて何とかこなしていこう。
仕事兼趣味が終わり、また初まる、次は新規さんからだ。

3/11/2025, 9:23:50 PM

t「星」

いつみても夜空に散りばめられた星々たちは綺麗に輝いてる。
いつ頃からだろうか、疲れた…とこぼして下を向いて歩く事が多くなったのは…。立派な足音を響かせる靴としわくちゃなスーツ、アスファルトだけが視界をいつも埋めていた。
今日は用事がありいつと違う気持ちで下を気にして歩く。右手には小さな温もりがぎゅっと握られている。よちよちと一生懸命歩く姿に癒やされる。
横を歩く子どもを眺めていると不意に子どもが空を見上げていた。つられるように自分も空を見上げる。いつぶりだろう星で埋め尽くされた夜空を見たのは。まだ話せない子どもの瞳には、夜空に浮かぶ星とは違う、無垢で純真な星々が散りばめられていた。

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