コハク

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9/29/2023, 10:59:03 AM

静寂に包まれた部屋

「わかってる、言われなくても大丈夫、そしたらもう切るよ、はいはい」

ガチャと鍵を回し見慣れた暗い部屋呑み込まれる。
不便なもので灯りを着けるには暗闇の奥深くまで足を伸ばさないとならない。
先程まで電話をしていたせいか、暗闇の部屋が妙に静かに感じる。

朝起きて、支度をして、家を出れば、辺りには色んな音が耳をくすぐる。昼間は下らない雑談などして賑やかに過ごす。夜、帰路につけば虫の音や様々な機械音が帰り道のBGMになる。
そして、家に帰ると誰も居るはずのない静寂に包まれた部屋で一人朝を待つ。

たまに思う、いつもより静かな部屋で、時間がゆっくり感じる。きっとそれは自分が寂しいと感じているからなのかもしれない。そんな事を思いながら灯りを着け、スマホをまた取り出した。

8/21/2023, 10:41:28 AM

鳥のように

私は小さいから
象のように大きくて優しく
私は幼いから
鳥のようにかしこく強かに
私はまだ誰かだから
鐘のような象徴になり
私はまだふにふにだから
たくさんの経験でつよく
私は自信がないから
私の大好きなあなたのように
いつも笑顔で気ままな
そんな人になりたい

8/11/2023, 7:52:50 PM

麦わら帽子
夏と言ったらこの帽子、麦わら帽子。
でも僕にとっての麦わら帽子は一つの逃げ道でもあった。
僕の麦わら帽子は少しつばが広くて、下に引っ張れば顔がすっぽり隠れる大きさの帽子だった。
春夏秋冬、泣きたくなった時はよくその麦わら帽子を深く被って部屋の隅で泣いていた。誰かに泣き顔を見られのが嫌な僕の小さな抵抗だった。
だから僕の中での麦わら帽子は夏の帽子というよりは、幼くて泣き虫だった僕を守ってくれた小さな秘密基地でもあった。つばをたくさん引っ張った僕の麦わら帽子は左右が少しくたびれていて、それだけ昔の僕は弱かった。
今は背中を預けれる人が傍にいる、胸を貸して貰って心の叫びを受け止めてくれる人がいる。幼かった頃のように、小さな僕のプライドのために、部屋の隅で声を殺して鼻水を流さなくてもいい。僕の秘密基地は、少し広めのつばの下から、
僕と君の大切な家になった。
少しつばの広い麦わら帽子は今でもお気に入りで、それを被ると君は似合ってると笑ってくれる。今の僕の麦わら帽子は、炎天下から僕を笑顔を守ってくれる立派な秘密基地だったりする。

8/6/2023, 9:02:16 AM

鐘の音

どこかの国の風習で年の終わりに鐘を鳴らすらしい。
この地方にそんな風習はなく、雪山の頂上から見える一つの街が毎年決まって年の終わりにライトアップをしているのをよく見る。その時だけは雪山にまで色が届き、夜なのに彩られた雪を見て年の終わりを実感しては寒い中でも少し笑える気がしてた。
鐘の音…昔はよく聞いていた。スタートの合図にどこまでも響く、高くて透明な音は最適だった。あの瞬間、僕たちは平等な競技者であり切磋琢磨する仲間でもあった。目に入る銀色の世界には派手なくらいの服を着て、どこまでも飛んでどこまでも滑っていけると夢を見ていた。
...故障した足が動かなくなる前に戻ろう。雪山がどれだけ危険な場所かは身を持って知っている。
今は鐘の音なんて聞きたくない。どこかの国の風習が無くて良かったなんて失礼な事を考えていた。

8/5/2023, 9:51:28 AM

つまらないことでも

君と居ればつまらないことでも楽しい。
よくある少女漫画の常套句の言葉。
恋人同士であればつまらない時間がない、それはきっととても幸せな事なんだろう。
けど、僕らには、正確には僕にはそんなつまらない時間はない!常に忙しい…。要領が悪いのもあるけど、すぐに考え込んでしまう癖もあっていつの間にか時間がなくなっている…毎日慌てて過ごしている。
そんな僕をしりめに僕の恋人は時間に余裕を持って動いてる。僕が思考の世界に入り込んでも、ご飯の当番で準備が出来ていなくても、君はその全てを無かった事にしてこれからの時間に余裕を持たせてくれる。
何度君に謝罪とお礼の頭を下げた事か…君にとっては迷い癖や考え込む、そんなことをしている時の僕といる時間なんてきっとつまらないだろう…。それでも君は、嫌な顔だけで済ませてくれる。それでもと、納得のいかない顔の僕を見て君はため息を着いて言った。

「どうせつまらないことでも考えてんだろう、でもそれはてめぇにとって有意義な時間で、のちに俺にも関わってくる事でもある。どんなくだらねぇことでも悩んだり、敷き詰めたり出来んのがてめぇの短所で長所だ」

まさかそんな事を考えてるなんて思いもしなかった。

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