鐘の音
どこかの国の風習で年の終わりに鐘を鳴らすらしい。
この地方にそんな風習はなく、雪山の頂上から見える一つの街が毎年決まって年の終わりにライトアップをしているのをよく見る。その時だけは雪山にまで色が届き、夜なのに彩られた雪を見て年の終わりを実感しては寒い中でも少し笑える気がしてた。
鐘の音…昔はよく聞いていた。スタートの合図にどこまでも響く、高くて透明な音は最適だった。あの瞬間、僕たちは平等な競技者であり切磋琢磨する仲間でもあった。目に入る銀色の世界には派手なくらいの服を着て、どこまでも飛んでどこまでも滑っていけると夢を見ていた。
...故障した足が動かなくなる前に戻ろう。雪山がどれだけ危険な場所かは身を持って知っている。
今は鐘の音なんて聞きたくない。どこかの国の風習が無くて良かったなんて失礼な事を考えていた。
8/6/2023, 9:02:16 AM