伝えたいけれど、伝えたくない。
会いたいけれど、会いたくない。
知ってほしいけれど、知られたくない。
そんな、相反する思いを抱えて、どれだけ経っただろう?
それは未だに変わらなくて。けれど、想い自体意は強くなっていて。
全く、面倒この上ない。
”届かぬ想い”に身を焦がす、なんて、今時恋愛話にもならないじゃないか。
届かぬ想い
もし、許されるのなら、ーーだけは、掬い上げてください。
ーーは、ボクのワガママに付き合ってくれただけだから。
だから、ーーは悪くない。
どうか、どうか、彼だけは、救ってください。
彼は、俺のシナリオに沿っていただけで。
彼の罪は、咎は、本当は、俺が背負うはずのもので。
ボクが堕ちるのは構わない。それだけのことをしたんだもの、当然だよね。
でも、ーーは、違う。それなのに、ボクと同じになるなんて、おかしいでしょ?
彼は、こんなことをするような人じゃない。
それが本当に彼の全てかと言えば、そんなことはない。
ボクが、手を離したら、ーーは助けてもらえるのかなぁ?
だったら、ボクから手を離すよ。むしろ、勝手に転がり堕ちそうだけどね。
だとしても、背負わせてしまったことに変わりはない。
本来なら、俺が背負うべきだったのに。
ねぇ。カミサマ。
神様。お願いです。
”神様へ”と願うこと自体が、意味のないことだとしても。
縋るモノさえないことにさえ気づかない愚かさを知りながら。
それでも願わずにはいられない自分が、何よりも惨めで情けなくて滑稽でしかなかった。
神様へ
どこまでも、どこまでも。
ただ一色に染められたセカイ。
上も下もないような、右も左も解らないような。
そんなセカイが、突然現れたとしたら、きっと恐ろしくて仕方ないのかもしれない。
けれど、そんなセカイは意外にも身近で。
場合によっては、幾度も目にしているのかもしれない。
当たり前すぎて、恐怖も感じない。
ただただ、美しいと、素晴らしいと称賛して。
心が澄んでいくようだ、なんて、言われてるセカイ。
”快晴”
そのセカイに堕ちた時、きっと真逆の思いを抱くのかもしれない。
快晴
いつか、届くんじゃないかって、思ってた。
伸ばした手は相変わらず空を掴むばかりで、何も残ってなかったけれど。
届かないなりに、掴めるような気がするだけでも良かった。
届かないことを嘆いたこともある。
伸ばした手を下ろしたこともある。
空を掴むことを諦めたこともある。
それでも、願って、伸ばして、抗って。
そうしてやっと、見つけたんだ。
ずっと憧れていた”遠くの空へ”、あと少し。
遠くの空へ
最初は、憧れだった。憧れ、だったと思う。
とにかくその背中は大きくて、どれだけ頑張っても、追い付ける気なんてしなくて。
先駆者は間違いなく彼らで。その後ろに続いたのは、自分じゃなくて。
追い付けない背中に、並び立てない隣に、追い付き並ぼうとする彼らが羨ましくて。
いつだって、劣等感を抱いていたと思う。
ただ、負けたくなかった。負ける気だって、しなかった。
そんな気持ちばかりが膨らんで、やっぱり子供だな、なんて落ち込んで。
でも、諦めたくなかった。諦められるほど、浅い気持ちなんかじゃなかった。
ただ、我武者羅にできることを突き詰めて。時々、冷静に振り返って修正して。
そうやって過ごしていたある日、チャンスは突然訪れた。
嬉しくて、嬉しくて、無我夢中で頑張って。
少しでも、その背中に近づきたかったから。
まるで夢の様な時間。お伽噺みたいな展開に、じんわりと幸せを噛み締めていた。
それだけで、十分幸せで。こんな幸運は二度とないって、思っていた。
ーーーけど、それは自分だけだったらしい。
「おーい、そろそろ始めるぞ!」
「はーい!」
最初は、憧れだった。次は、劣等感。
そして今はーーー。
こうして並んでくれていることが、”言葉にできない”くらいに幸せだ。
言葉にできない