最初は、憧れだった。憧れ、だったと思う。
とにかくその背中は大きくて、どれだけ頑張っても、追い付ける気なんてしなくて。
先駆者は間違いなく彼らで。その後ろに続いたのは、自分じゃなくて。
追い付けない背中に、並び立てない隣に、追い付き並ぼうとする彼らが羨ましくて。
いつだって、劣等感を抱いていたと思う。
ただ、負けたくなかった。負ける気だって、しなかった。
そんな気持ちばかりが膨らんで、やっぱり子供だな、なんて落ち込んで。
でも、諦めたくなかった。諦められるほど、浅い気持ちなんかじゃなかった。
ただ、我武者羅にできることを突き詰めて。時々、冷静に振り返って修正して。
そうやって過ごしていたある日、チャンスは突然訪れた。
嬉しくて、嬉しくて、無我夢中で頑張って。
少しでも、その背中に近づきたかったから。
まるで夢の様な時間。お伽噺みたいな展開に、じんわりと幸せを噛み締めていた。
それだけで、十分幸せで。こんな幸運は二度とないって、思っていた。
ーーーけど、それは自分だけだったらしい。
「おーい、そろそろ始めるぞ!」
「はーい!」
最初は、憧れだった。次は、劣等感。
そして今はーーー。
こうして並んでくれていることが、”言葉にできない”くらいに幸せだ。
言葉にできない
4/11/2023, 2:45:02 PM