惨めジメジメシニフィエ

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6/1/2025, 7:14:34 PM

いつもは朝に目が覚めるのだが、今日は昼まで寝てしまっていたようだ。
隣で一緒に寝ていたスマホを手に取り時間を確認する。
14:50分。もうすぐ15時を迎えるようだ。
別に朝を睡眠に献上したからといって問題は無いのだが気持ちが妙に焦ってしまう。
太陽は変わらずにこやかに光を発しているというのにそれを遮る固まった水蒸気の群れ。
私のルーティンを壊さないでくれ。
天を見上げて言い放つ。見えるのは空ではなく天井。
……我に返り恥ずかしくなってしまった。
いつもなら起きたらすぐにシャワーを浴びてご飯を食べるのだが、なんだかだるくてぼーっとスマホを触る。
外は昼だというのに薄暗くざあ、ざあと音が鳴っている。
ぐ〜。
家の中では私がだらしない体勢でお腹を鳴らしていた。
眼を擦りながら身体を起こし、なにがあったか思い出しながら冷蔵庫まで行く。外はさっきより音が落ち着いていた。
キッチンに着き冷蔵庫を開ける。マヨネーズやケチャップといった調味料と炭酸割り用の炭酸水と麦茶だけで食べれそうなものなど無かった。そういえば昨日は酒のつまみしか買ってこなかったのだった。
こんな天気の悪い日に出かけないといけないのかと陰鬱になりながら何を食べるか考える。キッチンのコンロには空き缶が4個置かれていた。後で捨てないとな。
外の音を思い出す。あの音を聞くといつもチヂミが食べたくなるんだよな。……ああもうチヂミの口になってしまった。チヂミを美味しそうに食べている姿を想像してまたお腹を鳴らした。
居室に戻ると電気をつけていないのに明るかった。
鳥の鳴き声が微かに聞こえる。ベランダの窓を開けて空を覗いた。そこには私が覗くのと同じように太陽が雲の隙間から姿を出していた。
いつの間にか雨が上がっていた。
今更晴れても遅いんだよなと悪態を突きながら私は顔を崩した。


9/12/2024, 5:43:28 PM

―本気の恋―
福沢諭吉の書かれたお札。1万円をフクザワと換言しても差し支えないほど万札と福沢諭吉は深く結びついている。お金を嫌いな人はいないだろう。無論私もそうだ。今日は給料日で、その日は銀行から何万か金を下ろし財布に入れるようにしている。それとは別に仕事を頑張ったご褒美として鍵のついた箱の中に1万円を保管している。今日は休みでもあるし時間がある。自分に褒美を与えてやろう。
もう使っていない目覚まし時計の電池ボックスを開けて中にある鍵を取り、クローゼットから箱を取り出す。鍵を挿して回し、蓋を開ける。この時点で私の顔は紅潮し満腔が熱くなっている。いつも"使っている"1万円札を持ってベッドに体を落とす。片手で1万円札を顔に持っていき、もうひとつの手で股を弄る。既に濡れている下着の上から擦って刺激を与える。福沢諭吉は私を見つめている。皆から愛されている人気者の象徴であり持つ者を幸福にする彼は今、私だけを愛してくれる。野口や樋口では達することの無い官能の極致。手はいつの間にか下着の中に侵入し、指が愛液で満たされた穴の気持ちいいところに触れる。腰が跳ねて声が漏れる。指の激しさに呼応して呼吸も荒くなっていく。ひとり気持ちよくなっている私におしおきするように福沢諭吉は唇を奪う。紙の味がする。好き、好き、好き。

唾液でベタベタになった1万円札を慎重にテッシュで拭いて机に置いてからしばらく余韻に浸る。 2024年7月3日から新札が発行され、福沢諭吉に代わり渋沢栄一が1万円を代表する。財布の中にいるのは渋沢で福沢ではない。今乾かしている彼が最後の福沢になるかもしれないと思うと、渋沢が憎くなってきた。大丈夫だよ安心して、渋沢じゃなくてあなたが本当の1万円だと思うよ。大事にするからね。だからいっぱい私を愛してね。
私は福沢諭吉といっしょに眠りについた。

9/9/2024, 7:19:50 PM

―世界に一つだけ―
人の話し声より蛙や蝉の鳴き声が飛び交う町。世界に2つしかないコンビニの内の1つを目印に、横臥しているポストの隣の狭い路地を進んで路地をぬけた先。やけに新築めいた二階建ての家がある。人の住む家というより店の様相を呈しており、入口の隣に看板が置かれている。看板には「古本買取しています」と書かれており一般住宅ではないことが分かる。表札を見た限りここは、誰が為に金は成る本屋という店らしい。どうしようか、入ってみようか。店のようではあるがそこで人が暮らしているという痕跡が所々に見られるので、どうも躊躇ってしまう。だがもし本屋なのだとすれば、自分の持ち物として、こちらが手放さない限り永遠に自分の物としての本を手に入れる事が出来る。妙な汗をかく。根拠は無いがここで選択を誤れば人生が終わる予感がする。呼吸が荒くなり少し目眩がする。行くしかない、勇気を振り絞って。額の汗が鼻の先まで垂れていく。よく考えてみろ、表札に店名だぞ、看板もあるし明らかに本屋ではないか。両の手が震え日傘を落としそうになる。
すーーー、はーーー。
深呼吸をして心を落ち着けた。もう迷うことは無い。今日自分は己を改革するのだ。
傘を閉じて折り畳みカバンに入れた。目を閉じてもう一度深呼吸する。
私は店に背を向けて、思い切りダッシュした。

7/16/2024, 9:06:59 PM

―空を見上げて心に浮かんだこと―
朝、陽炎が揺らぎ、肌がひりつき不意に倒れそうになる程の暑さを感じながら、冷涼な青で一帯を包んでいる空を見上げると、あちーけど頑張るかって気分になる。
昼、緞帳が下げられ大粒が人、人、人を濡らし、ざあざあと蝉の音の騒々しさを感じさせる雨音を聞きながら水溜まりを眺めてると、頑張っても無意味なんかなって思う。
昼を過ぎて、まばらに映る星を見ながら、さっさと星になりてーな、星になろーかなと口に出しちまう。
美しかろうが醜かろうが優れてようが劣ってようが果ては同じ。普通になれない落伍者だって星になれる。頭がいかれちまっても、どんだけ腐っても。

7/12/2024, 3:20:50 PM

変わろう、今日から変わろうとしてきた。
だが2、3日経てば決意も覚悟も忘れ慣れ親しんだ自分に元通り。理想から程遠い自己像を嫌悪しながらもそこから動かない。そんな人間として生きてきたのだから得意な事など何一つとして無い。
これまでずっとそうだったし、これからもずっとそうなのだろう。

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