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7/22/2024, 1:14:40 PM

もしもタイムマシーンがあったなら

 もしもタイムマシーンがあったなら、もう一度あの時に戻りたい…。貴方が…貴方が死ぬ間際に。戻らせて。
あの時貴方は幸せそうに、この世に悔いを残さず死んでった。でも、それは私にとっては最悪だった。
静かな病室、消毒の独特な香り、窓際に置いてある一輪の花。落ち着いた雰囲気が貴方の最期にとても似合っていた。近頃の貴方は元気がなかったもの。こんな日が早く来るなんて心の何処かではわかっていた。私達二人は幼い頃からの幼馴染カップルだった。お互いがお互いに愛し合っている…この時まではそう思っていた。私は、愛が重たい。親が私を産んでから早く死んでしまったから、両親からの愛を知らない。だから、自分は他人を愛すことでしか満たされなかった。だけど、貴方はこんな自分を愛してくれて…自分のワガママも聞いてくれた。
貴方の手をとり、撫でながら私は花をみて「綺麗。」と言ったら、貴方は「…嫌い。」。そう言うから、なんで?と聞き返そうとあなたの顔に視線を移すと、貴方が見ていたのは花ではなくて、"自分"だった。驚いて、「花のどこが嫌いなの?」そう聞けば、「お前だよ…お前のことが大嫌いだったんだよ。なんで彼女づらしてんだよ。俺の最期になんでお前がいるんだよ。お前はずっと勘違いしてんだよ。」と病気のせいでなのか、震えながら自分に言ってきた。自分は訳が分からなくて混乱してしまった。そしたら彼は、自分の手を振りほどき倒れた。
ピコーンピコーンと病室でアラームが鳴る。お医者さん方が来る。自分が病室から出される前に覚えていたのは、あなたの部屋にある花たちだった。
自分の近くを通る看護師が一人、「あの花たちはみんなご自分で選んでましたよ。綺麗ですね。」と自分に言ってきた。そうだったんだと思い好奇心で、花言葉を検索してみた。貴方の部屋にあったのは、黒のバラ、スノードロップ、キンギョソウ、ロベリア、黄色いカーネーション。それぞれを調べてみると、「憎しみ」、「あなたの死を望みます」、「でしゃばり」、「悪意」、「軽蔑」。だった。貴方は、自分が来ていることを知っていたんだ。今までは、狸寝入りしていただけだったんだ。きっと、喋りたくないからこうやって花言葉を通して伝えてたんだ。言ってくれればよかったのに、今までこんなに貴方に対してしてきたのに…私は涙が溢れた。



もしもタイムマシーンがあったなら、貴方が死ぬ時に戻って聞きたい。なんで、私を勘違いさせたままにしておいたの?私に、話しかけてくれた看護師は浮気あいてじゃないの?そうでしょ?あの花が飾られ始めたのは1週間前でしょ?その時のあなたは元気だったわよね?ご自分で選んでましたよ。って、一緒に行かなきゃわかんないじゃない…
私は過去に戻って、貴方を殺したい。

7/19/2024, 11:06:40 AM

視線の先には
 
 ポチャン…
「汚い赤…」そう言う彼女は白いワンピースに…
「ねぇ、なんで見てるの?なんで生きてるの?」そう言いながら、僕の目線にあわせてかがみこむ君。ふわりと風が吹けば、優しい柔軟剤の香りと鉄のような臭いがした。僕は、問われても声が出ない。というか、出せない。出せなかった。
誰も居ない僕の家。いや、居ない訳じゃなくて魂の抜けた抜け殻が2、3個残ってるだけ。
…「ねぇ、なぁんで?生きてるの?しぶといね〜。」
そう言いながら、彼女は笑顔で何かを僕に振りかざした。
(そうか、そうだったのか。僕が声を出せないのは、首を切られたから。声帯を切られちゃったのか…ハハッ。目の前が真っ暗だ。もしかして、目もやられちゃったのかな。)そう心で思っていたら、彼女の小さな笑い声だけが聞こえた。なんて言ってるか解らなかった。どんどん、声が遠くなっていく。僕は、目が見えなくなっても最後だけでも…ねぇ、君の視線の先には何が映ってるの?

…私の方を見る彼。動かなくなったからきっと、死んだんだろう。私は、最後まで私から目を離さなかった彼に好意を抱いた。
「ねぇ、初めてこんなにも綺麗な抜け殻を見たわ。有難う。貴方には感謝しているわ。」そう言い私は、スケッチブックに貴方の血と人物画を描いて持ち帰った。


 私の視線の先には、これまでに無いほどの美しい抜け殻が映っていた。

7/11/2024, 11:38:39 AM

1件のLINE

 ピロン…この音が鳴れば私は赤い傘を持って急いで待ち合わせ場所へ行くの。
私を待ってくれている、そう思うだけで胸がキュンって苦しくなる。だから私は、無意識に小走りになる…
 彼と初めて会ったのは、梅雨入りから始まって3日経った頃だった。
あの日私は、大学で高校生から付き合っていた同い年の彼に振られた。浮気されたのだ。私はずっと、ずっと好きだったのに彼は年下の女の子…と。自分の何がいけなかったのかを考えては泣き、考えては泣き。の繰り返しを空き教室でしていた。私は浮気されたショックから、本当はその日早く家に帰ることが出来たのに、泣いていたために2時間程度遅くなってしまった。
 大学から出て、トボトボ駅に向かっていると
ポツ…ポツ……ポツポツポツ…ザァー−
「えっ?…嘘でしょ…?」
私は急いで、近くのお洒落な喫茶店に雨宿りがてら入った。
カランカランッ
「いらっしゃいま…せ。おひとり様ですか?…」
店員が途切れ途切れに私に尋ねるのは、きっと私の顔が涙の跡と急な雨でグチャグチャに見えるからだろう。なんせ、彼と会うときはいつもバッチリメイクだったから…
「はい…。」
そう答えれば、店員は窓際の二人席に私を案内した。
「ご注文がお決まりましたら、そちらのベルを鳴らしてください。」
そう説明してからすぐに姿を消した。私は、わざとみんなが目の前を通る大きい窓がある席に案内したのではないか…そう考えたら
「はぁ…」とため息が出た。
別に頼むものもないしなぁ…なんて考えていると、他のお客さんが入店して来た。私はハンカチで顔を隠しながら、メニューを見ていたら。
店員が「相席よろしいでしょうか?」と聞いてきたので、そんなに客はいなかったと思うけどなとハンカチから少し顔を出しあたりを見回すと、ほとんど満席だった。そんなにも時間がたっていたのか…と思い、
「あと少ししたら出るので、どうぞ。」
と、承諾した。目の前に座ったのは優しそうな雰囲気で眼鏡をかけて、いかにも頭が良さそうな本を持っていた男性だった。かっこいいなぁ…なんて思っていたら男性が、
「なんで、ハンカチで顔を隠しているんですか?」と聞いてきた。私は、顔がグチャグチャなので…と答えると、男性は「う〜ん…」と考えてから本を置いて、私の目の前にあったメニュー表を窓側に立てて、頬杖をついてグイッと私の方に近付き
「女の子はみんな綺麗なんだから、勿体無いよ?」
と言って、私のハンカチを優しく取ってきた。顔が露わになると、
「大丈夫だよ。僕しか見てないから」と言い、優しく私に微笑みかけた。つられて私も微笑むと彼はその後私をたくさん褒めてくれたり、私が笑顔になるようにしてくれた。
雨が小ぶりになったときに私は帰る準備をしていたら、彼が「連絡先の交換をしてほしい。」と言ってきたので、快く承諾すると「じゃあ、お礼に…3つ年上の先輩からのお礼。」と言い私に赤い傘を貸してくれた。
 店を出ると、雨は止んでいたが"3つ"年上の先輩が貸してくれた傘を使って帰宅した。
「年上かぁ…」そんな事を考えているときには、私の心は青空のように心地よかった。

 …あの日初めて逢って、たまたま同じ席になった3つ年上の彼。大学も違うし、頭の良さも違う。だけど、あのとき私は彼といて楽しかった。だから、彼からのLINEが来たら、赤い傘を持ってあの喫茶店に向かうの。


 …僕があのとき彼女に話しかけたのは、”一目惚れ"の他ならなかった。だからいつもはあんまり人に話しかけないけど、頑張って話しかけて連絡先も聞いた。彼女が店を出るとき僕は思わず
「可愛いぃ」と声に出た。恥ずかしくて、顔が赤くなるのを感じて、しゃがみこんだ。
僕がメールをする時には、余裕がある年上に見えるように難しそうな本を読んでるふりをして君を待ってる。

6/12/2024, 11:53:59 AM

好き嫌い

 「…だいっ嫌い。」と私はテレビを観て呟いた。なんなら不思議と涙も出た。
 私は彼の事が好きなのに、彼は私の事を1ミリも知らない。それすら悔しい。彼と一度も会ったことはないけど、私の頭の中では彼は私の"彼氏"。世界で1番大好きな人なのに…。
好きで好きでたまらない。そんな彼が出演しているテレビは絶対に録画するし、リアルタイムで観るのが鉄則だ。
ある日彼が主演のドラマを観ていたら、可愛い女優が彼とキスをした。その時私は胸がギュゥって苦しくなった。分かってる。あれだけ、テレビで
「僕の彼女は、テレビの前の皆さんです。」とか私に期待させる言葉ばかりたくさん言ってくれている。嬉しくない訳がない。なのに…期待を裏切られた気分だ。
彼は私のものでもないし、私は彼のものでもない。分かってる。私と彼との間には何もない。
"一般人と芸能人の関係"
だけど、あなたがテレビで発言するたび私の胸は高鳴るし、もしかしたらアナタの彼女に…なんて欲が出てしまう。
あなたの事を嫌いになれない。どんなドラマに主演しようとどんなに可愛い女優とキスをしても嫌いにはなれない。だけど、毎回裏切られたような気分になって、
「…だいっ嫌い。」
そう、呟いちゃう。

6/8/2024, 1:53:43 PM

岐路

 俺は今、人生を大きく左右する分かれ道にいる。
右を選べば少し苦しいが、生きる事ができる。
左を選べばもう罪を償うしか無いだろう。
どうせ俺は苦しい、どっちを選んでも…
そんな2つを目の前に俺は選択を急かした。
俺は選んだ道を進んだ。
グサッ…「ガハッ…」
俺の手には血だらけのナイフ、そして俺の手に倒れる相手…

俺は、この工場の中で人を二人殺した。俺の妻とその不倫相手の男を。この工場で全てを終わらせて帰宅するつもりでいた。なのに、俺が殺ってる姿を後輩に見られた。生かすか殺すか少し迷った。だって後輩は…
"俺の妹"だったから。
怯えた目で足は震え、まるで生まれたばかりの子鹿のように俺の目の前に立っていた。
血が繋がっている、だから迷った。
俺の中では、妹の目撃情報と自分の足で警察へ向う。もしくは妹を殺し、その妹を殺した姿をそこに座ってみているやつが他の人へ情報を流すならみんな殺す。そういう選択だった。俺は後を選んだ。だから俺は、妹に隠れて着いてきた虫達を殺す。俺はもう、生きる事ができないだろう。だって、こんなにも人を殺してしまったら…
俺は選択を誤ったかもしれない。二人だけにしとけば良かった。こんなにも沢山殺るなんて思ってもみなかった。
「これじゃあもう、こいつらの罪を償わないとだね」
と俺は笑いながら、俺を見るものは全て消し去っていった。

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