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9/18/2024, 11:05:49 AM

夜景
 
 「あなたと観たあの夜景は素晴らしく綺麗だった。」

美しくて…儚くて…でも、目の前の夜景よりも隣りにいる…側にいるあなたがとても綺麗で…目が離せなかった。車から降りれば、ひんやりと冬の冷たい風がそよそよと吹いた。助手席から降りたあなたは僕の近くに来て、
「…綺麗だね。」
そう呟いた。
綺麗な夜景の明かりがあなたを映す。
胸が熱くて、苦しくて…でも、最高に嬉しくて…
僕は赤くなった顔を誤魔化すかのようにマフラーで顔を隠しながら、
「あなたも…綺麗ですよ。」
そう、言った。あなたとなるべく目を合わせないように。


  この胸の高鳴りにあなたが気づきませんように。



「僕のほうばっか、ドキドキさせられっぱなしで困ってます。」聞こえないようにそっと静かに呟いた。

9/10/2024, 12:45:29 PM

喪失感 

 「貴方を失ってから、この心の喪失感は消えません。
毎日僕に向けてくれていたあの笑顔は、昨日が最後でしたね。急な出来事で戸惑ったし混乱したよね。それは僕もだよ。だって、昨日プロポーズしたばっかなのに…なのにこんな感じになっちゃって…神様はどうして君を連れて行ったんだろう。僕が何かしたのかな?…。こんなの酷いよね。通り魔に刺されて…この世から居なくなるなんて。僕を置いてかないでよ…。二人で素敵な家庭を築こうって話したばっかだ…よ?。
貴方の最後に僕がいなくてごめん。間に合わなかった。なのに貴方は涙ぐみながら微笑みながら、"貴方からのプロポーズ…嬉しかった。…"そう最後に言ってくれたんだよね。貴方のお母さんからそう聞きました。僕も貴方にプロポーズして、こんな僕を受け入れてくれて本当に嬉しかった。だから言わせてください。

"黄泉の国でも、来世でも、ずっと僕と一緒に居てくれますか?"
                        」




僕は、彼女の仏壇に泣きながらそう言った。返ってこない返事を待つかのように…。


 

9/8/2024, 12:40:41 PM

胸の鼓動 

 いつも相手にしてくれない貴方をずっと想い続けているのは、
「好きだから。」。
でも、私は奥手だからこの一言が口に出せない。だから、ずっと想い続けることしかできない。貴方を目で追うので精一杯だ。廊下ですれ違うときも私は貴方を見てしまう。
"目が合った。"
そんな日は、心がキュンって弾むくらい嬉しいのに…、貴方はすぐ目を逸らすでしょ?その瞬間に私は"やっぱり、自分なんて…"って考えて落ち込んじゃう。だけどお願い、卒業するまではこの高く弾むような胸の鼓動を楽しみにさせてくれませんか?…。

8/5/2024, 11:29:19 AM

鐘の音
 
 除夜の鐘。それは私にとって最も注意すべきものだ。私が"この世"に居られるのはあと僅か。この短期間で、捜さねば。"あの小娘"を…
とうとうこの時を迎えてしまった。正月で賑わう人々の中を通り、"あの小娘"を捜す。絶対に近くにいる…私はそう確信していた。予想通り居た。私は急ぎ小娘の"背中"に飛び乗った。相手は勿論、無反応。私は小娘へ怨み、小娘が死ぬまで呪ってやろう。そう思っていた、そう思っていたのに、彼女の口から思わぬ言葉が発せられた。
「〇〇天国で元気にしてるかな?」そう言ったのだ。
「なんでぇ?」と隣の奴。
「いやぁ、だって可哀想だもの。あの娘の彼氏ストーカーだったのよ、"彼女の"。」
「どういうこと?」
「う〜ん、〇〇がストーカー被害にあってるときにタイミングよくくる男性がいてね、その人〇〇にとても優しくて一緒に夜帰ってくれたり、〇〇が一人にならないようにしてくれたりして優しい人…そう最初は思ってた。それからも〇〇のストーカー被害はなくならなくて、なんならエスカレートしていったの。そのときにはもう二人は付き合ってたから、あたしも流石に警察に…と思ってある日、被害届を勝手に提出しておいたの。その日はたまたま帰りが遅くなって夜道を一人で歩いてたら、少し先に〇〇の彼氏がいて声をかけようと思ったら、彼氏が〇〇をストーカーしてたの。だから、〇〇に別れたら?って言ったら怒っちゃって…そっから連絡がつかなくなってテレビで事件を知ったの。」
「あぁ〜!"ストーカー被害に遭っていた女性が殺害。犯人は〇〇さんの恋人でもあり〇〇さんのストーカーでもあった人物"で有名になった事件か!好きすぎて彼氏が殺っちゃったんですよね?確か!」
「そうそう。あの時怒らせずに〇〇に言えばよかった。本当の事を…」
「本当の事?ってなんですかぁ?」
「実はあの時、早く別れさせたくて"〇〇の彼氏私に下心あるみたいだから別れたら?私といるときのほうが楽しそうだし"って言ってしまったの。」…
私は思わず涙が溢れてきた。私の事を思っててくれたんだ。私の声は、思いは届かないかもしれないだけど口にしてあなたに言いたい、
「じゃあ、先輩。除夜の鐘鳴らして思いを晴らしましょっ!〇〇さんも先輩妬んで悪霊になんてなられたら困りますから、お祓いの意味も込めて!じゃあ、引っ張って!」
鐘の音が鳴ってしまえば二度と会えないし言えない。大きく息を吸って…



「ありが…」ドーン…ドーン…ドーン…
私の声は思いは最後まで、彼女に伝わる事がなかった。

7/24/2024, 12:15:28 PM

友情

 「友情って何?」
そう警察に聞かれても、答えれなかった。
それは俺が、友情という甘い言葉に浸っていただけだった。いや、勘違いをしていただけなのかもしれない。
 俺は昔からずっと、友なんていなかった。だけど大学生になってから、俺に頻繁に話しかけて来る奴がいた。そいつは、なんか変な壺を紹介してきたり、変なビジネスに勧誘してきたり、とにかく変な奴だった。だけど、話しかけてくれることが嬉しくてその変な誘いにのっていた。だっていっつも誘いの最後に「俺らは友達だろ?俺とお前の間には友情があんだよ。友情ってのが。」と。そんなこと言われたら、嬉しくて誘いにのってしまう。たけどそいつの誘いにのっていると気づかない間にヒートアップしていた。そう、気づかない間に。俺はそいつに溺れていたから。ある日、「今日の夜空いてる?空いてたらさ、〇〇工場の倉庫に行こうぜ!面白いの用意してっから。な?俺らは友達だろ?俺とお前の間には友情があんだよ。友情ってのが。」俺はその誘いにのり、夜〇〇工場の倉庫に行った。真っ暗で何もわからなかった。だけど、そいつが懐中電灯で合図してくれた。その光を頼りに、俺は急いだ。俺とそいつの距離が近くなると、懐中電灯を消し俺に何かを持たせてきた。俺が「なんだこれ?」そう聞けば、「おもちゃのナイフだよ。今日は、暗闇の中でサバゲーな。俺があちこちに仕掛けを置いといたからそれに攻撃っ!すればいいんだよ。わかったか?」俺が「あぁ」と言えば「じゃあ、5秒後にスタートな!」そいつの声が遠のいていった。5秒数えてゲームが始まれば俺はゆっくり歩き、コツッと何が足に当たったらナイフをまっすぐに出し、グサッと音がなるまでナイフを振った。感触はなんとも言えない感じで、リアルなサバゲーだなぁそう思った。出口に近くなればなるほど的の数も増え、たくさんナイフを使った。ゲームの終わりが来て出口に出れば、そいつが待っていて
「やるじゃん友。」そう言ってくれると思った。だけど現実は違った。出口から出たら目の前にはパトカーと警察が何人もいた。俺が唖然としていると、警察が「さっき、通報があってね。〇〇工場の倉庫で変な奴がナイフを振り回して、たくさんの女性を殺してるってね。」そう言いながら、俺の手に手錠をかけ署へと連れて行かれた。
署では、今までのことを全部話した。すると警察は俺に
「貴方の…その、友情ってなんなの?だって、結果的に貴方はそのそいつ?…に騙されて連続殺人鬼になっちゃってるわけだから。」
「"友情ってなんなの?"」この質問に俺は答えられなかった。なんでだろう。今まで俺に"友"という存在がいなかったせいで、友情が何なのか。何が正解なのかわからなかった。どこまでが、友情ですむ話なのか。俺はどんどんわかんなくなっていった。ずっとグルグルと頭の中で、「友情ってなんなの?…友情ってなんなの?…」と回っていた。俺は頭が真っ白になった。だけど、頑張って答えた。あんまり、なんて言ったのか覚えてない。だけど、意識が遠のく前、目の前にいた警察は目を大きく開け、顔がグチャグチャに引き攣っていた。後日、あのときなんて言っていたか、警察の方に聞くと
「友情っていうのは…相手と仲良くなって、…殺すこと。…相手を笑顔で苦しまないように一気に優しく殺すことだぁぁ。」って言っていたと。
あぁ、そっか。そう思えば、俺の顔は笑顔で溢れて止まらなかった。

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