大空
目を覚ませば、風が心地よく吹く。
広いこの世界から私は、下の世界を覗く。
忙しくしている下の世界は、騒がしい。
だけど、私はそんな世界を愛している…
だって、誰かが私のいる世界を覗いて真っ直ぐな目を取り戻して、前を向くから。
私は、きっと下の世界の人には見えない。
だけど、誰かが私のいる世界を覗いたなら私は笑顔で手を振るの。
真っ直ぐな目を取り戻してもらうために…
ほら、今日も誰かがこっちを見てる。不安な顔をしないで?。
気づかないかもしれないけど私はこの広い世界から、応援してるよ…
きっと明日も
"きっと明日も綺麗な夜空が見れるよ"
そんなふうに優しく言わないでよ…。
せっかく心に決めた事が、音をたてて崩れてくじゃない…。毎日の虐めに耐えて耐えて今日まで踏ん張ってきたのに。今日この世界の中で一番美しい夜空を最後に見て私は逝こうと思ってた。そう思っていたのに…。
今日、初めて会った貴方のせいで逝きたくないな…もうちょっと、この残酷な世界で美しい夜空を見ながら生きてもいいかな。そう思ってしまった…。
ここは小さい山の奥の頂上。街灯もない場所。だから、星の光が綺麗に見える。
今、残酷な世界に残された私達は世界で一番綺麗な夜空に夢中です。横を向けば、白い息を吐きながら目を輝かせて星を見る貴方に私は恋をしてしまったみたいです。
"あっ…あの、明日も一緒に夜空見てもいいですか?"
そう聞けば、
"ふふっ…僕で良ければ。"
その瞬間に私の胸が高鳴った。やっぱり、もう少しだけこの残酷で美しい世界で生きよう。
別れ際に
「ねぇ…。」
君との帰り道、別れ際にそう言われた。びっくりした。
いつもは、犬みたいに懐いて私の周りをキャンキャン吠えるように明るくてうざったるい君なのに…今日は違った。私が何を話しても君はずっと上の空だった。今まで冷たくあしらい過ぎた結果、飽きられてしまった…好きな人でも出来たんだろうそう思っていた。だから、明日からは君と距離を置いてすこし様子を見ようそんなふうに思っていた。気まずい空気が二人を囲う。タイミングよく君と別れる分岐点にいた。
「じゃあ…ばいばい。」
私はそう言い、前を向いて歩き始めた。すると、後ろから誰かに手首を掴まれた。驚いて振り向くと、涙を目に溜めて私の手首を掴む君がいた。君は震えながら、
「ねぇ…。僕ってそんなにも君の瞳に映らない?僕の想いは伝わってる?ずっと僕は、君だけを映してるのに…。僕のこと…どう想ってるの?」
そう言った。その瞬間に私は、胸がすこし苦しくなった。気づいてしまったんだ。いや、気づいていたけれど、気づいていない振りをしていた。君には申し訳ないけど、子犬のような君の性格が好きで冷たい態度を取ってしまっていた。この瞬間までも、可愛くて愛おしく感じてしまった私は
「あなたの事好きよ。なんなら、あなた以上にね…。」と。すると君の耳が異常に赤くなり、私からの思わぬ答えに驚いて固まっていた。
いつも、私は君に意地悪なことをしてしまう。どんな意地悪か分かるでしょ?
"君を困らせる事"が私は好きなの。君が困っているその顔が死ぬほど好きなの。だから、これからもずっと子犬みたいに私だけに懐いてね?
夜景
「あなたと観たあの夜景は素晴らしく綺麗だった。」
美しくて…儚くて…でも、目の前の夜景よりも隣りにいる…側にいるあなたがとても綺麗で…目が離せなかった。車から降りれば、ひんやりと冬の冷たい風がそよそよと吹いた。助手席から降りたあなたは僕の近くに来て、
「…綺麗だね。」
そう呟いた。
綺麗な夜景の明かりがあなたを映す。
胸が熱くて、苦しくて…でも、最高に嬉しくて…
僕は赤くなった顔を誤魔化すかのようにマフラーで顔を隠しながら、
「あなたも…綺麗ですよ。」
そう、言った。あなたとなるべく目を合わせないように。
この胸の高鳴りにあなたが気づきませんように。
「僕のほうばっか、ドキドキさせられっぱなしで困ってます。」聞こえないようにそっと静かに呟いた。
喪失感
「貴方を失ってから、この心の喪失感は消えません。
毎日僕に向けてくれていたあの笑顔は、昨日が最後でしたね。急な出来事で戸惑ったし混乱したよね。それは僕もだよ。だって、昨日プロポーズしたばっかなのに…なのにこんな感じになっちゃって…神様はどうして君を連れて行ったんだろう。僕が何かしたのかな?…。こんなの酷いよね。通り魔に刺されて…この世から居なくなるなんて。僕を置いてかないでよ…。二人で素敵な家庭を築こうって話したばっかだ…よ?。
貴方の最後に僕がいなくてごめん。間に合わなかった。なのに貴方は涙ぐみながら微笑みながら、"貴方からのプロポーズ…嬉しかった。…"そう最後に言ってくれたんだよね。貴方のお母さんからそう聞きました。僕も貴方にプロポーズして、こんな僕を受け入れてくれて本当に嬉しかった。だから言わせてください。
"黄泉の国でも、来世でも、ずっと僕と一緒に居てくれますか?"
」
僕は、彼女の仏壇に泣きながらそう言った。返ってこない返事を待つかのように…。