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視線の先には
 
 ポチャン…
「汚い赤…」そう言う彼女は白いワンピースに…
「ねぇ、なんで見てるの?なんで生きてるの?」そう言いながら、僕の目線にあわせてかがみこむ君。ふわりと風が吹けば、優しい柔軟剤の香りと鉄のような臭いがした。僕は、問われても声が出ない。というか、出せない。出せなかった。
誰も居ない僕の家。いや、居ない訳じゃなくて魂の抜けた抜け殻が2、3個残ってるだけ。
…「ねぇ、なぁんで?生きてるの?しぶといね〜。」
そう言いながら、彼女は笑顔で何かを僕に振りかざした。
(そうか、そうだったのか。僕が声を出せないのは、首を切られたから。声帯を切られちゃったのか…ハハッ。目の前が真っ暗だ。もしかして、目もやられちゃったのかな。)そう心で思っていたら、彼女の小さな笑い声だけが聞こえた。なんて言ってるか解らなかった。どんどん、声が遠くなっていく。僕は、目が見えなくなっても最後だけでも…ねぇ、君の視線の先には何が映ってるの?

…私の方を見る彼。動かなくなったからきっと、死んだんだろう。私は、最後まで私から目を離さなかった彼に好意を抱いた。
「ねぇ、初めてこんなにも綺麗な抜け殻を見たわ。有難う。貴方には感謝しているわ。」そう言い私は、スケッチブックに貴方の血と人物画を描いて持ち帰った。


 私の視線の先には、これまでに無いほどの美しい抜け殻が映っていた。

7/19/2024, 11:06:40 AM