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4/12/2024, 1:49:19 PM

遠くの空へ

 「ねぇねぇ!聞こえてる?私の声!私は、一人でも大丈夫そう!心配しないで!」と遠くの空へ叫んだ。
「ねぇねぇ!なんの本読んでるの?」と、入学してから一番最初に声をかけてくれたのは黒髪がよく似合う活発な性格の女の子だった。声をかけてくれたときは、びっくりして口が動かなかったがそんな時でも彼女は
「ねぇねぇ!大丈夫?そんなにびっくりしなくても!」と可愛い笑い声で笑っていた。
「ご…ごめんなさい。き…緊張しちゃってて。」と私。
「ううん。こちらこそ驚かせてごめんね?ただ、その本の名前を知りたかっただけなの。私も、本が好きだから。」と微笑みながら話してくれた。
「本…好きなんだね?どんな本読むの?」と自然と口が開き自分から質問をしていた。すると彼女は、また元気になり「私はね…」と本の話をしてくれた。私と彼女の好きな本のジャンルが同じで話が合った。本の話をしたあとに彼女から
「ねぇねぇ!友達になってよ!あっ!でも、せっかく友達になるなら…親友になろうよ!!」と。眩しい笑顔と明るい声でそう言ってくれた。
入学してそうそう、私は友達なんていなかった。いや、出来なかったのだ。私のこの、暗い雰囲気が人を近づけさせなかったのかもしれない。私は、このまま3年間ずっと友達がいない高校生活を送らなければならないのか。と未来に嫌気が差していた。彼女が、私と親友になりたい。そう言ってくれて嬉しかった。とても。だから私は
「私で良ければ。」と笑顔で言った。彼女はとても嬉しそうに跳びはねていた。
それから1年、彼女と楽しい高校生活を送った。彼女といすぎて、口癖まで似てきた。そんな私は、彼女と出会って変わった。笑顔が増え、暗い雰囲気も消えた。彼女が私を変えてくれた。もう、1人での生活には戻れない。いや、戻りたくない。そう思っていた。
彼女と出会って2年が経とうとしていた頃、彼女は帰らぬ人となった。そう、母から聞かされた。交通事故だそうだ。私は泣き崩れた。つい昨日まで一緒にいて、楽しく本の話をしていたのに。来週は2人で遊園地に行こうねって。そう約束していたのに。私達の願いは叶わなかった。
彼女が亡くなってから2週間ずっと、家にひきこもっていた。彼女がいない高校生活は楽しくないだろうし、学校に私がいてもいなくても変わらないだろう。誰も心配なんて、しないだろう。そう思っていた。
翌日
先生に1度学校に来なさい。そう叱られてしまったので私は、登校することになった。学校へ着き、廊下を歩いていると、クラスの子が数人すれ違いざまに
「大丈夫?」、「無理しないでね!」、「相談いつでものるからね!」とひと声かけてくれたのだ。昔の自分だったら、絶対に声をかけてくれる人なんていなかっただろう。彼女が私を変えてくれたから今の私が居るんだ。
声をかけて去って行きそうだったクラスの子に私は振り向き、
「ありがとう!」そう一言大きな声で言った。
「全然!あの子の代わりにはなれないかもしれないけれど、似たような存在にはなれるように私達頑張るから、いつでも頼って!」と暖かい言葉を言ってくれた。

「ねぇねぇ!聞こえてる?私の声!私は、一人でも大丈夫そう!心配しないで!」遠くの空へ叫んだ。私の背中を押すように、風がふわっと吹いてきた。あなたなら大丈夫、そう彼女が言っているように私は思えた。



4/11/2024, 1:29:22 PM

言葉にできない

 最近私は、好きな人が出来た。その人はかっこよくて、背も高くて、話し上手であり、聞き上手だった。私の理想のすべてを持っている彼に恋をした…初恋だった。
そのことを彼氏がいる親友に相談すると
「えっ!嘘でしょ?!」と笑いながら言った。
もしかして、私が好きな人はもう相手がいるのか?彼に、いけない噂があるとか?この言葉は、どういう意味なんだろう。なんで笑っているんだろう?そんなことを考えていると親友が口を開いた。
「そうね。わかった!あなたの恋を応援する!私の"大切な"親友の初恋だもん!」と笑顔で言ってくれた。嬉しかった。この初恋を絶対に実らせ、1番に報告しよう。そう思った。
次の日から私は親友を通してだが、彼に好きなタイプや髪型、性格を聞いた。私なりに頑張って彼の理想に近づけた。
そんなある日、廊下で親友と話していると彼から話しかけてくれた。
「最近髪型変えたんだね。似合ってる。"可愛い"。」と。私は、顔が火照るのを感じた。頑張ったかいがあった。たった一言だったが、私は嬉しくて涙が出そうだった。近くにいた、親友の顔を見るとニコッと微笑んでいるように見え私は、
「嬉しい。ありがとう!」と言った。彼は、
「フッ。フハハハ。いいよいいよ!」と大笑いして、去っていった。私の反応が素直すぎて、子供のように思えておかしかったのな?困った反応を見せた私に親友は、
「ハハハッ。声大きすぎ。あぁ〜マジ笑える。」と。
私の声が大きすぎたみたいだった。恥ずかしい。笑われて当然だ。でも、彼は私の理想だった。もうこの人に告白をしてみよう!そう決めた。このことを親友に言うと
「あぁ〜。うん!頑張って!」そう言ってくれた。
次の日私は、彼に
「放課後、話したいことがあるから屋上に来てくれませんか?」と。すると彼は
「あぁ〜。いいよ。フッ。ごめん。昨日のこと思い出した。」私のことでまだ、笑っているみたいだ。恥ずかしいから、やめてほしい。いや、やめてほしくない。彼が私のことで笑ってくれている…私は幸せだ。
放課後
私は、少し遅れて行った。なぜなら彼に、先に屋上にいて欲しかったから。ふぅ、と息を吐く。大丈夫、自分なら。と思いながら、ドアを少し開けたとき声に聞き覚えのある二人が会話していた。
「…マジ笑えるよな〜!ちょっと可愛いって言ったくらいで顔赤くなってさ〜、声もバカデカかったし!あっ!でも、お前の"大切な"親友だっけ?言ってなかったの?俺らのこと」
「あぁ〜。うん。別に"大切"じゃないけどね。クラスでずっと一人で、あんた見てニヤニヤして。終いには、あんたの事が好きだって!告白するんだって!からかいたくもなるでしょ?ハハハッ。早く来ないかな〜!ネタバラシしたいよね〜。"私の彼氏"なんだけど…って。ハハッ。」 
私は、涙が溢れた。彼は、最初から私に気がなかったのだ。終いには、"親友"は"親友"ではなかったようだし。最後の最後で、彼に想いを伝えられなかった…この気持ちは言葉にできなかった。

4/10/2024, 1:39:51 PM

春爛漫
 
 「先輩に解けない事件や謎、悩みとかないんですか?」
1年前
桜が一斉に咲き、春爛漫のこの日新入生の女子生徒が俺にこう言ってきた。
俺は「無い。」と無愛想に答えた。
 しかし、あまりにも活発な女子で初めてあったばかりなのに質問攻めだ。こんなにも自分のことを知りたいと思ってくれる人はこの人が初めてだとその時思った。そして、最後の頼みに「先輩のワトソンにならせて貰えませんか?」と。最初は、びっくりした。自分の探偵倶楽部に興味を持ってくれた子は初めてだったからだ。俺は、快く承諾した。彼女の顔は、パァッと明るくなった。
それから、二人でさまざまなな事件を解決していくうちに出会った当初には感じなかった胸のざわめきを感じ始めた。この感情が何かわからない。彼女と会うと、胸が苦しかったり、俺以外の男と話している姿を見ると無性にイライラする。少しだけ、彼女とは離れよう。そう思った。
半年後
 あの日から、彼女を避けるようになり話さなくもなった。しかし、今日は俺の卒業式だ。最後に、彼女に話さなくてはならない事がある。だから、今日の卒業式後に二人で会う約束をした。
彼女が俺の近くに来る。
「卒業おめでとうございます。」無愛想に言う彼女の目には涙が溜まっていた。そんな彼女の姿を見てこの感情に確信を得た。
「覚えているか?初めて出会ったとき、君が俺に最初に言った言葉。"先輩に、解けない事件や謎、悩みとかあるんですか?"ってね。君と会うまでは、本当に無かった。だけど…君が現れてからこの時まで唯一解くのに時間がかかった謎が一つだけあったんだよ。それはね…」ここまで言うと彼女は不思議そうに首を傾げ、この言葉の続きをはやく聞きたそうだった。可愛くて、愛おしいその姿を見て、俺は少しだけ意地悪をしたくなった。だから俺は…
「なんだと思う?考えてみてよ"俺の好きな"ワトソンさん。」…
彼女は、すぐにこの意味がわかった。
桜が一斉に咲き春爛漫のこの日。
二人の頬は少し赤く目を合わせ微笑んでいた。


 

4/9/2024, 1:09:56 PM

誰よりも、ずっと…

 最近彼女の様子がおかしい。つい最近昼食デートをしたが顔が痩け、皺がたくさんだった。なんなら、手なんて特に。あと一か月で俺の誕生日だ。「体調に気をつけてね」と一言だけだがメールを送信した。
誕生日当日になっても彼女からの返信はない。あの日からほぼ毎日メールを送っている。自分に冷めたのだろうか?でも今日は、相手がもし自分に気がなくなってしまっていてもプロポーズをする。準備は万全だ。彼女の家に合鍵を使って入る…誰もいなかった。ただ、テーブルに箱と手紙があるだけだった。嫌な予感がした。
手紙を開く
「覚えてますか?私達が出逢った場所は、図書館。
たまたま同じ本をとったのがきっかけで、知り合ったよね。その日から私達はたびたび図書館で会うようになったね。それから私達は、自分の好きな本の話や趣味、好きなものなどの他愛もない会話を繰り返すうちにお互いに惹かれ合ってお付き合いを始めた。お付き合いを始めて9ヶ月。幸せな日々を過ごしています。あと、3ヶ月すると1年記念日とあなたの誕生日です。あなたの誕生日にプレゼントと手紙を渡そう。そう思って、私はレターセットを取りだし書き始めました。途中でどんなことを書こうかと迷いふと手を見たら、おばあちゃんのように手に皺がすごかった。最近、ハンドクリーム塗ってないからかな?。私はのんきに、手にハンドクリームを塗った。先のことなんてまだ知らなかった。
今日は少しだけあなたに時間ができたらしく外で昼食をとる約束をした。嬉しかった。あなたとのデートは久々だ。体調を崩していないだろうか、心配が勝ってしまう。彼は風邪を引きやすい。そんなことを考えながら化粧をしようと鏡をみる。顔が老けているように見える。彼と私は5歳差で彼のほうが年上なのに自分の方が10年くらい老いてみえる。急に不安になってきた。だが、あなたとのデートには行きたい。昼食が終わったら、病院に行こう。そんな風に思った。
昼食中、あなたは目を全然合わせてくれなかった。いつもより何かぎこちない動きだったり、チラチラと私の方を見るだけだった。そんなことを考えていたら、診察室から声がかかった…
私は病気みたいだ。涙も止まらない余命まで宣告されてしまった。私はファストフォワード症候群という病気らしい。他の人より何倍もはやく歳をとってしまう病気だ。早くも、明日から病院生活らしい。あなたには、会いたくない。いや、もう会えない。だって次会う約束をしたのは彼の誕生日だから。その頃にはもう私はこの世にいない。連絡先も消すね。だから最後に、あなたに伝えたいことは誰よりも、ずっと特別で大好きだよ。風邪ひかないでね。」
俺は、嗚咽と涙が溢れて止まらなかった。彼女がくれた手紙の横には、手編みのマフラーが箱に入ってあった。

4/8/2024, 1:58:16 PM

君はとても可愛い。あの暖かく心地の良い風とともに桜の花びらが散り始める頃、僕は君を駅のホームで見かけた。キレイな横顔、サラサラとなびく黒髪、僕の胸あたりくらいの身長、きれいな黒い瞳。僕と目が合うとにこっと微笑む姿…僕も顔が緊張で引きづらないように頑張って微笑んでみた。うまく出来たかな?。僕を見て、急に目をそらす君。そんな君に僕は一目惚れした。
その日から僕は毎日、早寝早起きをして君に会えた時刻と同じ時間に家をでる。いつも、寝坊しがちな僕が好きな子のために早く起きる。人を好きになることは素晴らしい。そんな毎日を過ごしていた。
でも、数週間たったある日君はこわそうな男の人と一緒にいた。君とそいつは同じ制服だった。だけど、君は怯えているように思えた。男の方はずっと周りを見ている。朝から気持ちが悪い。だから、僕は決めたんだ。そいつから君を守ると。僕は、今日君の後をつけた。学校に登校したのを見送ると、近くの喫茶店で暇を潰したり本屋に行って本を見たりして君が下校するのを待っていた。時刻は過ぎ、校門から君が出るとこを見た僕は急いで後をつけた。帰りは、あいつがいないみたいだ。でも、君は何かに怯えているように肩を縮こませながら小走りだ。僕は、君を困らせている不審者から守りたい。急いで、追いかけていたら君の家の前だった。ひとり暮らしのマンション住まいみたいだ。僕は決めた。次の日から荷造りをかるくして君の家に向かった。インターホンは鳴らさなかった。君がびっくりしちゃうから、とりあえず扉を引いてみた。君はおっちょこちょいだ…ドアが開いてる。家に入ると鼻歌が風呂場からきこえた。急いで僕は、トイレの天井にある、四角い扉を開けて中に入った。今日は、ここにしよう…
君と一緒に生活をし初めて、もう雪が降る季節になった。ここ最近は、冷え込むので風呂場の天井の扉の中に居る。君がお風呂に入るときに少しだけ、扉を開ける。君が頭を洗う。君と目が合う。君の上目遣いはたまらない。君は驚いて、体が震える。大きく口を開けて「きゃぁ…」。危なかった。君がびっくりしすぎて奇声をあげようとしたから、上から、紐を輪っかにして少しずつ落とした。君の首は引っかかった。君は倒れた。とりあえず、風呂場から出て君に服を着せた。ついでにご飯も作った。でも、君は起きない。疲れたのかな?今日は寝よう。「おやすみ」そう言って、君の頬にキスをした。冷たかった…
それから僕は毎日君のお世話をした。日に日に変な臭いが君からするけれど、一緒にお風呂に入って体を洗ってあげる。
これからも、ずっと僕は君と過ごすんだ。一緒に暮らすんだ。だって、君は僕に初めて微笑んでくれた唯一の女の子だから。

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