遠くの空へ
「ねぇねぇ!聞こえてる?私の声!私は、一人でも大丈夫そう!心配しないで!」と遠くの空へ叫んだ。
「ねぇねぇ!なんの本読んでるの?」と、入学してから一番最初に声をかけてくれたのは黒髪がよく似合う活発な性格の女の子だった。声をかけてくれたときは、びっくりして口が動かなかったがそんな時でも彼女は
「ねぇねぇ!大丈夫?そんなにびっくりしなくても!」と可愛い笑い声で笑っていた。
「ご…ごめんなさい。き…緊張しちゃってて。」と私。
「ううん。こちらこそ驚かせてごめんね?ただ、その本の名前を知りたかっただけなの。私も、本が好きだから。」と微笑みながら話してくれた。
「本…好きなんだね?どんな本読むの?」と自然と口が開き自分から質問をしていた。すると彼女は、また元気になり「私はね…」と本の話をしてくれた。私と彼女の好きな本のジャンルが同じで話が合った。本の話をしたあとに彼女から
「ねぇねぇ!友達になってよ!あっ!でも、せっかく友達になるなら…親友になろうよ!!」と。眩しい笑顔と明るい声でそう言ってくれた。
入学してそうそう、私は友達なんていなかった。いや、出来なかったのだ。私のこの、暗い雰囲気が人を近づけさせなかったのかもしれない。私は、このまま3年間ずっと友達がいない高校生活を送らなければならないのか。と未来に嫌気が差していた。彼女が、私と親友になりたい。そう言ってくれて嬉しかった。とても。だから私は
「私で良ければ。」と笑顔で言った。彼女はとても嬉しそうに跳びはねていた。
それから1年、彼女と楽しい高校生活を送った。彼女といすぎて、口癖まで似てきた。そんな私は、彼女と出会って変わった。笑顔が増え、暗い雰囲気も消えた。彼女が私を変えてくれた。もう、1人での生活には戻れない。いや、戻りたくない。そう思っていた。
彼女と出会って2年が経とうとしていた頃、彼女は帰らぬ人となった。そう、母から聞かされた。交通事故だそうだ。私は泣き崩れた。つい昨日まで一緒にいて、楽しく本の話をしていたのに。来週は2人で遊園地に行こうねって。そう約束していたのに。私達の願いは叶わなかった。
彼女が亡くなってから2週間ずっと、家にひきこもっていた。彼女がいない高校生活は楽しくないだろうし、学校に私がいてもいなくても変わらないだろう。誰も心配なんて、しないだろう。そう思っていた。
翌日
先生に1度学校に来なさい。そう叱られてしまったので私は、登校することになった。学校へ着き、廊下を歩いていると、クラスの子が数人すれ違いざまに
「大丈夫?」、「無理しないでね!」、「相談いつでものるからね!」とひと声かけてくれたのだ。昔の自分だったら、絶対に声をかけてくれる人なんていなかっただろう。彼女が私を変えてくれたから今の私が居るんだ。
声をかけて去って行きそうだったクラスの子に私は振り向き、
「ありがとう!」そう一言大きな声で言った。
「全然!あの子の代わりにはなれないかもしれないけれど、似たような存在にはなれるように私達頑張るから、いつでも頼って!」と暖かい言葉を言ってくれた。
「ねぇねぇ!聞こえてる?私の声!私は、一人でも大丈夫そう!心配しないで!」遠くの空へ叫んだ。私の背中を押すように、風がふわっと吹いてきた。あなたなら大丈夫、そう彼女が言っているように私は思えた。
4/12/2024, 1:49:19 PM