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春爛漫
 
 「先輩に解けない事件や謎、悩みとかないんですか?」
1年前
桜が一斉に咲き、春爛漫のこの日新入生の女子生徒が俺にこう言ってきた。
俺は「無い。」と無愛想に答えた。
 しかし、あまりにも活発な女子で初めてあったばかりなのに質問攻めだ。こんなにも自分のことを知りたいと思ってくれる人はこの人が初めてだとその時思った。そして、最後の頼みに「先輩のワトソンにならせて貰えませんか?」と。最初は、びっくりした。自分の探偵倶楽部に興味を持ってくれた子は初めてだったからだ。俺は、快く承諾した。彼女の顔は、パァッと明るくなった。
それから、二人でさまざまなな事件を解決していくうちに出会った当初には感じなかった胸のざわめきを感じ始めた。この感情が何かわからない。彼女と会うと、胸が苦しかったり、俺以外の男と話している姿を見ると無性にイライラする。少しだけ、彼女とは離れよう。そう思った。
半年後
 あの日から、彼女を避けるようになり話さなくもなった。しかし、今日は俺の卒業式だ。最後に、彼女に話さなくてはならない事がある。だから、今日の卒業式後に二人で会う約束をした。
彼女が俺の近くに来る。
「卒業おめでとうございます。」無愛想に言う彼女の目には涙が溜まっていた。そんな彼女の姿を見てこの感情に確信を得た。
「覚えているか?初めて出会ったとき、君が俺に最初に言った言葉。"先輩に、解けない事件や謎、悩みとかあるんですか?"ってね。君と会うまでは、本当に無かった。だけど…君が現れてからこの時まで唯一解くのに時間がかかった謎が一つだけあったんだよ。それはね…」ここまで言うと彼女は不思議そうに首を傾げ、この言葉の続きをはやく聞きたそうだった。可愛くて、愛おしいその姿を見て、俺は少しだけ意地悪をしたくなった。だから俺は…
「なんだと思う?考えてみてよ"俺の好きな"ワトソンさん。」…
彼女は、すぐにこの意味がわかった。
桜が一斉に咲き春爛漫のこの日。
二人の頬は少し赤く目を合わせ微笑んでいた。


 

4/10/2024, 1:39:51 PM