「明日はきっと!」
車のクラクションが頭に響きます。
寝不足なのにうるさい。
痛みとかを感じることもないほど疲れているのです。
もう良いので早く時間が過ぎます様に。
なんて思っていたのに。
目が覚めると知らない森でした。
どこか分かりませんが暖かくて優しい光が強く差し込んでいる森です。
知らないところですが言えることは久々に私の好奇心とやらが踊っています。
まず人を探さなければ。
人を見つけるのは思ったよりも簡単でした。
少し歩くと大きな街のようなものが見えてきました。
人。っぽいのですが猫耳や尖った耳、角などがあり
人間ではなさそうな人たちもいます。
ここはどこなのでしょうか。
高校三年生くらいの青年が私に声をかけてくれました。
宿屋の呼び込みだそうです。
せっかくなので行ってみることにしました。
あの青年、どこかで見たことがある気がしました。
思い出せはしませんがなにか大切なことを
忘れている。
そう思いました。
初めてここに来てかなり時間が経ちました。
ここでの生活はとても充実していて宿屋の奥さんと旦那さんや息子さん気の良いお客さん、話を聞いてくれる隣の店の店主とその娘。
幸せ。そう思わずにはいられませんでした。
大切なもの。が出来ました。
でも昔から知っているような違和感があるのです。
<世界は移り現世>
彼女が事故に遭っていくらかたった。
目を覚まさない。
どうやら彼女は事故の5日前、故郷にいる親しい存在が多く亡くなったらしい。
原因は正確には分からないがどうやら町を巻き込んだ大規模な殺人事件が起こったそうだ。
彼女を知る人は事件が起こってからろくに彼女は寝ていなかったそうだ。
寝不足の状態でそとに出てその時事故に遭った。
彼女はどんな夢を見ているのだろうか。
幸せな夢ならば良いな。
夢から覚めるときまた大切なものも失ってしまうのは辛いだろう。
でも夢と言うものはすぐに忘れるものだ。
これが少しは彼女の心を軽くしてくれると良いな。
<世界は移り異世界>
最近なにかがおかしい。
なんだか、違和感が強まっている気がする。
頭が痛い。知らない記憶が頭に流れ込んでくる。
おかしいとは思った。
あの日寝不足だった理由も故郷のこともなにも思い出せなかった。
でも今はいろんな記憶が頭に流れ込んでくる。
あれ?...........................お母さん?お父さん?私の弟?友達のお父さん?友達?近所のおばさん?
なんでここにいるの?
もう死んじゃったんじゃ。
...眠たい。やだ。まだ行きたくないよ。
逝かないで。まだ話したいことあるの。
上京して色んなことがあったの。
やだよぉ。逝かないで。
..ピ.........ピ........ピ...
「!起きました。先生。305号室の患者様です。」
なにか声が聞こえる。
なにか大切なことを忘れている気がする。
?涙が止まらない。
昨日事故に遭ったんだっけ。
昨日は散々だった。
明日は良い日がいいな。
いや、きっと明日は良い日になる。
だって今日はいままでにないくらい
ぐっすり眠れたんだから!
「明日はきっと!」
「小さな愛」
小さな愛はきっと忘れてしまうのでしょう。
この思いはきっと貴方にとって心に残ることもなく消えてしまうのでしょう。
それでも良いのではないのでしょうか。
少しでも貴方の瞳に私が写り込んだ。
一瞬でも貴方の心を魅了できたなら私は上手くやったと想えるのでしょう?
いつからか。
そう言われると難しいですが言えることは物心ついたときから。
私は両親に売られたようです。
私は自分の心を殺し一夜を売る仕事に就きました。
すぐに枯れてしまうような花たちが集う街。
自分の魅力を創り夢をみさせる。
聞くだけだと魅力的な話だと思うかもしれませんが
正確には茶色く濁った華の街。
きっともっと綺麗なら今頃どこかに嫁いでいるのではないでしょうか。
まぁそんな街で私はトップを争う女でしたから
忙しいったら忙しい。
たくさんの男を相手するなか、一人だけ私と目を合わせない男がいました。
他の男は皆私を舐めるように見る。
それに私はとにかくいやな顔をしないように笑っている。
そんな日常が少し変わった気がしました。
その男は私に興味がないように見えました。
でも必ず毎週日曜日と木曜日に私の夜を買うのです。
私が嫌がるようなことはなくただ今日のご飯。
好きな食べ物、好きな異性のタイプ。そんな他愛もないお話をするのです。
私はあんなに心の休まる時間を知りませんでした。
心から「愛している」と言えたら。なんて
いままで思ったこともないようなことをずっと考えていました。この街では心からの言葉は己を傷つけるだけそう教わってきましたから。
私はこの先もなにも言うことが出来ませんでした。
初めてあの人が来てからそろそろ2年が経ちます。
今も私の夜を買ってくれます。
でも私は想ってしまうのです私を買ってほしいと。
永遠に貴方のものにしてほしいと想うのです。
そんな日常でも砕けて散るのは一瞬なのです。
私はどうやら病気になってしまったようです。
治る見込みはなし。 薬を飲めば治るのだと思いますが私にはお金も、薬を売ってくれる人脈もありません。
死んでしまうかもしれない。
そう想いますが何よりあの方に逢えなくなることが寂しくて寂しくて心がもう死んでしまったようです。
貴方は私を買ってくれるでしょうか。
そしたら貴方は私を治してくださりますか?
私を最後まで看取ってくれますか?
今か今かと貴方との未来を待っていますよ。
これはある男と愛を願った女が愛し合う。
そんな未来の少し前のお話。
「小さな愛」
「宇宙の娘」
他の誰とも違う。
手の形も。顔も。体も。スタイルも。
お世辞にもきれいだとか良いとは言えない。
これを個性と言うのは勝手だが私はこの体を
愛せない。
だって仕方がないじゃないか。
私は宇宙人の娘だ。
この地球の人間よりも醜いことは分かっていたじゃないか。
お父さんは人間でお母さんは宇宙人。
お父さんとお母さんは愛し合っている。
私はそんな両親が好きだ。
でもこんな体に産んだことはどうにも
許せそうにない。
そんな私でも大好きなものがある。
それは地球の芸術だ。
美しくも儚さを感じるバレエ。
見つけてくれって叫んでいるような絵画。
存在感を放ち一瞬で魅了するヴァイオリン。
理屈よりも感情に従うヒト。
どれも大好きでやってみたい事なのに
私には出来ない。
だって私にはバレエを踊るほどのスタイルもない。
思いを込めながら筆を動かす手もないし。
ヴァイオリンを繊細に引く技術もなくて。
そもそもヒトではなくて。
どうにもならないこともあるんだって知ってるけど
認めたくない。
理解したくない。
せめて少しでも努力するってことをしてみたい。
だからもう少しだけ考えてみる。
こんな私でも輝ける場所を。
私がここにいたいって本気で想える場所を。
そしていつか自分を愛せるようになるまで。
愛を叫んでみよう。
幸せになって見せよう。
「宇宙の娘」
「飛べぬ鳥」
「飛べない鳥は不幸だろうか」
ふと思うことがある。
私が現世という所で確かに命を灯ていた頃。
たくさん読んだ本の中で良くあるような疑問。
でもよくよく考えてみると分からない。
本の中にも正確なことは載っていなかった。
筆者の視点は確かに理解が出来るもので疑おうとは思わない。
筆者は不幸ではないという。
出来ないことがあっても愛するものがあるのなら
なんだって幸せだという。
でも、実際にはどうなのだろうか。
別の存在だとしても見た目はほとんど同じなのに。
羽が確かにあるのに。
くちばしだってあって
飛びたいという気持ちは他のどんな種族よりも強い。
証明は出来ないけど、そう心から思う。
自分と他を比べてみると確かに埋まらない谷が
あって。
どうしても消えない劣等感がある。
鳥だけじゃない。
ニンゲンだって同じことを思う。
他人よりも劣っていると満たされない。
必ず劣等感というものが産まれてくる。
仕方がない事なのに、仕方がなかったじゃ
納得がいかない。
飛んでみたい。そう思う。
消えてしまいたいとそう思う。
でも人を愛してみたくて。
いつかこんな自分でも愛してくれる人が出来るんじゃないか。期待する。
でもその度諦めて。
どうしようもなく自分が嫌いになる。
劣っている。
そう思いたくないけど思ってしまう。
思ってしまった方が楽になれる。
でもなぜだか認めたくない。
飛べないペンギンは海を泳ぐ。
飛べないニワトリは声を張り上げ奇跡のようにやって来た今日を、未来を、明日を告げる。
飛べないニンゲンは愛を唄う。
劣等感をバネに努力する。
羽を創り夢を語る。
「飛べない鳥は不幸だろうか」
それは確かに不幸だろう。
産まれもった才能というものがないのなら血のにじむ
努力をしなければならない。
でも幸運でもあるだろう。
羽を創り夢を見る。
そんな夢を語る間はどんなに大切で暖かいものなのだろうか。
飛べない鳥は愛を唄う。
確かではないが、「幸せ」これだけは
確かだといえるだろう?
「飛べぬ鳥」
「ドッペルゲンガー」
「ドッペルゲンガー」
この世界には同じ人物が3人いるといわれている。
そしてもう一人の自分と出会ってしまったら...
きっと死んでしまうだろう。
正しくは分かっていない。
ただ、伝説にある程度。
でもこの世にはゲンガー屋というものがある。
職業でもない。ボランティアでもない。
ただゲンガー屋に出会ってしまったら死んでしまう。
簡単に言うと殺し屋。
自分の不幸を呪い他者の幸運を呪う。
自分の不満をぶつけ、いつもの日常に戻るために
人を殺す。そんな奴ら。
ただの死にたがり。
そしてあの娘はゲンガー屋。
今日も自分を隠すため人を殺める。
あの娘は屋敷に忍び込む。
この大きい屋敷には小さな娘がいるらしい。
お金持ちで家族に愛されているらしい。
詳しくは知らないがただ恨めしい。
だからその娘は窓を割り、3階の一室に潜り込む。
なかなかに大きな音を立てて入り込んだが、
誰も来る気配はない。
それどころか誰一人いないような...
「だぁれ?」
まだ幼くて弱々しい、でも芯はある。
そんな声。
部屋の扉の前でこっちを向いた小さな娘がいる。
小さくうずくまっていて立ち上がり逃げ出そうとしない。
私のことが"見えていたら"とっくに逃げたしているはずだ。
もう一つ異変に気が付いた。
目がいっこうにあわない。あわせようとしていないのか見ることを諦めたのか。
おかしい。どこかで見たことがあるような顔。
...大きさも年齢も生活も違う。
でも一度だけ母に見せてもらった私のアルバムの
私の姿にとても、いや同じなのだ。
ドッペルゲンガー?
頭に過った。でもならなぜまだ生きているのか。
一つ可能性があるならば、あの娘は目が見えていない
のかも知れない。
お互いが存在を感じて自分と同じものだと認識するまで死なない。そんな可能性がある。
この屋敷にはおそらくこの子意外に人はいない。
もし、もしもだが彼女の目が見えていなかったら。
家族に愛されず使用人すら与えられなかったなら。
納得出来る、全てが繋がる。
恐る恐る彼女に近寄る。
目は変わらず動かない。
いきなり目の前に掌を近づけてもなにも反応しない。
「どうしたの?」
私の頬に優しくて暖かくて柔らかい手のひらが触れる。
「血?」
おそらく窓を割ったときに皮膚がきれたのだろう。
あの娘は少し動揺して、触るのをやめて立ち上がった。
「絆創膏。もってくるからね」
いま確定した彼女は目が見えていない。
手を前に付き出してぶつからないように歩き出した。
私は急いであの娘を止める。
「大丈夫。大丈夫よ」
なるべく優しい声で声をかける。
「よかったぁ」
安堵したのがとても伝わる。
こんなにも優しい人がこんな所にいたんだ。
彼女の目は何一つ機能していない。
でも私の目はまだ見える。
まだ泣ける。きっと家族に見放され愛を知らない
この子は泣くことを知らない。
だから私が教える。私が代わりに泣く。
いまだって私の頬を伝う涙を必死に拭いながら
「大丈夫?大丈夫?」
ってきいてくれるこの子を守るためなら
私はいままで殺しに使って来たこの無駄な力を
守るために使ってやる。
私のドッペルゲンガーでもこの世界に一つだけのこの
すぐに消えてしまいそうな小さな花を守ってみる。
いや、守って見せる。
これは今後世界に名を残す、目の見えないご令嬢と
ご令嬢にそっくりなメイドの最初の物語。
「ドッペルゲンガー」