ゆじび

Open App

「飛べぬ鳥」


「飛べない鳥は不幸だろうか」
ふと思うことがある。
私が現世という所で確かに命を灯ていた頃。
たくさん読んだ本の中で良くあるような疑問。
でもよくよく考えてみると分からない。
本の中にも正確なことは載っていなかった。
筆者の視点は確かに理解が出来るもので疑おうとは思わない。
筆者は不幸ではないという。
出来ないことがあっても愛するものがあるのなら
なんだって幸せだという。
でも、実際にはどうなのだろうか。
別の存在だとしても見た目はほとんど同じなのに。
羽が確かにあるのに。
くちばしだってあって
飛びたいという気持ちは他のどんな種族よりも強い。
証明は出来ないけど、そう心から思う。
自分と他を比べてみると確かに埋まらない谷が
あって。
どうしても消えない劣等感がある。

鳥だけじゃない。
ニンゲンだって同じことを思う。
他人よりも劣っていると満たされない。
必ず劣等感というものが産まれてくる。
仕方がない事なのに、仕方がなかったじゃ
納得がいかない。
飛んでみたい。そう思う。
消えてしまいたいとそう思う。
でも人を愛してみたくて。
いつかこんな自分でも愛してくれる人が出来るんじゃないか。期待する。
でもその度諦めて。
どうしようもなく自分が嫌いになる。

劣っている。
そう思いたくないけど思ってしまう。
思ってしまった方が楽になれる。
でもなぜだか認めたくない。
飛べないペンギンは海を泳ぐ。
飛べないニワトリは声を張り上げ奇跡のようにやって来た今日を、未来を、明日を告げる。
飛べないニンゲンは愛を唄う。
劣等感をバネに努力する。
羽を創り夢を語る。



「飛べない鳥は不幸だろうか」
それは確かに不幸だろう。
産まれもった才能というものがないのなら血のにじむ
努力をしなければならない。
でも幸運でもあるだろう。
羽を創り夢を見る。
そんな夢を語る間はどんなに大切で暖かいものなのだろうか。



飛べない鳥は愛を唄う。
確かではないが、「幸せ」これだけは
確かだといえるだろう?




「飛べぬ鳥」







6/19/2025, 2:00:50 PM