「小さな愛」
小さな愛はきっと忘れてしまうのでしょう。
この思いはきっと貴方にとって心に残ることもなく消えてしまうのでしょう。
それでも良いのではないのでしょうか。
少しでも貴方の瞳に私が写り込んだ。
一瞬でも貴方の心を魅了できたなら私は上手くやったと想えるのでしょう?
いつからか。
そう言われると難しいですが言えることは物心ついたときから。
私は両親に売られたようです。
私は自分の心を殺し一夜を売る仕事に就きました。
すぐに枯れてしまうような花たちが集う街。
自分の魅力を創り夢をみさせる。
聞くだけだと魅力的な話だと思うかもしれませんが
正確には茶色く濁った華の街。
きっともっと綺麗なら今頃どこかに嫁いでいるのではないでしょうか。
まぁそんな街で私はトップを争う女でしたから
忙しいったら忙しい。
たくさんの男を相手するなか、一人だけ私と目を合わせない男がいました。
他の男は皆私を舐めるように見る。
それに私はとにかくいやな顔をしないように笑っている。
そんな日常が少し変わった気がしました。
その男は私に興味がないように見えました。
でも必ず毎週日曜日と木曜日に私の夜を買うのです。
私が嫌がるようなことはなくただ今日のご飯。
好きな食べ物、好きな異性のタイプ。そんな他愛もないお話をするのです。
私はあんなに心の休まる時間を知りませんでした。
心から「愛している」と言えたら。なんて
いままで思ったこともないようなことをずっと考えていました。この街では心からの言葉は己を傷つけるだけそう教わってきましたから。
私はこの先もなにも言うことが出来ませんでした。
初めてあの人が来てからそろそろ2年が経ちます。
今も私の夜を買ってくれます。
でも私は想ってしまうのです私を買ってほしいと。
永遠に貴方のものにしてほしいと想うのです。
そんな日常でも砕けて散るのは一瞬なのです。
私はどうやら病気になってしまったようです。
治る見込みはなし。 薬を飲めば治るのだと思いますが私にはお金も、薬を売ってくれる人脈もありません。
死んでしまうかもしれない。
そう想いますが何よりあの方に逢えなくなることが寂しくて寂しくて心がもう死んでしまったようです。
貴方は私を買ってくれるでしょうか。
そしたら貴方は私を治してくださりますか?
私を最後まで看取ってくれますか?
今か今かと貴方との未来を待っていますよ。
これはある男と愛を願った女が愛し合う。
そんな未来の少し前のお話。
「小さな愛」
6/25/2025, 2:50:26 PM