「ふとした瞬間」
あの頃は楽しかった。
今が楽しくないわけではありません。
けれど、やっぱりあの頃と比べるとあの頃に戻りたいと思ってしまいます。
それは、貴方がいたからなのでしょうか。
貴方が私にくれたもの。
それは数え切れないほど、たくさんの物。
貴方が私にくれたもの。
目に見えない、暖かいもの。
私が貴方にあげたもの。
両手で数え切れないほどの暖かいもの。
お互いに抱きしめあったあの日々はもう帰ってこない
分かっています。
貴方と別れたあの日から1ヶ月。
数にすると短いですが私にとっては長く、長く感じました。
もうあの頃は戻ってこない、知っていますよ。
でも、あの頃の事を夢に見るくらいは別にいいでしょう?
その度に涙を浮かべれば、少しはスッキリするのです
貴方は私の泣き顔が嫌いだと言いました。
私が泣いていたら貴方は私を怒りに来てくれたりしませんか?もしまた会えたら...なんて。
私はなんて馬鹿なことを考えているのでしょうか。
私、マッチングアプリを始めました。
貴方を忘れてしまいたかったのです。
でも、誰ともうまく行きません。
相手と話していると、貴方の事を思い出してしまうのです。
どうしたら私は貴方を忘れる事ができるのですか?
彼女とは上手くやっていたと思います。
結婚しよう。とプロポーズをしようと思い、指輪を
買いに一人でお店に行きました。
しかし僕は道中、倒れてしまいました。
僕は病院に運ばれお医者さんに診察してもらいました。
どうやら僕は、癌になったみたいです。
もうどれだけ生きられるのか。分かりません。
長くても1ヶ月も生きられないと言われました。
ここまで耐えられたのは奇跡だ。ともいわれました。もしもっと早く異変に気がついていれば、僕はまだ
彼女といられたのかもしれません。
僕は目の前が真っ暗になりました。
この事を彼女に伝えようとは思いませんでした。
僕の事で心配をかけたくありませんでした。
だから僕は貴方と別れる選択を取りました。
会いたいです。貴方に会いたい。
僕が死んだらずっと僕の夢を見ていて欲しいです。
あの頃の夢を。
死んだら幽霊にでもなりましょうか。
貴方の事をずっと見守っていたいので。
こんな僕でも許してください。
私の彼氏は、強い人でした。
私に何も言わず消えて、一人で死ねるほど強い人だった。
あの人は、死んだそうです。
電話で、お聞きしました。
ご両親から手紙をいただきました。
どうやら貴方は、私に手紙を書いて逝ったのですね
全て知りました。
癌の事も私を愛してくれていることも。
貴方は今もしかしたら、わたしのそばにいてくれて
いるのですか?
貴方は私の頬から涙を拭ってくれているのでしょうか
不思議です。貴方は私の頬に触れているはずなのに、
何も感じません。
貴方の大きな手のひらの暖かみも、なにも感じません
あぁどこへ行ってしまったのですか?
私をおいて、先に行かないで。逝かないで。
あれから何年経ちましたか?
今でもふと、思います。
貴方に逢いたいと。
せめて、見守っていてください。
私、一生懸命頑張るので。
待っていてください。
いつか会いに逝くので。
遠い未来の話でしょうけど。
「どこ行こう」
行かないと。
逝かないと。
あの方に言われたから。
使命を果たさなければ。俺は..
死にたくないから。
痛いのはいやだ。
だから俺は行くんだ。
あと少しで使命を果たすことができる。
あと少し、あと少し頑張れば終わるんだ。
ターゲットを誰にもバレずに殺せば、まだ生きていられる。
もうターゲットはすぐ近くに居る。
あいつを殺せば良い。
あいつが何をしてボスに狙われたかは知らないが俺の命のために死んでくれ。
ターゲットを発見した。
あと3m。あと3歩。走れば0.3秒。
もう少し。
...ターゲットがこちらを向いた?
バレたか?いや違う。見ただけだ。そうだよな?
あいつは俺に声をかけてきたんだ。
ごめんねって。
私のために死んでくれない?って
それが嫌なら、ボスを殺して。って。
あいつと話した。
どうやら「アレクシア」と言うらしい。
名前があるのは羨ましい。俺は名前なんてない。
あったのかも知れないが、組織に入れられた時に捨てた。
俺にも親がいたら、まだ昔の名を語っていたのかも
しれない。
話を聞くと、アレクシアはボスを裏切った組織の四天王の一人娘らしい。
ボスは裏切った奴が許せなくて、大切な一人娘を奪おうとしたのだろう。
なんて最低なんだ?
あんな奴がボスなんて最悪だ。
アレクシアは俺に提案してきた。
ボスを殺そう。と
ボスを殺せばもしかしたら俺はどこにだって自由に行けるようにるのだろうか。
別の大陸、海鮮の美味しい国、猪肉が食える国。
どこへだって行けるのだろうか。
...乗った。
俺はそういった。
ボスを殺した。
簡単ではなかった。
かつて自分の部下だった奴が俺を裏切り者と罵ってきた。アレクシアの父もこんな気持ちだったのだろうか
だがここまで言われたら部下達を切り捨てるのにも
躊躇わなかった。ボスは力尽きた。
ようやく俺は自由になった。
何度も死のうと考えた。
これ以上自分のために人を殺せなかった。
だから死のうと思っていた。
でも俺は死ねなかった。
自分が思っていた以上に俺は死にたくなかったんだ。
でも、だからこそ後悔している。
俺が今まで殺してきた、男、女、子供だってまだまだ生きたかったんだ。
俺はその願いを無い物だとしてきたんだ。
これは一生、死んでも背負わなければならないこと。
でも俺は。
最低だ、俺は最低だ。背負わなければならないと知った上でもこんなにもまだみぬ世界に心を踊らせているんだ。
あぁ最高だ。
行きたい。
生きたい。
どこか遠くへ行きたい。
どこかで休んでからでも、背負うのは遅くないだろ。
行こう。
あぁ...どこへ行こうか。
「ささやき」
痛いわ。
苦しいわ。
熱いわ。
なにか変な臭いがする。
ごめんね。
一緒にいられなくてごめんね。
大好きです。
愛しているわ。
私とあの人の可愛い息子。
私は死んだのかしら。
私の息子は元気?
分からない。
怖いわね。死んだのに実感がわかないわ。
あの子は今何をしているの?
私が死んでからどのくらいたったのかしら。
あの子は勇者になるみたい。
私とパパ、同じ孤児の女の子の敵をとりに旅にでるのね。
大丈夫かしら。心配ね。
...あの子も大きくなったのね。
あの子と夢で会ったわ。
あの子と久しぶりにお話をしたわ。
あの子は勇者になりたくないみたい。
そりゃそうよね。まだ小さいもの。
まだお酒も飲めない子供なのに、どうして命をかけさせるのかしら。最低な世界ね。
あの子だって、敵なんてとらないで良いのに。
辛いならもう辞めていいのに。
もしあの子が辞めたいと言ったのに、国が許さないなら私は国を呪ってやるわ。
死んだって死霊として化けて出るぐらいできるわよ。
あの子相当大変みたい。
今日も夢で会ったけど、もうあの頃の純粋なあの子はもういないみたい。
勇者になって、色んな人の裏の顔ってものを見たんでしょうね。
だらか私は言ってやったの、もう辞めても良いわよ。
ってね。
あの子は言ったわ。
もう辞めたいって。私、旦那、女の子、街の皆に会いたいって。
私のささやきがようやく役に立ったのね。
嬉しいけど。悲しいわ。
だって私達に会いに来るって事はあの子は死ぬってことだもの。
私、その事に気がついて、ささやいていたことを後悔したわ。
それに、死んだからって私達全員に会えると限らないもの。だって私、死んだのにあの人とまだ会えていないから。
ここは何処なのかしら。
天国?地獄?それとも、あの子の記憶のなか?
記憶のなかならあの子が死んだら私も消えるのかしら
消えるならあの人に会ってからがいいわ。
あの子が国王に言ったみたい。
勇者を辞めたいって。
でもあのクズ、許さないかったんだって。
私はあのクズが許せないわ。
勇者だって自由に生きたいのよ。
でも感謝、してるわ。
あの子に生きるための理由を与えてくれたから。
私だって辞めたら良いなんて言ったけど、あの子に
死んでなんかほしくないわ。私みたいに苦しい思いをさせたくないもの。
私は化けて出ようと思うわ。
最初は、あの国王を呪ってやろうと思ったんだけど。
あの子と現世で会いたいのよ。
それに、あの子にだって仲間が居るみたいだし、
その子達にも会いたいわ。
ふと思ったのだけど、現世に霊として行けるってことはここは記憶の中ではないわよね。
...分かったかもしれない。もしかしたら私はこの世に
息子っていう未練あったから、浮遊霊ってものになったのかもしれないわ。
あの子と会ったわ。
大変そうだけど、楽しそうだったわ。
あの子の仲間だって皆が皆、優しそうで仲が良さそうだった。
あの子が死のうとしてると思っていたけど、大丈夫そうだわ。
きっと仲間の皆があの子を支えてくれるわよね。
だから私もいい加減成仏しないとね。
もう会えなくなってしまうけど。
私はあの子と一緒に居たかった。
あの子と生きたかった。
あの子と行きたかった。
あの子より先に逝けてよかった。
あの子を見送るなんて私にはできない。
..もう私も逝こうかしら。
またね。早く会いに来ちゃダメよ。
ここは何処なのかしら。
明るくて暖かい。
後ろから肩を叩かれたわ。
少し痛い。でも何だか懐かしい。
..あぁ会いに来て、よかった。
久しぶり。愛しの貴方。
「星明かり」
輝いていますか?
誰よりも。
貴方が見つけてくれるまで。
貴方が飽きるまで。
輝き続けていたいのです。
あの日からどれほどの月日がたったかな。
あの日、私たちの街を怪獣が襲いました。
朝、何かの音が聞こえて目を覚ましました。
遠くから怪獣の足音のような大きな音が近づいて来ていました。
怪獣が足を踏み出す度に、大きな揺れが起きました。
怪獣が通り過ぎたかのように辺りがしんとしました。
ミシミシ家がきしむ音がしました。
私は急いで家を後にしました。
正直に言うと家の外に出なければよかった、と思いました。
その日、私達の街は、家は建物は私達の当たり前だと思っていた日常と言うものは、跡形もなく消え去っていました。ここが何処か分からなくなりました。
でもここは私の街だ。そう思いました。
近所の老夫婦が飼っていたベッキーとランが、飼い主を探していました。
何だか焦げ臭くて辺りを見渡すと、近くの家が燃えていました。
逃げなくては。本能的に感じました。
声がしました。助けてと言う声が。
ベッキー、ランと呼んでいました。
どうやら燃えている家は老夫婦の家のようでした。
ベッキーとランは老夫婦の所へ駆け寄っていました。
このままではベッキー達も助からない。
私はそう思いました。本当に危ない状況でこそ冷静になると私は始めて知りました。
私は意を決して、ベッキー達を抱えて老夫婦のもとから離れました。
走って離れましたが老夫婦が行かないで、助けて、だとか言っている声が頭に響きました。
避難所にベッキー達と一緒に駆け込みました。
そこには人がいっぱいで、いつかの大地震を思い出させました。教科書でしかみたことのない光景が目の前にひろがりました。
一つ気になっている事がありました。
恋人の事です。
彼は、無事に避難できたのでしょうか。
それともあの老夫婦のように..
考えるだけで頭がいたくなりました。
電話が一つありました。
繋がらないと分かっていても、家族、恋人に電話を掛けようとする人が集まって大きな列ができていました。
怪獣に襲われてから、長い月日が流れました。
まだ家には帰られていません。当たり前ですが。
手紙を持って恋人の両親が私のもとに訪れました。
ご両親は目が大きく腫れて、赤く痛々しい。
でも私の前で無理に笑っていました。
私はその時何だか、わかったのです。
彼は死んだんだって。
崩れ落ちた私をご両親は肩を、背中を撫でてくれました。貴方ではないのに手のひらの暖かみが貴方の大きな手の暖かみを思い出させるのです。
それから今日まで何年もたちました。
今日の私は笑っています。
いや、貴方が死んでから一度も泣いていません。
死んだら星になるという子供のための話を私は真に受けているのです。
あなたは私の笑顔が好きだと言ってくれたので。
貴方が私に飽きるまで貴方が私を見なくなるまでは私は泣きません。
貴方の記憶に残られるなら、笑った私が良いから。
恋だってたくさんします。
これからです。良い出会いがないだけですから。
だから心配しないで。
私は前を向いて歩きます。いや走ります。
なのでもう私から離れてください。
もう大丈夫ですから。
もう、消えてくれましたか?
ごめんなさい。やっぱり大丈夫じゃないです。
苦しいです。
今日ぐらい泣かせてください。
本当に本当に...さようなら。
「影絵」
僕は貴方が大好きです。
貴方は皆の光。
僕は誰がみても影のような存在です。
それでも僕は貴方が好きです。
僕が影になることで貴方がもっと輝くのなら僕は
喜んで影になります。
なのでそんな顔、しないでください。
貴方は笑って輝いてください。
僕も隣で笑っていますから。
この先一緒に居ますから。
貴方はこんな僕を好きだと言ってくれましたね。
僕だって貴方が僕を好きなぐらい、貴方が大好きです。
僕と貴方が一緒にいると釣り合わないだとか馬鹿にしてくる人が必ずいます。
でもその度にそんなことないって言ってくれて僕は
ものすごく救われました。
正直に言うと、やっぱり馬鹿にされると少しは腹が立つし、心が痛くて堪らなくなります。
だから、とっっても救われた気がしたんです。
いつの日か、僕は貴方にひどい事を言ってしまったと思います。
僕は貴方のように、輝けない。
いつも僕と居て僕を踏み台にするなって。
どうして僕と居るんだって。
もう会いたくないって。
そしたら貴方が僕に言ったんです。
私を馬鹿にするな。って
自分の事を目立たせるためだけに、好きな奴を踏み台になんかしないんだって。
それに、私なんかよりあんたの方が良いところがたくさんあって輝いているんだって。
泣きながら訴える貴方がを見ると胸が痛くてたまりませんでした。
僕は思っていた事を言っただけなのに、
自分の意見をこの先、後悔しないように惨めにならないように言っただけなのに、
こんなにも胸が痛くなるなんて、思ってもいませんでした。
最近、「影絵」と言うものを知りました。
小さい頃夢中になっていた事を思い出しました。
影絵は、黒一色の影が形をつくる。それだけの事なのに、人々を夢中にさせる。
これを知った時、僕はもしかしたら彼女のように影なりに輝けるのではないかと思いました。
そもそも影と言うものは光があるから形を表すことができます。
僕にぴったりではありませんか。
彼女と言う光が目の前にいる僕はいつだって影となって輝く事ができます。
僕は彼女のように輝けるのだ。
と思うと、嬉しくてたまりませんでした。
彼は、いつもいつも自分は影だと言う。
私が光だと言うし。
彼はきっと自分の魅力に気がついていないだけだ。
そもそも私が光で彼が影だと言うのなら、
どうして光である私が影を好きになると言うんだ。
彼は気がついていない。
自分の魅力にも、自分がこんなにも愛されているんだということにも。
彼は私が彼を踏み台にしているといった。
そんなはずない。
本当にしているんだったら、彼が馬鹿にされている時にあんなにキレたりなんかしない。
彼を思って本気で泣いたりしない。
そして何よりも、こんなにも愛したりしない。
光は影があるから輝ける。
影は光があるから輝ける。
当たり前の事だけど、誰も気にしないし考えない。
この事を直接彼に言うことも考えたが、言わない事にした。
私が言っても意味がないと思ったから。
彼を一番に支えるのは自分が良いし、誰にも譲りたくない。
でも今はそんなこと言っている場合ではない。
これだけは彼が自分で気がつかないと意味がない。
彼が気が付くまで待つしかない。
でも私はずっとまっている。
愛する彼のために、彼を愛する私のために。
僕は知らないといけない。
彼女がずっと待ってくれているから。
まだよく分からない。
でも、僕を愛してくれている人のために考えよう。
彼女がずっと待ってくれているって信じているから。
考えて考えよう。
僕と彼女のために。
彼女とこの先一緒に居るために。