「物語の始まり」
彼女は美しかった。
今では、誰も知らない。
優しかったあの娘はもう居ないのに。
誰も泣かない、悲しまない。
僕が居たから彼女は脇役にしかなれなかった。
大好きだ。
あの娘が大好きだ。
何よりも世界よりも愛している。
ある日突然「魔王」と呼ばれる怪物が生まれました。
怪物と言っても家畜の突然変異です。
人に恨みを持った家畜が子を産むと恨みが呪いとなり
子が変異し、怪物が生まれるのです。
僕の両親は怪物に殺され、僕は一人になりました。
その時声をかけてきたのがあの娘。
あの娘は両親と弟が怪物に殺されたそうです。
亡くなった家族の事を涙を堪えながら教えてくれ
ました。
そんなあの娘を見ながら僕は最低ですが「綺麗」だと思いました。こんなにも美しい人は見たことがありませんでした。
この娘と出会えるなら魔王が現れよかった。
最低なことを僕は考えていました。
その後あの娘と僕は孤児になり同じ施設に入りました。
僕が16になった頃、施設に教会の方がやって来ました。
僕達は一列に並べられて、指に針を刺されました。
痛くて痛くて、施設の人が僕達を裏切ったのかと思いました。
その時僕の血が光り始めました。
みんな光りを見て綺麗だとか美しいっていっていました。
こんな血よりも美しい女の子がこんなにも近くにいるのに...僕はそう思いました。
それからは早かったです。
僕は勇者だと崇められ、知らない大人につれられ大きな教会に行きました。それから剣術.マナー.言葉使いたくさんの事を教わりました。
どうやら、18になると勇者として魔王を倒す旅にでるそうです。
教会に来て二年ほどがたった時、ふと思いました。
教会にきてから一度も教会の外にでていないな。
僕はあの娘に会いたく仕方がありませんでした。
僕はもう18歳でもうすぐ旅に出ます。
だから旅に出るまえにあの娘に行ってきますと言いたかったのです。
そこで神父様に聞きました。
今、町はどうなっているのか。
僕はいつ帰られるのか。
しかし、神父はなにも答えませんでした。
それから何日かたった日、国民に僕を紹介すると言って馬車に押し込まれました。
少し腹がたちましたが外にでられて嬉しかったのです。
馬車の中で景色を見ていると隣に座っていた神父様が
突然話し始めました。
内容は、簡単に言うと僕の町が怪物に襲われ、壊滅したと言うと話でした。
生存者はなし、襲われたのは1年前だそうです。
僕は怒りをなんとか抑え、馬車に揺られ続けました。
そしてようやく到着しました。
お祭りのように騒がしい中、中央にいき勇者だと紹介され、さらに歓声が高まった。
どうしてこんなにも喜んでいられるのでしょうか。
たくさんの人が死んだのに?
なによりもあの娘が死んだのに?
今日僕は旅にでます。
貴方を見捨てた狂った世界を救うため。
どんな物語でも、勇者は主役。
それ以外はただの脇役。
勇者が愛した人でも、何だって脇役だ。
僕、勇者は旅にでる。
愛した人に会うために。胸を張って会うために。
貴方に会えるなら死んでもいいか。
戦って死んだなら胸を張って会いに行ける。
でもその前に、両親とあの娘の敵を取りに行こう。
その過程で世界を救う事なっても。
悩んでいても仕方ない。
とにかく進もう。
早く会いに行くために。
ここから物語が始まるのだから。
「静かな情熱」
お帰りなさい。
貴方が世界で一番大好きです。
でも、この気持ちは誰にも伝えません。
迷惑をかけてまうので。
わがままですが私の事、忘れないでくださいね。
2103.4.18
初めてお会いしたのはいつでしたか?
確か、春でしたね。
もう二年と半年がたちました。
もう私たちは高校三年生。
青春だ。なんてふざけていられるほど余裕はありません。
貴方が、居たから私はここまで学校に通い続けていられました。
一年生の時、私は少しいじめられていました。
そんな私を助けてくれたのは貴方。
貴方が居たから生きていられたのです。
大袈裟だと思いますか?
でもね、それだけ私にとって貴方は大きな存在だったんですよ。でも、それにもちょっとした理由があるんです。
いつかはもう忘れてしまいましたが、確か一年生の夏頃、私は屋上に行ったんです。
特に理由はありません。
ただただ高い所に行きたかったんです。
ここで飛び降りたら、いじめっ子達が罪悪感を抱いて何かしら後悔するんじゃないかって思わなかったわけではありません。
でも自殺なんてするつもりはありませんでした。
屋上にいって思い出した事がありました。
小学校六年生の時。
私の学校である噂が流れ始めました。
隣の小学校で自ら屋上から飛び降りたら生徒がいて
その生徒が亡くなった。という噂です。
この噂を聞いた担任の先生が私たちに話をしてくれました。
内容は、簡単に言うと「死ぬな。」
生きたいと言ったら死ねって言われて、死にたいって言ったら生きて欲しいって言う不安定で手のひら返しが当たり前な世界に生まれた。
それは仕方がない事実。
でもそんな世界でも生きていて欲しいって泣きながら話す先生の姿が目に焼き付いていて、先生の事を思い出すと死ねなくなりました。
他にも、自殺をする時は死のうと決めて死ぬのではなくふと、死のうと思うそうです。
だから周りの人が助けてを求めているなら助けてあげないといけない。
でもね本人が生きたいって思わないといくら助けても意味がないのです。
でも、貴方は死にたかった私を助けてくれたのです。
感謝してもしきれないほどです。
それから一年がたったある日、貴方は病気にかかりました。
「来日病」症状は身体に白い毛のようなものが生えてきて、いつかは死に至る。
治療法は未だにわかっておらず、発症すると
コールドスリープで眠るしかありません。
貴方はコールドスリープが怖いと言っていましたが、私はなにもできませんでした。
結局貴方は私に行ってきますとだけ言って眠ってしまいました。
それから私は貴方を助けたいと言う想いだけで医学を
必死に学びました。
貴方がしてくれたことを返すために。
これも何十年も前の話。
そして私は今日海外に行きます。
治療法を探すために。
私はもう死ぬかもしれません。
紛争に巻き込まれるかもしれません。
何より私はもう年を取りました。
でも私は行きます。
貴方がくれた命。貴方のために使います。
貴方にお帰りなさいと言えない事が何よりも心残り
です。
いつかは貴方を救います。
私でも他の人でも。
少し寂しい。いえ、凄く寂しいです。
最後に手紙を書かせてください。
私のわがままですけどね。
そろそろ行きます。
行ってきます。
遠くの声
死にたくありません。
痛いのは嫌いですから。
消えてしまいたいです。
生きるのが辛いですから。
..死にたくない。それだけです。
いつこのように思い始めたのかはよく覚えていません
この世界に私一人のような気がするのです。
何も聞こえません。なにも聞きたくありません。
犬の鳴き声が聞こえます。
楽しいのでしょうか。
嬉しいのでしょうか。
こっちまで楽しい気持ちがするのです。
毎日聞こえた鳴き声は聞こえなくなりました。
一つ噂があります。野良犬が住宅街で人を噛んだそうです。
その後野良犬はゲージに入れられ車に詰め込まれて
どこかにつれていかれたと言う話です。
噂は嘘かも知れません。野良犬はいつも吠えていた犬ではないかも知れません。
でも、あの声が、鳴き声が、
楽しいでも嬉しいでもなくて、
苦しい、死にたくない、生きたい、助けて欲しい
そんな意味だったら?
私は一つの命が必死に助けを求めている声を
いい気持ちで聞いていたら?
怖いです。なにも聞きたくありません。
黙ってください。なにも考えたくありません。
「助けて」そう聞こえた時、なにも聞いていない。知らないで済ます。
そんな私にもしなってしまったら?
今よりも、何倍も何倍も苦しい想いをするんだろう。
私も、助けてと言った人も。
だったら聞きたい声が聞きたい。
どんなに離れていても。どんなに遠い声でも。
助けたい。考えたい。
助け方を、楽しませ方を。
聞こえなくても。声が聞こえなくても。
助けたい、楽しませたい。
こんな事を考えられている内は、まだ生きれるんだ。
考えられなくても、助けてーって言ったら誰かが君のことを考えるから。
君は死ねない、君を救おうとする人がどこかにいるから。二人でも、一人でも君を救って見せるから。
春恋
「春」
恋の季節。
貴方と出会ったのは、貴方と愛を誓ったのはどちらも春でしたね。
私は私の意思で貴方を選び、貴方から逃げるのです。
2024.3.11
「春」
辛い季節。
貴方と出会って、別れた季節。
未練がましいと思うかも知れません。ですが私...
俺はもう一度貴方に会いたいと願っているのです。
2025.3.19
彼女とは一昨日、結婚しようと約束したのです。
俺からプロポーズをしたとき、泣いていました。
明日は彼女のご両親に挨拶に伺おうと
思っておりました。
でも、昨日彼女が消えました。
俺の事が嫌いになってしまったのでしょうか。
今は気持ちが落ち着いています。
実感がわかないのです。一時間でもしたら、ふらっと帰ってくると思ってしまうのです。
もう帰って来ない。そうわかっているのに俺は...
俺はこんなにも彼女を愛していたのです。
なんとなく彼女の部屋に入ってみました。
絶対に入らないで。と言われていたのでここに入ったのはほとんど初めてです。
彼女との約束を破ってでも彼女がいたことを忘れたくなかったのです。
引き出しを開けました。特に理由はありません。
本当になんとなくです。
引き出しのなかには大量の手紙が入っていました。
誰かに渡すつもりだったのでしょうか。
もしかしたら彼女は浮気をしていたの
かもしれません。でももうどうでもいいのです。
浮気をしているのかはもう調べる気にもなりません。
彼女が俺を捨てた。事実はそれだけです。
でも浮気相手な誰なのか気になります。
チラッと宛先をみてみました。
そこには「晴輝」...俺の名前が書いてありました。
晴輝へ
私は貴方を心から愛しています。
だから逃げたのです。
辛い想いをしたくなかったのです。
貴方に嫌われると思うと正気でいられなく
なってしまう。
どうか私をゆるしてください。
2024年3月14日明日夏より
明日夏..彼女からの手紙。
日付が昨日になっている。
俺は必死に手紙を読み進めました。
晴輝へ
晴輝、ごめんね。
プロポーズとっっっても嬉しかったよ。
でもね、私は貴方と結婚したくありません。
じゃあプロポーズ断ったらよかったじゃん。
って思うかな?
矛盾してるけど私は貴方を、愛しています。
結婚、したくてたまりません。
でも私が私である限り貴方とずっといることは出来ないのです。
2024年3月13日明日夏より
晴輝へ
ずっと話していない事があります。
直接話そうと思います。
ドキドキしますが明日私の全てをお話します。
2024年3月12日明日夏より
なにを話そうとしていたのでしょうか。
そういえば昨日明日夏は何か話そうとしていました。
でも話す前俺がプロポーズをしたのです。
明日夏は一体なにを伝えようとしていたのでしょうか
明日夏が消えてから一年が経ちました。
明日夏の父から電話がかかって来ました。
明日夏の事を話したいから家にきて欲しいという内容
でした。
俺は明日夏の事を知りたくて明日伺いますと返し
電話を切りました。
家を伺いました。
どうやら彼女は既に亡くなったそうです。
不思議なことに涙が止まりませでした。
俺に事情を話さず消えた女が死んだだけなのに。
..日頃のストレスでしょうか。
泣いているとご両親が隣に座り、俺の肩に手を置きました。
初めて会った人なのに手のひらの温もりが、彼女の小さな手の暖かみを思いださせるのです。
貴方に会いたくて仕方ありません。