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6/27/2023, 12:15:09 PM

【君に最後に会った日】 2023/06/27

また、あの時の夢を見た。

電気時計を見ると、6月27日の8:00と表示されていた。

ダメだってわかっているのに、やっぱり夢ではどうしようもないらしい。

君に最後に会った日。

僕はその時の光景を、未だに忘れることが出来ない。

あの時、冬の雪景色の中、雲に打ち消すほどに、明るく、輝かしい満面の笑みで、時間に遅れてきた僕のことを迎えてくれた彼女。
こんな僕でも好きだと言って、告白してくれた彼女。
そんな彼女と会う日でも、あの日はいつもより増して、ものすごく大切な日だった。
彼女がずっと忙しくて、学校にも来れていなかった。なぜ忙しいのかは、僕にすら教えてくれなかった。だから、本当に久しぶりに会える日だったのに、貴重な時間を無駄にしてしまった。
「・・ほんとに・・・・遅れてごめん・・・・!」
息も絶え絶えになりながら声を振り絞った。
しかしその頭上からは、そんな僕とは正反対な明るい声が返ってきた。
「全然大丈夫!!もう、走ってきたの?」
彼女は笑いながら僕の背中をさする。
そして、本当に久しぶりに、真正面から彼女の顔を見る。
「本当に、久しぶりだね。」
僕が大好きなその笑顔。

輝かしくもどこか悲しげな彼女にのその笑顔を見たのが、君に最後に会った日だった。


部屋の中に聞きなれたスマホのアラームが鳴り響く。
起きたら、電機時計には6月28日の7:41と表示されている。
-また、同じ夢を見ていたのか。
今日で何回目だろう。数えているわけじゃないけど、もう記憶でたどれないほどに沢山見た夢。

君に最後に会った日の次の平日。
急遽知らされた君の転校。それたか何回もこの夢を見ている。
何度も、これが正夢になったくれればいいと思った。
どこかでもう一度、君に「久しぶりだね」と言って貰えたらどんなに良かっただろうか。
そんなこと、都合よく起きるはずないって、わかっているのに。

まだ君に、何もしてあげられていないのに。

もっと沢山、その笑顔を間近で見ていたかったのに。

君にちゃんと、好きだって言えてなかったのに。

-ごめんね。こんなに都合のいい夢ばっかりみて。

6/25/2023, 1:08:15 PM

【繊細な花】 2023/06/25

清廉潔白。才色兼備。高嶺の花。誰もが憧れる完璧な存在。そんな言葉が似合うようなやつは、物語の世界じゃなくても普通にいる。みんなそんなふうに例えようとなんてしないだけで、普通にこの条件に値する人はいる。
よく言うじゃないか。
「頭も良いし、顔もスタイルもいいし。
ホントすごいよね!」的なこと。

-でも、俺は知っている。

清廉潔白。才色兼備。高嶺の花。
-でも、だからって、完璧だってわけじゃない。

それはこの俺が、いちばんよく分かっている。


「ただいまー」
「ああ!!やっっと帰ってきた!」
聞き慣れているが、それでいて、家で聞くには不自然な声が帰ってきた。
「なんでここに・・・」
言いかけた時に気づいた。いるはずのない彼女が半泣き状態で部屋にへたり混んでいたことに。
唖然とした俺に、彼女はいきなり飛びついた。
「・・・・振られちゃった。」
か細く、消え入りそうな声で彼女は言った。
「前から好きだった、卒業生の先輩のこと?」
前から好きだったというその先輩は、どちらかと言うと陰キャって感じで、いつも本を読んでいるようなタイプ。
「自分とは釣り合わないだって。住んでる世界が違うんだって・・・」
-なるほどな。そういう事か。
彼女は、まさしく花だ。
いつも可憐で美しく、誰にでも人当たりがいい。
だからこそ、みんなに一線を引かれてしまうことが多い。

-でも彼女は、普通の花でも、高嶺の花でもない。

誰よりも努力家で、誰よりも情に熱い。誰よりも友達思いで、そして誰よりも、もろく、弱い。
それは今まで、ずっとそばで見てきた俺だから知っている。

彼女は花だ。
みんなと同じ世界に住む、誰よりも繊細な花だ。

6/25/2023, 10:12:18 AM

2023/06/25 【1年後】

桜の花びらが舞い落ちる始業の日。私は数週間ぶりに校門をまたぐ。
「あっ!先輩だ♡お久しぶりですっ!」
後ろを振り向くと、一個下の後輩がいた。
-また今日も一段と輝いちゃって・・・・
周りには、その後輩に熱い視線を向けている男子たちが、何やらヒソヒソとこちらの話をしているように見えた。
ホントにこの子はモテるんだから。でもそれに無自覚なのが本当に怖いとこだけど・・・
このこは、昔っから天然で全然モテてることに気づいていない。その上男嫌いで近ずいてくる男を虫でも見るような目をして見るもんだから、彼氏できないどころか告白すらもされない。ま、可愛いからいいけど。
「やばいですよお、先輩。私の一個下が今日から入ってくるって思うと本当に緊張する〜。」
私の腕を掴みながらいったことっできづいた。
そうか、今日から私も高3か。
今更になってようやく気がついた。私はもう、あと1年しかここにいられないんだ。
昨年の今頃は、もう後輩が入って来たんだなあとか思ってたけど、もう既に二つ下の年下まで入ってきている。
-本当に時が経つのって早い。
私は何になりたいのかも、ましてや進路でさえも決まっていない。まだ時間はあると思っていたのに。
青春だってコロナでまともにできてなかったし・・・
「あ〜あ。私ももう卒業じゃん。もっと遊びたかったのにな~。」
冗談交じりにボヤいていると、なにやら隣で腕を引く力が強くなったように感じる。
「先輩・・・・卒業、しちゃうの・・・・?」
おっと、まずい・・・!!!
「嫌だ!!!先輩卒業しないでよ!先輩卒業しちゃったら私学校1人になっちゃう!留年して!私が来年卒業するまででいいから〜!!!」
全く、これだから友達ゼロの天然モテ女子は・・・
半泣き状態で私にしがみついてくる彼女の頭をそっと撫でながらふと思う。

いいねえあんたは。まだ来年があって。

1年なんてあっという間。長いように感じるけど、直ぐに終わっちゃう。
そのすぐに来たる1年後の自分を上手く想像できないまま、私は昇降口へと向かった。

6/21/2023, 8:21:30 AM

2023/06/21 【あなたがいたから】

拝啓 私が愛した1人のあなたへ

元気ですか?お変わりはないですか?今、あなたは何を考えていますか?

きっと今、私の前にあなたがいても、その答えは出てこないのでしょう。私の声は、今までも、これからも、あなたに届くことはないのだから。

それでも構わない。あなたのその温かく大きな手で抱きしめてくれれば、私はそれだけで満足できる。
私が寒くて丸まっている時に、一緒に布団の中に入れてくれたり。私が住みやすいように、忙しい中でもいつも気遣ってくれたり。
今までのことが、私の世界を広げてくれたから。

ただ、質問に答えてくれなくてもいいから、私のこの気持ちだけは、伝わっていて欲しいな。

いつもあなたは、自分は今まで何人も出会ってきたうちの1人に過ぎないとか、また言い出すのかもしれないけれど、これだけは伝わっていてほしい。

私を拾ってくれて、ありがとう。
私を育ててくれて、ありがとう。
いつも抱きしめてくれて、ありがとう。

-私に、愛を教えてくれて、ありがとう。

あなたがいたから、私は本当に幸せだった。

もう会えなくなるはわかってるけど、いつかまた巡り会えたら、今度は、あなたの愛する人に生まれ変わってから会いたいな。

本当にありがとう。
愛してる。




私は、病気でもう起き上がることすらできない愛する人の胸に飛び込み、最後のメッセージを心の中で呟いた。悲しみに包まれた、愛するひとへの最後の声を振り絞って。

「ミャーン」


6/19/2023, 11:27:50 AM

2023/06/19 【相合傘】

 終礼のチャイムと共に、生徒が教室個からどんどん出ていく。今日は水曜日。基本的に部活がないからか、どんどん昇降口へ人が流れていく。
 私も、今日は早く帰ろう。家の手伝いもしないといけないし。何より早く今日は私が幼稚園にいる弟を迎えにいく番だ。遅れるわけにわいかない。
 私は足早に昇降口へと向かう。靴箱の前に立って上履きをその中に入れ、靴を履こうとした時、ふと気づいた。外では、今日の朝まで快晴だった空が雲に覆われ、雨を降らせている。
-よかった。二つ持ってきて正解だった。
 こんなこともあろうかと、今日は弟の分も合わせて、二つ用意していたのだ。
私は桃色の傘を広げて帰ろうとした。

「うわー、結構な雨だなー。」

 いきなり隣から声がした。それは、家が隣で小学校から今までずっと同じ学校に通っている幼馴染の声だった。
-びっくりした。
 私は、少し高鳴っておる胸にそっと手を置き、自分を落ち着かせる。
「俺今日傘持ってきてないんだよなー、どうしよっかなー。」
 彼は私の方に視線を向けてくる。
-もう、本当に世話が焼けるんだから。
「いいよ、私の貸してあげる。あとでちゃんと返してよ。」
 私は持っている傘を手を渡し、もう一つ用意していた傘を取り出す。弟用で少し小さいが、まあなんとかなるだろう。
「えっ、一緒に入っていけばいいじゃん」
 不思議と言わんばかりに首を傾げている彼の言葉を理解するのに、少し時間がかかった。
「はあ!?何言ってんの!私たちもう高校生だよ?子供じゃないんだし。それに今日は弟の迎えがあるからこのまま家に帰るわけじゃないの。それ、今度持ってきてくれればいいから。じゃあね!」
 一気に捲し立てるように言った言葉を唖然としながら聞いていた彼を置いて私は逃げるようにその場から離れた。
 まだ大きく高鳴っており胸を落ち着かせるために、湿気の多い空気を必死に取り込む。

-いつからこんな気持ちになるようになったのだろう。

 小学校の時なんかよりずっと背も伸びて、声も低くなって。昔は弱々しかったのに、いつのまにか守られる側になっていて。
-相合傘なんて、できるわけないじゃん。
後ろで私の桃色の傘を刺して突っ立っている彼をチラ見して、照れ臭くなりながら、私は走って肛門を出た。


また、逃げられた。
今日も彼女に逃げられてしまった。こうやって「幼馴染だからできる」みたいなことを言い出すと決まって彼女は怒ってどっかに行ってしまう。今日もまた、怒って逃げていってしまった。

-くそ、なんで振り向いてくれないんだよ。

ずっと前は、俺と同じくらいの背丈で、いっつも俺のことを守ってくれていたのが、今は俺よりも全然ちっちゃくて。自分が守ってあげたくなるような感じ。
今までと全然違う感情が、自分の中に湧き上がってくる実感がある。

-やっぱり俺が隣じゃ、頼りないのかな。

一度、彼女が貸してくれた桃色の傘を畳んで、自分のカバンの中にあるものを取り出す。俺の手には、彼女を見つけた時にそっと鞄にしまい込んだ、紺色の折り畳み傘が握られていた。

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