【繊細な花】 2023/06/25
清廉潔白。才色兼備。高嶺の花。誰もが憧れる完璧な存在。そんな言葉が似合うようなやつは、物語の世界じゃなくても普通にいる。みんなそんなふうに例えようとなんてしないだけで、普通にこの条件に値する人はいる。
よく言うじゃないか。
「頭も良いし、顔もスタイルもいいし。
ホントすごいよね!」的なこと。
-でも、俺は知っている。
清廉潔白。才色兼備。高嶺の花。
-でも、だからって、完璧だってわけじゃない。
それはこの俺が、いちばんよく分かっている。
「ただいまー」
「ああ!!やっっと帰ってきた!」
聞き慣れているが、それでいて、家で聞くには不自然な声が帰ってきた。
「なんでここに・・・」
言いかけた時に気づいた。いるはずのない彼女が半泣き状態で部屋にへたり混んでいたことに。
唖然とした俺に、彼女はいきなり飛びついた。
「・・・・振られちゃった。」
か細く、消え入りそうな声で彼女は言った。
「前から好きだった、卒業生の先輩のこと?」
前から好きだったというその先輩は、どちらかと言うと陰キャって感じで、いつも本を読んでいるようなタイプ。
「自分とは釣り合わないだって。住んでる世界が違うんだって・・・」
-なるほどな。そういう事か。
彼女は、まさしく花だ。
いつも可憐で美しく、誰にでも人当たりがいい。
だからこそ、みんなに一線を引かれてしまうことが多い。
-でも彼女は、普通の花でも、高嶺の花でもない。
誰よりも努力家で、誰よりも情に熱い。誰よりも友達思いで、そして誰よりも、もろく、弱い。
それは今まで、ずっとそばで見てきた俺だから知っている。
彼女は花だ。
みんなと同じ世界に住む、誰よりも繊細な花だ。
6/25/2023, 1:08:15 PM