夜景
そこは、全てが星だった。
頭の上にも足の下にも、
どこもかしこも星だった。
この光の数だけ、
幸も不幸もあると考えると不思議だった。
一つまた光が増えて、
一つまた光が消える……美しい光景。
しばらく見惚れていた。
目を閉じ、開けると……空は明るかった。
寝ていたことに気が付く。
夜景は綺麗だ。
でも、眠気には勝てなかった。
昼に夜景は見れないかな……あ、昼景になるから無理か。
そんな馬鹿な事を考えつつ、一日がスタートした。
花畑
夢を見た。
花畑の中、
小さな私が何も知らずに無邪気に笑い、
頭に花冠を乗せ、
蝶を追いかけて、楽しそうにしている夢。
「いつかね、わたしおはなばたけにすむの〜!
まるたでね、いえをたてて〜」
楽しそうだった。
羨ましいと思う反面
そんなことできるわけないだとか
現実を見たら?とか、
馬鹿なの、とでも
言わんばかりの感想を持つ自分とは大違い。
よっぽど小さな私の方が外身も中身も綺麗だ。
場面が進む。
私は少し大きくなっていた。
「お花畑には住めないみたいだから、諦める。
でも……頭の中は自由にしていいよね!」
想像?妄想?そんな世界に入り浸った。
少し残念そうに、寂しそうに
でもまだ楽しそうに花畑にいた。
また、場面が進む。
また背丈が伸びたようだ。
「私が、頑張らないと。
私はまだまだ。
もっとすごい人も
もっと辛い人もいる。
これくらい我慢しなくちゃ。頑張らないと。
しばらく、あの世界には行けないや。」
悲しそうに、名残惜しそうに
手を振り別れを告げ私は消えた。
しばらくして、パッと私が現れた。
もう、消えた時とは比べ物にならないほど成長していた。
「久しぶり。
また、これたんだ。
最近ね、思い出したの。
私、やっぱりこの世界が好き。
でも、頭の中では生きていけないから
現実を生きなきゃいけない。
私……本当は……
やめよう。
もう、現実を見ないと。
お花畑には住めない。
そろそろ自分が好きなもの探さなきゃ。」
私は花冠を編みその場に残して
逃げるように立ち去った。
しばらくして
小さな人影が現れた。
最初の小さな私だった。
花冠を見つけると嬉しそうに頭に乗せ
蝶を追いかけた。
夢はそこで終わった。
空が泣く
青空が見えていた。
日が差していた。
白い雲も黒い雲もあった。
雷鳴がした。
空は明るかった。
でも、暗かった。
茜色もあった。
空色もあった。
月が見えた。
もう、ぐちゃぐちゃだ。
天気も時刻も全てが入り混じっている。
でも、本当だ。
本当に現実だった。
その人は、そんな空の下
死んだ魚のような目をしていた。
目に涙を浮かべ苦しそうに笑っていた。
その人は、
喜んでるのか怒っているのか哀しいのか楽しいのか
はたまた、その他か
どの感情にも見え、どれでもないようにも見えた。
その人自身、わからないのかもしれなかった。
ただ、上を向いてることから
涙がこぼれないよう必死なのはわかった。
どれほど時間が経っただろうか。
長いようにも、短いようにも感じた。
その時、とうとう
雨粒が落ちた。
涙が落ちた。
空が泣く。
人が泣く。
君からのLINE
君からのLINEは面白い。
けれど、たまに心配にもなる。
単に騙されやすいのか
君の天然さ故なのか、
よく嘘に騙される。
まだ、かわいい嘘で収まっているから安心?だけど。
例えば、ただの飛行機雲の写真を送ってきて、
これを見たら不幸になるらしいけどどうしよう?!
と、慌てていた。
私は、
私は何回も見てるけど幸せだから大丈夫、
と送った。
すると、
そうなの?よかった
と返事が来た。
またある日は、私が
とある山の奥で天然が治る薬草が発見されたらしいよ〜
と、冗談で送ると
本当?!場所教えて!
と、信じてしまい、
冗談だと伝えても数日の間、真面目に場所を聞いてきた。
ちなみに、○○って天然だよね
と送ると、
必ず
○○は天然水じゃない!
と、くる。
現実で、真剣な顔で言っていたため、
おそらく冗談でもなんでもなく、
本当に
天然な性格=天然水
と考えているのだろう。
今日も、楽しい君とLINEをする。
夜明け前
東の空が、少し明るかった。
まだ日は出ていない、夜明け前。
そっと、窓を開ける。
澄んだ、爽やかな空気。
朝の空気……それも、夜明け前の空気が好きだ。
なんとも言葉に表しにくいが、
自分の言葉で言うならば綺麗だから。
一日の中で、一番綺麗な空気だと思うから。
日が出てからの朝は
慌ただしさがある。
昼は、ざわざわしている。
夕方は寂しさも、忙しさも感じる。
夜はなんだか怖い。
神秘的だけど、静かすぎる。
でも、夜明け前は
静かなのに恐ろしさも寂しさもない。
まだ日が出ていないからか心に余裕があり
慌ただしさも、忙しさも、ざわざわとした音もない。
ただ、そこには
透明な空気があるだけ。
だから、単純に綺麗だと私は感じる。