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3/15/2023, 2:17:41 PM

星が溢れる

ネオンがキラキラと光る眠らない街、東京から彼と一緒に地元に帰省した。俺たちの地元は田舎で、コンビニだって23時には閉まるし一店舗しかないスーパーなんて19時には閉まってしまう。ここへ帰ってくるとあんなに煌びやかな世界なんて嘘なんじゃないかと思ってしまうほど辺りは暗い。
ここで煌めいているのはネオンなんかじゃなくて空にある月と星だけ。空気が澄んでいてまるで星が溢れている様だ。
とても、とても綺麗で思わず彼に電話をした。

「ねえ、星。」

「は?星?」

「うん。星めちゃくちゃ綺麗だよ。」

「お前今どこにいんの?」

「どこだと思う?」

「どうせ海だろ?」

「よく分かったね、正解」

「お前のことなんて誰よりも知ってんだよ。」

「俺よりも?」

「当たり前だろ。お前自身よりもお前を知ってるわ」

「早く来てよ」

「今向かってる」

「じゃあ電話繋いだまま来て」

澄んだ空気と、波の音と星が溢れた空、それに彼の声。
俺の彼への気持ちも溢れ出しそうになって、なんだか泣きたくなった。

3/9/2023, 2:44:31 PM

過ぎ去った日々

少しだけ春を感じるようになってきた穏やかな夕方にもうすぐ桜が咲くなあ、なんて考えながら家路を辿る。昨年の花見は彼が体調を崩してしまって行けなかった。すごくすごく楽しみにしていたみたいで悲しんでいてしまいには「お前と綺麗な桜見たらきっと治るから今すぐ花見に行こう」と意味のわからないことを言い始めてしまった。だからきっと今年は今まで以上に騒ぎ出すんだろうな。
春には花見に行って、夏には祭りに行ったりキャンプをしたりして、秋には紅葉を見に行ったり二人で焼き芋のおじさんを追いかけたりもした。冬にはコタツに入りながらアイスを食べて、年越しそばを食べて、二人で年を越して初詣に行って。過ぎ去った日々を思い返せばいつも俺の隣には彼がいて笑っていてくれた。これからもずっと彼といられますようにと初詣で願ったことは叶うのだろうか。

「ただいまー」

「おー、おかえり」

先に帰っていた彼が出迎えてくれる。俺は彼が次に言う言葉をもう知っている。何年一緒にいると思っているんだ。きっと次の言葉は

「「なあ、今年は花見絶対行こうな!」」

「言うと思ったよ、君が体調崩さなきゃね!」

俺が最期に見る世界も君と一緒がいいな。
君も、そう思ってくれてるかな。

2/13/2023, 2:29:31 PM

待ってて

「待っててね」お前の口癖だった。
用事があるとき、買い物へ出かける時、風呂に入る時、ご飯の準備をしている時。
待っててねって言わないと俺がどこかへ行ってしまうと心配でもしているのかと思わず聞きたくなってしまう程お前の口からよく聞いた言葉。でもいつも俺の元に帰ってくるから、別に気にもしていなかったし「俺はお前の元に帰ってくるよ」って言われている気がして、悪い気はしなかった。
あの日、お前がいつも通り「待っててね」と言って買い物に出かけた。何分、何時間、待てど暮らせど帰ってこない。
次に俺がお前と会った時には温もりはなかった。信号無視をした車に轢かれそうになった子どもを庇って跳ねられてしまったそうだ。随分と格好の良い死に様じゃないか。きっと助けられた子どもやその両親なんて、生涯お前に感謝しながら生きていくことだろうな。命の恩人だって。子どもが助かって、本当に良かった。
なあ、お前俺に「待っててね」って言ったよな?
待たされる側、遺される側の気持ち、分かるか?
訳の分からない調理器具だらけのキッチン、右側の寒いベッド、一組余っているスリッパ、見かけたままの映画。
お前、俺の元に帰ってくるんじゃねぇのかよ。
ずっとずっと、待ってるのになんでいつもみたいに帰ってこないんだ。今日も俺は帰ってくるはずのないお前を待ち続ける。

12/8/2022, 2:21:44 PM

ありがとう、ごめんね

俺はお前に出会ってからたくさんのごめんを聞いてきた。
一緒にいたいって思ってごめん、君の子どもを産んであげられなくてごめん、両親に堂々と紹介できないようなこんな俺でごめん、辛い思いさせてごめん、

好きになって、ごめん。

たくさんたくさん、俺に謝ってきた。ごめん、ってお前が謝ってくる度辛かった。俺はお前に幸せだって、笑っていて欲しかった。そのごめんの裏にはお前の苦しさや辛さ、涙があったんだろう。だから俺はお前にごめんと言われる度、ありがとうを返すんだ。

一緒にいたいと思ってくれてありがとう、お前の人生を俺にくれてありがとう、俺と出会ってくれてありがとう、

好きになってくれて、ありがとう。

いつかお前が、辛さや苦しさじゃなくて幸せを存分に感じられるようになるまでお前のごめんを俺がありがとうに変えてやるからさ。いつか、ごめんじゃなくてありがとうを聞かせてくれよ。

11/1/2022, 11:21:54 AM

永遠に

永遠なんてあるわけが無い。俺はそう思う。
時間はいつだって有限だ。早く終わって欲しいと願っても、時間が止まって欲しいと願っても時間は過ぎてゆくものなのだ。
そう、永遠なんてあるわけが無いんだ。そう思っていたはずなんだけどどうやら俺はお前と出会って変わってしまったみたいだ。「永遠に一緒にいてくれる?」なんてお前に出会う前の俺が聞いたら思わず「そんなのあるわけねぇだろ」と言ってしまう様な馬鹿みたいな台詞に永遠があればいいな、なんてこれまた俺も馬鹿みたいな事を思いながら頷いてしまう様になってしまった。俺まで世間に大量発生している恋に浮かれた馬鹿になってしまったじゃないかこれは大問題だ。「どう責任を取ってくれるんだ」って俺が怒ったらあいつは「俺が永遠に一緒にいてあげるよ」って。俺もお前も馬鹿同士仲良くやっていこうじゃないか。

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