通りすがりの字書き

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4/25/2024, 9:42:12 AM

「もう、こうやって会うのはやめよう」
私が言おうとしていた言葉を彼が先に告げてくれた。
彼は次を見つけたんだろう。
私は、心が欲しくなったから。
「私もそのつもりで、今日ここに来たよ」

体だけの関係上の暗黙のルールに従っただけ。
ただ、それだけのことだ。

お題『ルール』

4/24/2024, 4:04:48 AM

ここにくると色々な人を見られる。
今日はアチラ。私からは左前方に見える位置に男女がいます。
こちらから、男性の表情は伺えませんが、男性と対峙している女性の表情はよく見えます。
とてつもないほど、恐ろしく、暗い表情です。
「ねー店長、アレ修羅場?」
目の前にいた、このバーの主は真面目な顔で、
「それ、誰かわかっています?」
ん?私の知っている人?もう一度左前方を見るが、誰かはわからない。私が首を傾げると、
「ま、もう終わるでしょう。終わったら、男性はあなたの隣に座りますよ。」
ん?修羅場後に隣に来ても気まずいだけじゃないか?
そう思いつつ、私はロックグラスを傾けた。

ドサッ。

突然左前方から、大きな物音がしたと思ったら、女性が1人で店を出て行った。
私が女性を目で追っている間に、隣に誰かが座った。
「終わりましたか?修羅場?」
ドサッと茶封筒が机に乱暴に置かれ、
「誰が修羅場だよ。」
この声は、右を向かずともわかる。まずい、今日の心模様が真っ白になった後真っ黒になった。
「そうか、君が修羅場と言ったんだね?ただの業務連絡を。ふーん。」
月曜日からは会いたくない男だ。酒を水のように飲む友人と月曜日から飲みたくない。潰される。
逃げたい。この場から今すぐ。


お題『今日の心模様』

4/22/2024, 12:32:35 AM

雨を跳ね上げながら走る車の音
遠くで鳴る雷の音
非常階段に落ちる甲高い雨の音

ベッドに丸まりながらそれらの音を聞く。
「こんな夜は嫌いだ」
1人呟いたところで何も変わらない。

いらぬ記憶が脳裏から離れない。
思い出さされる記憶が心から消えない。

目から落ちる雫が全て無くなっても、記憶は消せない。

あの人はもう戻ってこない。

お題『雫』

4/19/2024, 2:15:40 PM

運ばれてきたカツ丼に、そうコレコレ。と言いたくなるくらいここのカツ丼は絶品かと思う。
丁寧にいただきますと言って食べ始める。
「そういえば、どうしてるんだ?アイツは」
目の前にいた男が、連れの女に尋ねた。
「あー。新しい会社で頑張っていますよ。多分」
多分ねぇ、といいながら、男が苦笑いをした。
「これから彼と付き合っていけるか、どうなるのか、もしも未来を見れるなら、見て判断したいなぁと。先輩は、どうして今の奥さんと結婚したんですか?」
質問を投げてから、女はカツ丼にがっついた。
「そうだなぁ。未来が見えなかったからかな。」
カツ丼を口に入れていた女が不思議そうに男の顔を見た。「未来が見えすぎると、悪いことばかり見えてくる気がして。だから、今一緒にいて、1番楽で、未来が見えない嫁と結婚した」
「なんか、私はそれ怖い気がします。」
「ま、人それぞれかな。ま、まだ若いんだし悩め悩め」
そうですね、と言いながら、カツ丼を再び頬張った。

お題『もしも未来を見れるなら』

4/19/2024, 8:22:13 AM

なぜ、ここに辿り着いたんだろう。
どうして、ここに来たいと思ったんだろう。
この世界では何も得ることがないのに。

そうだ、私は全て捨ててここに来たんだ。
だから、ここは無色の世界なのか。

私が何かを得ようとすると、誰かが嫌な思いをする。
そんな気がして、すべて捨ててここに来たんだ。

私が何かを得ようと思える未来は、色のついた世界だろうか。


お題『無色の世界』

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