これは片思いなんだと。
彼がこちらを正面から見据えてくれることはないんだと。
いくらわかっていても、想いが消せない。
毎晩泣こうが、叫ぼうが、喚こうが、自分の心から逃げられないんだ。何年経ってもかわらない。
「今日で会うのは最後にしたい」
私の言葉を聞いた彼が驚いた顔をしてくれたのが救いだった。
「別れるってことか?」
とても低い声で怒っているようだった。
「転勤になったから仕方ないよ。元気でね」
私が彼に背を向けた途端に感じた、あの日の温もりを消すことはできないだろう。
遠距離が無理なわけではない。彼は彼女の元へ戻らないとダメだから、私が消えるべきだっただけ。
「幸せになってね、さようなら」
背中の彼に聞こえるか聞こえないかの声で告げると、私は彼の腕の中から逃げた。
行き場のない想いを心にとどめたまま。
お題『あの日の温もり』
どうしたら忘れられるのだろう?
どこに居たって、君との思い出にあふれているのに。
ただ、カフェでお茶していたって、君が前に座っていたことが思い出されるし、家でコーヒーを飲んでいたって、君がコーヒーを飲む時の癖が思い出される。
忘れたいのに忘れられない。
時が解決するのか?
いや、しないだろう。
じゃあね、と言って去っていった、君の背中に何かメッセージがあったのか、いまだに解けないまま、5年が過ぎていく。
お題『君の背中』
両手で頭を押さえて起き上がると、大きなため息をついた。
「どうすればいいの?どうしろというの?どうしたらよかったの?」
夜中に独り言を言っても意味はない。
自分の夢に怒っても誰も助けてはくれない。
静かに流れ落ちる涙は、私をまた夢の中へ連れて行く。
お題『どうすればいいの?』
ぷはーっ。
タバコのうまさを実感できる時間が、最高に幸せだー。
と、思う自分に惨めさを感じてしまうのも現実だ。
この、どこまでも続く青い空を眺めながら、職場の喫煙室代わりにしているベランダに逃げてくるのも乙だなぁ。
「って、おい、なんでこんなに混んでるんだよ」
どんどん端に追いやられて、混雑し始めるベランダ。
「営業会議でもないのに、部長が来て暴れてんだよ」
あーそういうことか。
じゃ、仕方ねーな。
俺は、再びタバコを思いっきり吸い込んで吐き出した。
虚しくても、惨めっぽくても、やっぱりこの時間は至福の時だ。
お題『どこまでも続く青い空』
最初からそうだったんだ。
私の見ている遠くの景色と、彼がみている場所は同じようで違うものだった。
それだけのことだ。
ずっと平行線で交わることはない。
これからもずっと。
どこまでいってもすれ違いだ。
2本の線の間隔をゆっくり離していけば、私は苦しまずに彼を忘れられるだろう。
お題『すれ違い』