旅は続く。
毎日毎日歩き続け、死ぬまで終わらない旅。
人生なんてそんなものだ。
なんて、分かりきっているんだけれども。
立ち止まりたい時も、ぼーっとしたい時も、何も考えたくない時もあるもので。
昔はずっと進むんだと思って頑張っていたけれど、今はそんなに頑張らなくてもいいかな?と思えるようになった。
今の私は少しだけ心が元気だよと、心配していたみんなに伝えたい。
お題『旅は続く』
「ちゃおー」
「いかにも平仮名発音で、その挨拶する日本人は怪しい人だと認識しているので、側に来ないでください。」
「なんだよソレ」
そう言いながら、私の隣を歩く男。
どう考えても、何考えているのかわからないし、彼の真意はいつだって掴めない。
なんだか、隣で色々話しているが、あまり頭にいれないようにする。
この男の話に耳を傾けて、これ以上心に傷はつけたくない。
「聞いてる?俺の話?」
「故意的に脳で処理されないようにしています。」
えーとか不服を言っていそうだが、ここは気に留めず、いつも通り駅までの道を歩く。
「ほらー降ってきたよ。降ってくるから急ごうって言ったのに、なんで聞いてくれないかな?」
私は鞄から折り畳み傘を出してさすと、隣の男にひょいっと取り上げられた。
傘にあたるやさしい雨音と少し近づいた彼との距離が、心に傷をつけた。
私は、この関係にいつまで耐えられるのだろうか。
お題『やさしい雨音』
これは片思いなんだと。
彼がこちらを正面から見据えてくれることはないんだと。
いくらわかっていても、想いが消せない。
毎晩泣こうが、叫ぼうが、喚こうが、自分の心から逃げられないんだ。何年経ってもかわらない。
「今日で会うのは最後にしたい」
私の言葉を聞いた彼が驚いた顔をしてくれたのが救いだった。
「別れるってことか?」
とても低い声で怒っているようだった。
「転勤になったから仕方ないよ。元気でね」
私が彼に背を向けた途端に感じた、あの日の温もりを消すことはできないだろう。
遠距離が無理なわけではない。彼は彼女の元へ戻らないとダメだから、私が消えるべきだっただけ。
「幸せになってね、さようなら」
背中の彼に聞こえるか聞こえないかの声で告げると、私は彼の腕の中から逃げた。
行き場のない想いを心にとどめたまま。
お題『あの日の温もり』
どうしたら忘れられるのだろう?
どこに居たって、君との思い出にあふれているのに。
ただ、カフェでお茶していたって、君が前に座っていたことが思い出されるし、家でコーヒーを飲んでいたって、君がコーヒーを飲む時の癖が思い出される。
忘れたいのに忘れられない。
時が解決するのか?
いや、しないだろう。
じゃあね、と言って去っていった、君の背中に何かメッセージがあったのか、いまだに解けないまま、5年が過ぎていく。
お題『君の背中』
両手で頭を押さえて起き上がると、大きなため息をついた。
「どうすればいいの?どうしろというの?どうしたらよかったの?」
夜中に独り言を言っても意味はない。
自分の夢に怒っても誰も助けてはくれない。
静かに流れ落ちる涙は、私をまた夢の中へ連れて行く。
お題『どうすればいいの?』