「ちゃおー」
「いかにも平仮名発音で、その挨拶する日本人は怪しい人だと認識しているので、側に来ないでください。」
「なんだよソレ」
そう言いながら、私の隣を歩く男。
どう考えても、何考えているのかわからないし、彼の真意はいつだって掴めない。
なんだか、隣で色々話しているが、あまり頭にいれないようにする。
この男の話に耳を傾けて、これ以上心に傷はつけたくない。
「聞いてる?俺の話?」
「故意的に脳で処理されないようにしています。」
えーとか不服を言っていそうだが、ここは気に留めず、いつも通り駅までの道を歩く。
「ほらー降ってきたよ。降ってくるから急ごうって言ったのに、なんで聞いてくれないかな?」
私は鞄から折り畳み傘を出してさすと、隣の男にひょいっと取り上げられた。
傘にあたるやさしい雨音と少し近づいた彼との距離が、心に傷をつけた。
私は、この関係にいつまで耐えられるのだろうか。
お題『やさしい雨音』
5/26/2025, 9:47:35 AM