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3/21/2024, 5:08:20 PM

とある森の中

2人の旅人が並んで歩いていた

1人は左手に杖を持った老爺
1人は紺色のローブを纏った15歳くらいの少女


少女が木々で覆い茂っていた先に
太陽の陽がキラキラと光って
明るい場所が見えたところで走り出す


足を止めた場所は
大きめの湖
澄んでいて飲水でもなりそうなくらいなキレイな水面

少女はしゃがみ込んで湖を見つめると瞳が微かに光る
パッと顔を上げれば
後ろからゆっくりとやってきた老爺に向かって言う


「ここで間違いないみたい」

少女の言葉にやっとかと頷いた老爺は
立ち上がって手を握る少女に引かれて
湖のほとりに腰を下ろす


この湖はケガの治癒効果のある湖だと
次の国に向かう途中で耳にした

運悪く魔物と遭遇したことで
老爺が負傷してしまったために少しばかりの情報頼りに
やっとの事で訪れることが出来たわけだ


「悪いな、大した怪我でもないのに」
「ううん」


老爺らしくない口調、思ったよりも若く聞こえる老爺の声
少女が袖を上げて傷のある腕を湖に沈める

徐々に傷は癒え、あともすっかり無くなったことを確認してから
腕を湖からあげる


「もう少し休んでいこう」


お腹も空いたしと微笑む少女

老爺の隣に並んで座り
カバンに入れていた包みを取りだして
包みを開けてからパンを老爺へと差し出す


「はい、お兄ちゃん」
「ありがとう」


お兄ちゃんと呼ばれた老爺は差し出されたパンを受け取り
キラキラと光る湖を見ながら1口かじる

この老爺は少女の実の兄だ

二人は自国が滅亡したことにより
王であった父親の手によって
逃げることが出来たが

途中で出会った魔族に兄は呪いを受け
遠くまで来た頃には
今の老爺の姿になってしまっていたのだ


「―お兄ちゃん、これからの国ってどういう所だっけ」
「港があって、色んな船が出入りしてる国。貿易にさんだとか」
「ふーん」

興味のなさそうな返事


呪いを受けた兄とその妹
この先何が起こるのか
分からない


たった二人だけの旅は
これからだ



[二人ぼっち] ―「2人きりの旅」より―

3/17/2024, 3:50:08 PM

私は人間の感情が分からない


私を育ててくれたおば様は
考え方、とらえ方が違う
生きものだからと言っていた

みんなが大切にしていた
うさぎが亡くなった

泣くというのは悲しいからだって
なんとなく、穴が空いたような
そういう感じはするけど…


子どももひとりが泣いたら連鎖する
それもどうして



[泣かないよ(―泣けないよ―)]


――――――――――――――――――――

表情が表に出にくいから
何も感じてないって
よく勘違いされる


それに関しては自覚はあって

表情を作れるように心がけると
お前どうしたって言われてさ

結局いつもの人形のような、真顔になっちゃう


旧校舎にある、誰も来ないような場所に
そこでこっそり秘密基地を作っちゃって

家に帰っても親の帰りは遅いから
完全下校のチャイムが鳴るまで


気持ちを落ち着かせるんだ〜…


もう慣れちゃったけどさ――
少しはダメージ受けてるんだ


[泣かないよ―伝えれない―]


3/16/2024, 2:00:02 PM

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読者様なりに
登場人物やその時々の背景、設定を
置き換えて読んでいただけるよう
あえて曖昧なストーリーとなっております
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―ねぇ、本当にそう思ってる?―
―育った環境のせいか?あぁ、いや、お前さんを否定してるわけじゃないんだがな―
―君は…また人を騙したのか…。実力でその地位にいるのは分かってるけど、お咎め少ないからってあまりやり過ぎるなよ―

物心ついた頃には
そんな言葉がまとわりついていた

どうしてなのか

そりゃ
自覚はあるさ

生きていくためには
抗えなかったわけだし


こんな世界じゃよくある話だろう

この種族はそういう種族とか
誰が上で誰が下とか

だけら
“ぼく“みたいな人間がいても
全く不思議じゃない


「さぁて、次のターゲットは……」


ピィンっと指に弾かれ
音を響かせた1枚のコインが
宙の空気を切った



[怖がり―うそで築いた今―]
――――――――――――――――――

私は子供の頃から
妖怪という存在がすごく好きだった

大昔はそういったモノたちが
人の目に見え、世から恐れられていた
本やフィクションでしか見ることのできないモノたちを
成人した今でも存在すると信じている

と言っても
誰かに話したところで
バカにさせるだけだから黙ってはいるけど……


仕事の終わった帰り道
今日はなんだか少しだけ空が明るい気がする
暗い空に遠くの方が白いモヤがあるような
ちょっと不気味

自分の足音しか聞こえない道で
ふと妄想というか、思った

本当に存在していて
私が突然あちら側の世界に迷い込んだら…

このモノ達が楽しい存在とか
離れたくない場所だとか
思えるのだろうかなんて

人らしく
怖がって逃げちゃうのかな

“帰れないのに“


[怖がり―人外―]



3/15/2024, 1:44:04 PM

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読者様なりに
登場人物やその時々の背景、設定を
置き換えて読んでいただけるよう
あえて曖昧なストーリーとなっております
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「こちらがお客様の部屋のカードキーになります。エレベーターより上へ上がれますので、あちらのエレベーターをご利用くださいませ」


カードキーを受け取り
受付の女性が指したエレベーターへと向かう

エレベーターの中で
この国のことを振り返るように
調べた内容を思い出す


結構大きな街とも言える国なのに
満天の星々が見えると有名で
星をシンボルとしている

星がどの国よりもよく見えるのには
ちゃんとした理由があるらしい

術士のことがなにやら書かれていたような記憶があるが……

生憎そういった話は興味が無い
そこの文章は読むことはせずに
この国に訪れたわけだ


――――――――⭐︎――――――――


夕日もだいぶ傾き、薄暗くなった街を抜け
ホテルにチェッインする時間つぶしに
ブラブラしている間に見つけた
人気の少ない高台の一角に場所を取る


辺りが暗くなった頃

柵を前に街の方へ視線を向ければ
街灯やら魔法などで灯された火が
そこら一体を明るくしているのがよく分かる

街頭の少ないここでは
どこか置き去りにされたような
そんな雰囲気を感じさせた

思いにふけっていると

急に「やっと見れた……」と若い女性の声が耳に届く
反射的に顔を向ければ
その声の持ち主である女性は
口元を手で覆い、空を見上げている

あぁ、噂通りの“満天の星々“が
目の前に広がっていて、感動しているのか…―

他人事のように思っては
軽くため息をついてしまった


自分の足元に視線をやり、瞼を閉じ
そっと顔を上げて、ひと呼吸おいて
閉じた瞼を上げる




辺りが暗くなってから
そんなに時間の経過はなかったはずだ




真っ黒なキャンパスに白を筆で飛ばしたような
星々の姿


その光に空が青白くも見える


こんなにも明るい空に―
女性の声がするまで私は気付かなったのか――




[星が溢れる―不意―]

3/14/2024, 4:02:57 PM


今日は仕事休みで
ほんの少しだけ
遅めの起床

リビングのカーテンの向こう側
暖かな日差しがきっと隠れている

そして、カーテンの下に
まぁるい膨らみ

カーテンの隙間から
少しはみ出してる、茶色の毛



―私を起こさないように気を使ってくれたのかな―


カーテンにそっと手をかけて
開けてみると

そこに居た子はその拍子に
閉じていた瞳を眠たそうに
しぱしぱさせながら、開いて顔を上げる

私の顔を
いつもの変わらない、

優しく
かわいらしい
安らぎのある瞳(め)で

見上げてくる


あぁ、この瞳(め)は
本当に好き


「ちゃい、おはよぉ〜」

元気の回復薬……

暖かい日差しを浴びていたこともあって
この子の体からはお日様の香りがしてる


そして過ぎていく休日の1日―



[安らかな瞳]

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