カエルが卵を産む数は、
一度におそよ数千から1万を超えるという。
卵たちの誰もがみんな、カエルになれる訳ではなく、
卵の95%がオタマジャクシになれるらしい。
オタマジャクシたちが、何とかカエルまで成長できるのは、およそ20%。
更にその中から、
親となり卵を産むことができるのは、大体2%だと言われている。
つまり、仮にカエルが卵を10000個産んだとしても、
その中から親ガエルになれる確率は0.002%くらいしかない。
だから何だという話ではあるが、これは年末ジャンボで3等の100万円が当たる確率と同じである。
ピンポーン
玄関のインターホンが鳴った。
誰だろうと思いながら、女性はモニター越しに様子を伺うと、外には帽子を被った超絶イケメンの若い男性が立っていた。
「宅配でーす」
「あ、はーい。すぐ行きます」
慌てて玄関の扉を開けると、さっきの男が両手に一杯の花束を抱えいた。
男は女性を見つめると、美しく微笑んだ。
「この花束を、美しく愛しい貴方に差し上げたいのです」
「えっ、これを?私に」
突然の出来事に困惑する女性。
「どうか、受け取ってくれませんか」
男は頭を下げ、女性に花束を差し出した。
名前も知らない男性に、ドラマでも見たことの無いような展開。
上目遣いにこちらを見つめる男性と視線が重った。
「はい、受け取ります」
女性は胸のときめきの赴くままに、男性から花束を受け取ると、にっこりと微笑んでみせる。
「ありがとうございます」
男性もにっこりと微笑むと、右ポケットから1枚の紙を取り出した。
「では受領にサインをお願いします。代引きで5,500円です」
勇者が渾身の一撃を振り下ろす。
両手に握った『対魔の剣』は、魔王の耳元を掠めると、落下した大地に激しい衝撃を引き起こす。
必中の一撃を避けられた事に勇者は驚きながらも、絶対防御の瘴気を纏った魔王があえて攻撃を回避した事に僅かな勝機を見出した。
振り下ろした剣を再び魔王に向けるため、勇者は両手に力を込める。
その瞬間、魔王が腰の刀へと手を伸ばした。
全長およそ2メートルもある『魔神の大太刀』から繰り出される魔王の抜刀は、風よりも早く、空を裂き、勇者の丁度半身を狙い定める。
魔王の攻撃が回避不可だと悟った勇者は、咄嗟に自身の剣で防御を試みるのだが、あまりにも早すぎる魔王の抜刀に、十分な構えを取ることができない。
「しまったッ」
何とか剣の柄で受け止めるが、激しい衝撃に耐えきれず、対魔の剣は勇者の遠く後方まで弾き飛んでしまった。
無防備となった勇者を眺め、勝利を確信した魔王は嫌らしく笑みを浮かべると、止めの一撃を振り下ろした。
「終わりだ」
魔神の大太刀で切断された者は、真っ白な塵となりやがて無に帰る。
魔王は最後に、死にゆく勇者の無念と絶望に歪ませた顔を拝んでやろうと視線を送るのだが____
「お前はなぜ、笑っているのだ?」
塵となり消えていく最後まで、勇者は楽しそうに笑っていた。
魔王の取った回避行動、扱う武器、攻撃速度。
勇者にとって、今回の戦闘は十分すぎる程の成果があった。
今回の反省を活かし、またセーブポイントからやり直すだけだ。
何度でも、何度でも繰り返してやろう。
いつか魔王が絶望で顔を歪ませるその時まで____
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「560円になります」
難易度が高すぎてやる気の失せたゲームを、中古ショップで売り払う事にした。
チュートリアルの魔王が強すぎてストレスの溜まるクソゲーだったが、手放したお陰で清々した。
「ありがとうございまーす」
代金を受け取り店を出た後の俺は、最高にスマイルだった。
「おはようございま〜す」
事務所に入ると、上司が険しい顔をさせ、腕を組みながら私を待ち構えていた。
「おい、遅刻だぞ」
「え、勤務時間は30分からですよね?まだ28分ですよ」
不機嫌な上司に向かって、私は時計の針を指差しながら異を唱えるのだが、それに対する上司の回答はこうだ。
「新入なら15分前には出勤するのが常識だろ!次遅刻したらお前減給な」
突然突きつけられた社会の”常識”とやらに、私は呆然と立ち尽くす事しかできなかった。
一体誰が時計なんて思いついたんだ。
「どなたか、私とKissをしてくれませんか」
1人の女性が、街道を歩く男性に1人ずつ声を掛けていく。
とても美しい女性だった。
声を掛けられた男達は、みな驚いた様に目を開き、少し考えると、どこか恥ずかしげに、どこか遠慮がちに首を横に振った。
その様子を見ていた私は、せっかくあんな美しい女性とキッスが出来るのに馬鹿だなぁと思った。
女性は道ゆく男達に順番に声を掛けていく。
いよいよ、次は私の番だ。
当然、私の答えは決まっている。
濃厚なKissを、夜が明けるまでしてやろう。
なんなら、場所を変えたっていい。
などと考えながら、胸を踊らせ女性がこちらに来るのを待ち構えていたのだが、
女性は私を素通りして、後ろを歩く男性へと声を掛けていった。