すべて最初から決まっていた。
この町で生まれ、この家で暮らし、この学校で、この人たちと…全て予定調和、私の人生なんて真っ直ぐ敷かれた一本レールみたいなものだ。
「それは驕りだよ」
崖から海辺を眺めていると、背後から何者かに声を掛けられた。
ここは滅多に人が来ない場所なのに、相変わらず自分はツイてないなと思ったが、見届け人がいるのも悪くはない。
私が海へ飛び込もうとすると、それを引き止めるように男は喋り出す。
「今君は、過去選択した結果の連続でそこに立っている」
「過去とはあくまで結果でしか無いのだから、振り返ると一本なのは当たり前だ」
「君の人生がつまらないのは、後ろばっか見てるからじゃあないのかい」
「は?」
見知らぬ男に説教をされた私はついカッとなって男に殴りかかってしまった。
男はしたり顔でそれをあしらい私を返り討ちにすると、どこかへ去っていった。
#最初から決まっていた
僕らの太陽は無くなった。
突如始まった都市開発。
一本、また一本と高層ビルが増える度に、町を走る車の数は増えていった。
やがて渋滞を無くす為、町の上にビルをなぞるように造られた道路は次第に拡大していって、いつしか巨大な迷路のようになっていった。
その迷路の上にコンビニや娯楽施設ができる頃には、僕らの住んでいた場所はすっかり迷路の下敷きになってしまって、一年中夜の町だ。
マンションに住むお金持ちは増えたが、元より住んでいた僕らは相変わらず貧しいまま、
僕らの町には太陽も、希望の光も無くなってしまった。
夜寝る前にダウンロードを開始させ、目が覚めるまでに完了させる。
そうすれば明日の休日は朝から心気なく新作ゲームを堪能することができる。
なんて天才的な閃きなんだ。
忙しい現代社会に於いて、もはや睡眠中さえ無駄なく活動できるようになった私を、みんなも是非参考にして欲しい。
などとうとうとしながら考えていると、気がつくと朝になっていた。
異世界に迷い込んで早1年。
人喰い花の猛毒を浴びた俺は意識を失い、偶然通りかかった冒険者に助けられて一命は取り留めたのだが、当分の間病室で治療を受ける羽目になった。
「先生、俺はあとどれくらいでよくなりますか」
「うーん、早くてもあと3週間はかかると思いますよ」
「3週間ですか…」
「まあこれに懲りたら、もう二度とあの森には足を踏み入れないことですね。まったく、なぜそんな無茶をしたんですか」
なぜそんな無茶をしたのかと問われれば、あの森に住むと言われているダークエルフに会いたいが為だったなんて、先生の前では口が裂けても言えない。
「ところで先生、いつも世話してくれるゴブリンの女性看護師がいんですけど、替えてもらうことってできますか」
「出来ますけど、何か問題ありましたか」
「いえ…実はゴブリンは苦手で、他の種族の方がいいんですけど」
「残念ですけど、ここの看護師は皆ゴブリン族なんです。みんなとっても働き者ですよ」
「できたら先生みたいなエルフの看護師が来てくれると、病気もすぐに治りそうな気がするんですよ」
「もーしょうがないですね、空いてる時はなるべく私が診療に来るようにします」
「ありがとうございます」
「その分診療代は貰いますよ」
そうして俺はこの過酷な異世界で、幸せな一時を過ごすことができた。
その後、莫大な診療代を払いきれず洞窟の地下炭鉱でゴブリン達と共に強制労働をさせられることなどいざ知らず。
明日、もし晴れたら10%
雨なら5%
大雨なら1%
曇りなら15%
私が家から出る確率だ。