みみかゆい

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異世界に迷い込んで早1年。

人喰い花の猛毒を浴びた俺は意識を失い、偶然通りかかった冒険者に助けられて一命は取り留めたのだが、当分の間病室で治療を受ける羽目になった。

「先生、俺はあとどれくらいでよくなりますか」
「うーん、早くてもあと3週間はかかると思いますよ」
「3週間ですか…」
「まあこれに懲りたら、もう二度とあの森には足を踏み入れないことですね。まったく、なぜそんな無茶をしたんですか」

なぜそんな無茶をしたのかと問われれば、あの森に住むと言われているダークエルフに会いたいが為だったなんて、先生の前では口が裂けても言えない。

「ところで先生、いつも世話してくれるゴブリンの女性看護師がいんですけど、替えてもらうことってできますか」
「出来ますけど、何か問題ありましたか」
「いえ…実はゴブリンは苦手で、他の種族の方がいいんですけど」
「残念ですけど、ここの看護師は皆ゴブリン族なんです。みんなとっても働き者ですよ」
「できたら先生みたいなエルフの看護師が来てくれると、病気もすぐに治りそうな気がするんですよ」
「もーしょうがないですね、空いてる時はなるべく私が診療に来るようにします」
「ありがとうございます」
「その分診療代は貰いますよ」

そうして俺はこの過酷な異世界で、幸せな一時を過ごすことができた。
その後、莫大な診療代を払いきれず洞窟の地下炭鉱でゴブリン達と共に強制労働をさせられることなどいざ知らず。

8/4/2023, 2:09:17 AM