だから、1人でいたい。
部屋の隅で山積みになった漫画たちが、
チュートリアルさえ終わっていないゲームたちが、
後で見ようとマイリストに溜まったアニメたちが、
私の帰りを待っている。
さて今日は何からしてやろうと意気揚々に帰路を突き進むのだが、途中でぴかぴかと派手に輝く看板が目に入る。
まるで街頭に集まる虫のように、
財布を握りしめ、ふらふらと足を運び、また今日も一日が終わってしまった。
澄んだ瞳に当てられて、気がつくと私の右手にはスカイミラージュが握られていた。
「おじちゃん、ありがとう!!」
姪っ子はビー玉みたいな小さい瞳をキラキラさせて、私の元へ抱き付かんとばかりに駆け寄ると、そのままスカイミラージュを奪い取り去っていった。
姪っ子はたぶんこの後母親にこっぴどく説教され、代金を返しに来ることになるのだろうが、もはや私にはそんなことどうでも良かった。
あの子はスカイミラージュだけではなく、私からとんでもないものを奪ってしまった。
それは、わたしの心だ。
嵐が来ようとも、
今日も世界は回り続けていて、
私の1日は変わらない。
今の平坦な生活は嫌いじゃないが、
好きでもない。
そう思うたびに、
今の自分がとても贅沢な考えをしていると戒め反省する。
川と田んぼしかない私の町にも、毎年夏のお祭りはあった。
普段は閑散とした町並みもこの日ばかりは人だかりで賑わっていて、みんな今までどこにいたんだと驚いてしまう。
けれどそれは私がまだ小さな子どもだった頃の話で、だんだんと体が大きくなるにつれて、町の祭りが小さく子どもじみたものに感じるようになっていった。
高校生になったある日、私は同級生から祭りの誘いを受ける
そいつとは小学からの同級生で昔はよく遊んでいたのだが、中学に上がってからは全くと言っていいほど疎遠で、顔を合わせればお互いに手を挙げるくらいの仲だった。
祭りに誘ってくれたのは素直に嬉しかったが、なんだかそいつと祭りに行くのが面倒に感じてしまい、ずるずると返事を伸ばして結局最後には断ってしまった。
これは後から知った話なのだが、実は私と一緒に祭りに行きたかったのはそいつではなく、どうやら私と同じクラスの女の子だったみたいで、その子と部活が一緒だったそいつが仲介役として私を誘ったつもりだったらしい。
結局、私が祭りに来ないので仕方なく二人で祭りに行き、なんとそこで二人は付き合ったそうだ。
私がそれを知ったのは二人が付き合った祭りのあとのことで、
まさに、あとの祭りである。
神様が舞い降りてきて、こう言った。
『お前のカミ(髪)をよこしなさい。カミ(神)だけに…なんつって』
そして神様は私の髪を毛根ごとむしり取ると、天上の世界へ去っていった。
残ったのは大いなる存在の威厳を守り抜いたという事実と、光輝く私の美しい満月。
あの日から、私は神に選ばれし覇月(ハゲ)となった。
だから次の言葉は、よく考えてから口にすることだ。