てふてふ蝶々

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8/30/2023, 7:40:01 AM

僕はたくさんの事を知る事ができた。

『ご飯よー』って言うと、お皿の中にカリカリの餌を入れてくれること。
僕が食べた器をキッチンに持っていくと『ありがとう』って言われて、頭を撫でてもらえたり、たまに美味しいものをくれる。

『散歩』って言葉が一番好きかもしれない。
僕は紐で繋いでもらって外にでる。トイレを済ませたり、友達に会えたりする。
いつもより早い時間に『散歩』って言われたら、『公園』に行けて、長い時間、たくさん遊ぶ事が出来る。

『お手、おかわり』って言われたら前足を出すと、大抵は『おやつ』がもらえる。

人は『行ってきます』って言ったら僕は留守番。
帰ってくる前に僕はわかっているのに、ドアを開けて入ってくるときは『ただいま』って言う。意味は知らない。
『ダメ』って言われたら、やらない方がいい事を僕がしている時。みんな『ダメ』を言うときは怖い顔。
だからやらないようにする。

他にも『お風呂』や『病院』『雨』『ミルク』『リード』『おもちゃ』…
たくさん知ってる。
僕が家族になった日からたくさんの言葉を教えてもらった。
最近、『ご飯』が食べられなかったり『散歩』の途中で疲れてしまったりして、体が動かなくなった。
『年』という言葉を覚えた。
これは僕がもうすぐ死んでしまうという意味だと思う。
自分でもわかっていた事だ。

好きな言葉も嫌いな言葉もあるけれど、そんなのいらないから、ただ撫でて欲しい。

8/29/2023, 5:42:34 AM

春に引っ越してきたばかりの我が家。
今回はマンションの一階の部屋。
転勤族と言われる家で育ってきたから春の別れも出会いも慣れてる。
夏休み頃には仲良くなる友達もできる。
とは言え、毎日会う程でもないからわりと家にいる。
夕立が来そうだなぁと部屋でゴロゴロしていると、なんだか視線を感じて周りを見回すと、窓の外からこちらをじっと見つめる猫。
誰だお前って感じで見てくる辺り、前からこの部屋のベランダによく来ていたんだろう。
雨宿りに来たっぽい猫からの他所者を警戒する視線を感じつつ、またゴロリと寝転ぶ。
猫も、雨に濡れたくないのか先住者としての意地なのか、ベランダにゴロリと寝転がる。
しばらくして、雨がザーザー降り出した。
猫は前足で上手に顔を擦っている。
まぁ、あれだ。私は今日は一日中出かけないつもりでいたけど、今は雨を理由に出かけないわけで…
ゴロゴロし過ぎて寝入ってしまった私が目を覚ますと、雨は上がり、猫は居なくなっていた。
次の日の午後も、昨日と同じく夕立前に、あの猫がきた。しかも、これまた昨日と同じく、誰だお前って視線。
猫に何か献上したいところだけど、『野良猫に餌を与えないでください』って、エントランスに貼られている注意書きがあるから、ダメなんだろう。
猫からしたら、自分の縄張りに来た餌もくれない突然の来訪者な私に不信感しかないだろう。

8/28/2023, 4:12:21 AM

もうすぐ夏休みも終わる。
去年のお盆明けに川に転落死をしたおじいちゃん。
お盆明けというなんともなタイミングで死んだおじいちゃん。
わりと近所に住んでたし、転落した川に来てみた。
土手に座ろうと思ったけれど暑くて無理。
仕方ないから橋の下の日陰に行くと、ドーンと大きな音と光で近くに雷が落ちたよう。同時に豪雨。
もう、毎年の事だしちょっとやそっとじゃ驚かなくなった。
川の水が急に増えたりしないかなぁと、辺りを見渡すと、川の反対側にカラスが一羽雨宿りしている。
カラスと目が合ってる気がする。
じっと見つめ合うカラスと私。
カラスと目が合った時、逸らした方いいのか逸らさない方がいいのか…
まぁ、カラスから威嚇する様子もないし。大丈夫かな。
河原の石の上に腰を下ろして、川を眺め、雨を眺め。
カラスもアッチへチョンチョン。コッチへチョンチョン。すると、雨の当たらないギリギリのところで立ち止まる。
カラスの家がある方なのか心配そうに森の方を眺めている。
その姿が、なんとなく家を守ろう。家族を守ろうとしているように見えて、なんとも綺麗。
凛とした佇まい。じっと遠くを見つめる強い目。
カラスのくせにカッコいいじゃないか。
きっとオスだな。
嫁カラスと子カラスの心配してるんだな。
と、勝手に想像する。
私にはお父さんがいない。だからおじいちゃんがお父さんみたいな感じだった。
こんな風に雷がなると、『大丈夫?』って電話を毎回かけてくれてたおじいちゃん。
小さな頃、雷が怖くて泣いていた私のままだと思ってたんだよなぁ。
おじいちゃんに会いたいなぁ。
カラスのお父さんよ、子は成長するからね。カラスの人生楽しんで、長く生きてくれよーと。
未だにじっと動かず雨に佇むカラスにエールを送る。

8/27/2023, 2:36:29 AM

中学校に入学してから日記をつけることにした。
いつも三日坊主。
私なんてそんなもん。
飽き性だし、あとで癖も治らない。
だから、小学校の夏休みの宿題は夏休み終わってもまだやってるような性格。
だから、夏休みが終わりに近づいた今、宿題も終わり、日記も続いている奇跡に自分でびっくり。
夏休みまでの日記には、新しい友達の名前や話した内容。宿題や先生のことが多かった。
夏休みに入って、毎年悩まされる読書感想文を先におわらせようと近所の図書館に行った日から内容は、違うクラスのかっこいい男子についてばかり書いてある。
学年で一番カッコイイと女子の間で入学初日から話題の的となっていた子で、明るい性格とハーフらしい名前と見た目で専ら王子様。
その子がいた。何の本を手に取った。どんな服だった。
何を飲んだ。何を食べた。何時に帰った。
内容はストーカー気味。
相手は違うクラスの私の事なんか知らないわけで、話した事もないから仕方あるまい。
夏休みの間にひょっとしたら話せるかもしれないと淡い期待してオシャレして毎日通った図書館のおかげで、宿題も早く片付いた。
毎日通った私。たまに来るあの子。
宿題終わったのかな?
私は終わった宿題を全部持っておしゃれして図書館に通う。
あの子が終わってなかったら、話すキッカケになるかもしれないから。
中学生になったばかり。
あの子と仲良くなって、もっとあの子の事知って、三年間、日記書き続けられたらいいな。
って。やっぱり私の日記帳はストーカー気味のキモいブラック歴史になる事、間違いないだろう。だから誰にも見せられない日記帳。

8/25/2023, 1:40:06 PM

みんながそうかは知らないけれど、我が家の食卓テーブルには決まった席がある。
キッチンから近い席にお母さん。
その隣が弟。
弟の向かえがお父さん。
お父さんの隣でお母さんの向かえが私。
4人家族。
弟が生まれる前は、私が弟の席だった。
お母さんはみんなのご飯のおかわりを取りに行ったりして食事時もゆっくり座ってない。

私の結婚が決まって、花嫁修行として料理をするようになった。
今まで手伝ってこなかった事を後悔しつつ料理のイロハを教えてくれたお母さん。
今時、専業主婦だなんてもったいないとか思っていたけど、お母さんの料理は実に手が込んでいて、出汁の取り方、魚の捌き方を教わった時はプロかと思うほど、手際よくテキパキとこなす姿がカッコイイと思った。
私は専業主婦になるつもりもないし、共働きで家事は折半する予定だけど、なんでも出来るに越した事はないと、教えてもらって、初めて1人でメニューを決めて、買い出しをして調理した。
「ご飯できたよー」
って声をかけた時、私の席にお母さんが座ってニコニコしている。
私の声かけに、リビングからノソノソやってくるお父さん。ゲームに夢中でなかなか来ない弟。
そうか。お母さんはいつもこうやって見ていたのね。
温かいうちに食べてほしい。
遅れてやってきた弟と、いただきますをして、みんなで食べ始める。
ご飯、味噌汁、焼き魚、肉じゃが。あと、買ってきたお漬物。
たったコレだけっていいたくなるメニューながら、作り手からしたらなかなか手間がかかった。
お母さんなら『簡単メニュー』って言うやつ。
お母さんの席でみんなの様子を伺う。美味しいかな?どうかな?
お父さんと弟はテレビを見ながら、のんびり食べる。
途中、お父さんが「お茶」と、お母さんの席にいる私に空のコップを出す。
弟は、「肉じゃが肉多め」って言って、また、お母さんの席にいる私に空のお皿を出す。
ナンダコレ。私、家政婦じゃない。
動けずにお母さんを見ると、『ね?』とアイコンタクトして私の代わりにお茶とお代わりを取りに行った。
私は毎日、何を見ていたんだろう。
毎日、お母さんはコレをしていたなんて信じられない。
凄い。
私には無理だ。
とてもやってらんない。
ムカツク。
しかしながら、私が、料理をするまではお父さんや弟のように振る舞っていたんだ。
とても申し訳ない気持ちになった。
毎日、家族仲良く食卓を囲んでいる。
そう思っていた。
それができていたのは、迎え合わせに座っているお母さんの忍耐と我慢の賜物で、自分がその立場になるまで気がつけなかったことが恥ずかしいし、当たり前だ。そんなの簡単だと思っていた自分のバカさに申し訳なく思う。

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