夏
夏という、季節のふりした災害がやってきた
なーんてなんて大人が言うけど、私の知ってる夏ってこんなもんよ
まぁ、死人が出るほどの暑さはどうかと思うけれど、私にとってはコレぞ夏
効きすぎたエアコンでブルブルと寒い席に膝掛けは必須
保冷剤でひんやり冷たいお弁当
建物から一歩外に出たらアスファルトで火傷するから裸足で砂浜なんて歩こうとは思わない
それでも、たった一つのボールを追いかけて取り合って部活に励む男子の愚かさに、呆れたり羨ましかったり見惚れたり
部活が終わるまで、エアコンの効いた教室で汗をかいて頑張るアイツを眺めて
日誌に上手に描けた入道雲の落書きを残して
夕立対策と兼用できる日傘と一緒に
毎日、彼のために冷凍してるポカリがちょっと溶けたのを持って
汗臭い彼に『お疲れー』ってポカリを渡せるようになりたいなぁって
汗臭い男子の集団が横断歩道を渡るのを眺めながら
西陽に向かって歩く帰り道
夏が終わる前にポカリ渡せたらいいなぁ
波音に耳を澄ませて
最近、急に暑くなったよねー
これじゃ、蒸発しちゃう
本当それ!
あ、なんか田んぼの方からきた奴が、田んぼの水が30℃近くあったってー!
やばいねー
川から来た奴、最近なんか濁ってない?
あー、なんか豪雨って奴でめっちゃ雨のやつが集中してやってくるせいなんだって
えー土落としてきて欲しいねー人間のゴミとか混ざっててマジ最悪
うちら、海も台風とかあるしお互い様だけどさー
あーあと、うちらの先輩の津波さんもなんか陸に向かってるらしいよー
えーマジー?
どうせ飲み込まれるなら、カッコいい津波がいいなー
えー津波はないよー!渦潮になりたい
あーそっちも有りだね
でもさーどうせ消えてなくなる運命だけど、人間の葛飾北斎って人が書いた波みたいに、盛りに盛った絵に残りたいよねー
青い風
高校になってもバスケを続けるためには、この中体連に俺の15年、いや、バスケをしてきた13年をだしきるしかない!俺にはバスケしかない!
今、頑張れないなら、高校で頑張れるもんか
今までだってバスケ以外頑張れなかったよ
俺さ、初めてできた彼女が
昨日、サッカー部の奴と遊びに行ったって聞いたんだ
テストで赤点より、全然ショック
昨日は、そのせいで部活でキツすぎてヘトヘトで眠れないわけないのにさ
寝たのか寝てないのか朧気なんだけど、朝練もしたよ
授業中は、彼女の事しか考えてねーよ
授業が終わったら、バスケしかねーよ
バスケしてる俺がカッコイイって言ってたじゃん
サッカーってなんだよ
色黒短足、スタメンにもなれねーやつには負けねーよ
暑いし、ムカツクし、イライラするし、
体育館の入り口でバッシュ履いてたら
顧問が来たから
立って「チワーッス」なんて外に向かってお辞儀してさ
顔上げたら、サッカー部の練習を見てる彼女が見えたよ
マジかよ
いいよ、お前はその程度の女だよ
俺は今日から一本だってシュート外さねー。
なんて思ったら、お前振り向くなよ
青い風なんてまだ早いよ。
やっぱりお前可愛いなって思っちゃったじゃん
どこ見てんだよって
中体連終わったら文句言ってやるよ
最後の声
いつも助けてくれた。
アドバイスは的確で、優しくて。
マジでいい奴。
いつも助けてもらって申し訳ないからさ。
お前が見てないところで苦手な事をめちゃめちゃ頑張って。僕は要領良くないし馬鹿だからやり方もわからなくて手探りで。お前にアドバイス貰ったら意味ないって思って、内緒で頑張ったんだよ。いつかお前に『俺も負けてらんねーな』って言ってもらえたらいいなって思って努力したんだよ。
なのにさ、お前よりたった一つ。たまたまかもしれないのにさ。
お前は僕よりたくさんできる事あるのにさ。
要領良くて、賢くて、優しくて、勉強もスポーツもなんだって僕よりできるじゃん。
「ズルい」ってなんだよ。
友達じゃなかったのかよ。
小さな愛
電子レンジ
電気ケトル
温水便座
長靴
傘
ハンカチ
あったら便利じゃなくて、無くてもいいけどあってよかったって物は全て小さな愛から生まれたって思ったら世の中は小さな愛で溢れてない?