てふてふ蝶々

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みんながそうかは知らないけれど、我が家の食卓テーブルには決まった席がある。
キッチンから近い席にお母さん。
その隣が弟。
弟の向かえがお父さん。
お父さんの隣でお母さんの向かえが私。
4人家族。
弟が生まれる前は、私が弟の席だった。
お母さんはみんなのご飯のおかわりを取りに行ったりして食事時もゆっくり座ってない。

私の結婚が決まって、花嫁修行として料理をするようになった。
今まで手伝ってこなかった事を後悔しつつ料理のイロハを教えてくれたお母さん。
今時、専業主婦だなんてもったいないとか思っていたけど、お母さんの料理は実に手が込んでいて、出汁の取り方、魚の捌き方を教わった時はプロかと思うほど、手際よくテキパキとこなす姿がカッコイイと思った。
私は専業主婦になるつもりもないし、共働きで家事は折半する予定だけど、なんでも出来るに越した事はないと、教えてもらって、初めて1人でメニューを決めて、買い出しをして調理した。
「ご飯できたよー」
って声をかけた時、私の席にお母さんが座ってニコニコしている。
私の声かけに、リビングからノソノソやってくるお父さん。ゲームに夢中でなかなか来ない弟。
そうか。お母さんはいつもこうやって見ていたのね。
温かいうちに食べてほしい。
遅れてやってきた弟と、いただきますをして、みんなで食べ始める。
ご飯、味噌汁、焼き魚、肉じゃが。あと、買ってきたお漬物。
たったコレだけっていいたくなるメニューながら、作り手からしたらなかなか手間がかかった。
お母さんなら『簡単メニュー』って言うやつ。
お母さんの席でみんなの様子を伺う。美味しいかな?どうかな?
お父さんと弟はテレビを見ながら、のんびり食べる。
途中、お父さんが「お茶」と、お母さんの席にいる私に空のコップを出す。
弟は、「肉じゃが肉多め」って言って、また、お母さんの席にいる私に空のお皿を出す。
ナンダコレ。私、家政婦じゃない。
動けずにお母さんを見ると、『ね?』とアイコンタクトして私の代わりにお茶とお代わりを取りに行った。
私は毎日、何を見ていたんだろう。
毎日、お母さんはコレをしていたなんて信じられない。
凄い。
私には無理だ。
とてもやってらんない。
ムカツク。
しかしながら、私が、料理をするまではお父さんや弟のように振る舞っていたんだ。
とても申し訳ない気持ちになった。
毎日、家族仲良く食卓を囲んでいる。
そう思っていた。
それができていたのは、迎え合わせに座っているお母さんの忍耐と我慢の賜物で、自分がその立場になるまで気がつけなかったことが恥ずかしいし、当たり前だ。そんなの簡単だと思っていた自分のバカさに申し訳なく思う。

8/25/2023, 1:40:06 PM