てふてふ蝶々

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8/6/2023, 10:39:14 AM

「たいーよーがー、もえーているー」
と、ひと昔前に流行った歌が一階から聞こえる。
1階がオカンがやってるスナック。2階が自宅。
カラオケスナックってやつ。
常連さんは、年配の人が多いけど、最近は40代くらい?な、おじさんおばさんも増えた。
なかなか、やり手なオカンだ。
暑い季節になると夏の曲。寒い季節になると冬の曲。
漏れ聞こえる歌で季節がわかる。
「イケナイ太陽〜」なんてわけわからない曲に変わる。
夏の到来をお客さん達は喜んでいるのか。

私が生まれた頃には30度を超える日が当たり前にあり、35度を超えると夏真っ盛り。40度を超える殺人的な暑さな日もある。

熱中症、紫外線。豪雨。危険なばかりの夏。
夏の海なんてよっぽど旅行でもしない限り行く事ない。
山だって急な豪雨が毎日だし、山が涼しいなんて事もない。

夏休みの子供といえば、宿題かゲームか。
外で遊んでおいでなんて家はまずないと思う。
あまり家に居てばかりでも…とショッピングモールや市民プールに行く程度。
だから夏っていい気がしない。太陽のせい。
いや、地球温暖化のせい?
どちらにしても夏を楽しんだ世代の人のせい。
とは言え、夏休みの文化は残してくれてありがたい。
学校が休みってだけで特別感があるし。
今日もギラギラメラメラ燃える太陽が沈んだ頃にお客さんが来る。
楽しい夏の歌を歌って、ほろ酔いや泥酔して帰っていく。
昔の夏ってそんなに特別なモノだったのかな?
昔の夏を経験してみたいなぁ。って思うから、自然環境とかエネルギー対策とかの勉強出来る大学に行って、お客さん達が楽しんだ夏にしたいとか考えるようになった。
冬より夏の方が楽しそうな大人を見て、将来の指針を決めたからさ。
太陽さん、ちょっと手加減して。
地球さん、もう少し我慢してね。
まだまだ学生で何もできないけど、10年とか20年したら、夏の太陽を楽しめる地球にするからね。

8/5/2023, 12:38:14 PM

鐘の音


「行ってきます」
「ただいま」
家を出る時、帰る時、当たり前にチリンと鳴らす鐘。
仏壇にあるソレは誰かが持ち上げないと、鳴らない音。


私には当たり前の習慣だけど、私の友達にはない習慣。
結婚しようと、決めた相手が実家に挨拶に来た際に、
「仏壇にご挨拶させていただいてもいいですか」
と。
金髪で定職にもつかない体たらくな人だけど、私にはこの人しかいないって思った人。
その人を初めて尊敬したなんて言ったらいけないけれど…。
「作法は…」と言いかけた未来の夫。
「挨拶していただけるだけで充分ですから…」と、両親。

ソレから結婚し、子供にも恵まれて、実家に帰る時は両親用と仏壇用にお土産を用意する。

チリンとなる小さな鐘の音が、私の人生を決めた音。

8/4/2023, 12:55:44 PM

塵も積もれば山となる。
良くも悪くも使われる便利な諺。

愛を信じて結婚したら、愛情のゲージは塵が積もって大幅な目減りをする。
結婚は生活に直結するから、愛だけでは食べていけない。
思ってたんと違う。ってのはお互い様だろう。
惰性で続ける婚姻関係か、独身にかえるか。
 
お金を信じて結婚したら、結婚相手にお金がなくなったら魅力は地の底に落ちる。

自分と似た人と結婚したら、同族嫌悪の時がくる。

正反対な人と結婚したら、異星人との同居になる。

結局、どんな人と結婚するのが正解?

人それぞれだろうけれど。

極端に、
世界一のお金持と結婚したなら、愛情は無くても尊敬が生まれるだろう。

明日、死んでしまうなら、愛をとるだろう。

したらば、相性というなんとも曖昧な物で測らなければならない。

相性とは?
笑いのツボや、価値観なんて年齢と共に変わる。
相手も自分も変わっていく。

歳をとって、仲良し夫婦に見えても、夫婦の間には数えきれない我慢と擦り合わせがあるはずで、

結局は、
この人がそういうなら仕方ない。
その程度の、許容。
この人のためならちょっと我慢してやってもいいか。
って程度の、見栄。

多分、他所様からみたら『つまらないこと』の積み重ねで夫婦って作られていく。

でも、この『つまらないこと』の積み重ねができないと、夫婦としての縁すらなくなる。

しかも厄介な事に、結婚して色んな嫌な思いをして、自分で選択していかなければならないからこそ、結婚とはやってみなきゃわからないギャンブル。
自分にとって、つまらない事でも相手にとっては重要だったり。逆もまた然り。

『つまらないこと』を拾い集めてお互いに納得して夫婦でいられる。

だから、離婚理由は、不一致の一言で片付いちゃう。

つまらないことでも、真摯に向き合ってくれる相手を選ぶのは、宝くじ当てるより難しいかも。

8/3/2023, 12:14:35 PM

3番目の子が生まれてからすぐに単身赴任になった夫から
「そろそろ仕事復帰して欲しい」
と、言われた。

子供三人もいれば、そりゃ火の車。
物価高騰も輪をかけて家計を圧迫。

仕事を始めたら、子供達が目が覚めるまでにやる事は、
1洗濯
2お弁当
3着替えand化粧

子供達が起きたら
1朝ご飯
2歯磨きand着替え
3荷物確認、お見送り


仕事が終わったら、
1お迎え
2買い物
3夕飯
4お風呂
5寝かしつけ

私が寝る前までにする事は
1洗濯物の片付けand洗濯2回目
2お風呂掃除
3プリント類の整理
4掃除機はいつする?毎日砂が…

箇条書きにすると大した事ないけど『名もなき家事』と呼ばれる物の厄介さよ。

お稽古の送り迎えは誰がする…?
懇談、参観、PTAは…?
ゴミ出し、窓拭き、トイレ掃除なんかも。

共働きでやってる家庭もある。
実家に頼る家庭もある。
実家は頼れずワンオペ。単身赴任の夫の口癖は
「俺の分の家事しなくていいから楽じゃん」
「なんでそんなにお金かかるの?俺なんて、、、」
いや、夫は成長期じゃないから毎年服買わなくていいよね。靴や下着もパジャマも全部だよ?
成長期じゃないから無限に食べたりしないよね。
歯医者や床屋もタダじゃない。

私達がそっちに行こうか?と言っても、仕事がらアチコチ不定期で移動する仕事の夫は子供のためにと来なくていいと言う。

むしろ、子育てしてないんだから、稼ぐぐらいしてほしいと思ってはならんのか。

ピコンとなったスマホを見ると
『仕事始めても、俺の目覚ましのモーニングコールは忘れないでね。チュ』と。
キモい。

仕事するくらいなら、離婚がチラつくわ。

8/2/2023, 11:33:20 AM

診察待ちのベンチには、おくるみでぐるぐる巻きにされた赤ちゃんを抱っこしたお母さんが、我が子の寝顔を愛おしそうに見つめている。
私は赤ちゃんを起こさないように、しっかり気をつけて、少しも振動を起こすまいとそっと隣に座る。
順番に座らなければならないから仕方ない。
ほんの少しギジリとなった古いベンチが憎らしい。
しかし、お母さんは笑顔で私の方を向いて、
「大丈夫ですよ。昼間はよく眠るんです。夜に寝てくれればいいのに」
と、言いながら、また愛おしそうに我が子に目をやる。
「そうですか。よかったです。可愛いお子さんですね」
と、何も返事しないのも変かもしれないと、顔の見えない赤ちゃんを褒めておく。
するとお母さんは嬉しそうに、
「えぇ、眠っている時が一番可愛いなんて言ったら贅沢ですよね。でも、こうも夜泣きが続くと寝不足で…」
と、子供のいない私にはわからない育児の悩みを話されて、何と答えるのが正解かわからなくて、頭の中がパニックになる。どうしよう。どうしよう。
さっき来たばかりの私。このお母さんが先なんだけど、呼ばれる気配はない。何か言わなきゃと思って
「大変なんですね。」と声にだす。
お母さんは嫌な顔一つしないで笑顔。
よかった。間違った事言ってない。とホッとしたのに、お母さんは会話を続けたいようだ。
「産むまでこんなに大変だとは思わなかったわー。主人もあてにならないし、実家には頼れないしでへとへとよ。」
こういう時は、『あぁ』『いいですね』『うん』『えぇ』『おぉ!』の中から適切なのを選ぶ。
『あぁそうですね』だと冷たく感じるかもしれない。
『えぇそうですね』だと知ったかぶりみたい。
悩んだあげく
「はぁ」
と、どちらとも言えない曖昧な返事をしたが、お母さんは気にする素振りもなく、
「今日だって、診察なのに、パパは、病院に来てもくれないの。ひどいでしょ?」
そう言われても…何と返事しよう。どうしよう。と悩んでる間にお母さんの方が先に答えがでたようで、
「仕事だから、仕方ないのはわかるのよ?でも、パパとしての自覚が足りないんじゃないかって思うの。」
もう、返事なんかいらないのかもしれない。
とにかく、うんうんと、首を赤ベコのように振る。
「私が専業主婦になっちゃったし、家族の為に働いてくれてるって思って我慢してるけれど、それでも、ねぇ?」
…?ねぇ?って事は返事待ちな感じ?どうしたらいい?
そうですね?かな?旦那さんもお辛いんでは?かな?
家族と仕事の両立なんてした事ないからわからない。
どうしよう。どうしよう。私の不甲斐なさを見抜いたようにお母さんは
「あなたお子さんいらっしゃらない?」
と、聞いてくる。即答できる質問でよかった。
「はい。居ません。」
すると、途端に私に興味を失ってくれたようで、
「そう…」と言って、また我が子を愛おしそうに見つめ始めた。
良かったような、なんかお尻がもぞもぞとする居心地の悪さの中、診察の時間をじっと待つ。
隣に座るお母さんが、我が子の頬を撫でたりお尻や背中を摩っているのを横目に見る。
幸せだわって声が聞こえてきそう。
ふと、お母さんが診察に呼ばれて行った。
赤ちゃんだけを連れて。
手荷物を置いて行ってしまったようだ。
どうしよう。すぐ前にいるから教えてあげようか。
それとも、赤ちゃんを抱いているからわざと置いて行ったのかもしれない。
受付の人にだけでも伝えた方がいいだろうか。
そうしよう。
私が少し腰を上げると、ベンチはまたミシリと音をたてた。
その音で、あのお母さんがふわりと振り返る。
そして、「あぁ、やだわ。また荷物置いてっちゃったわ。駄目なママですねー」と赤ちゃんに話しかけながらこちらに来る。何かおかしい。
おかしな理由がわかるとギョッとした。
声も出なかった。
お母さんは、荷物を取ると何事もなかったように、
「ごめんなさいね。」と、私に声をかけ、
「さぁ、行きましょうね」と、赤ちゃん人形に声をかける。
しばらくして私も、診察室に呼ばれた。
彼女とはまた違う病気ではあるけれど、心の病を治すために、この病院にいる。
私の病室に戻る。
さっきの診察で退院も近いと聞いて、嬉しいやら不安やら。
あのお母さんが、病院から出られる日がくるのだろうか?ここにいた方が幸せなのかわからない。
私は、私は?
この病室からでて、どこに行くのか?どうやって暮らすのか。もう忘れてしまった。
私の世界はこの病院の中。
私の自由は、病室の中。
どうやっても、何をしても生きるしかない病室でしか生きられないのに。

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